00年代中盤にイギリスで巻き起こったポストパンク・リバイバルの余韻がまだ残る07年に強烈なゴス・ファッションで登場し、60年代ガレージやニュー・ウェイヴを取り入れた『ストレンジ・ハウス』でデビュー。続く09年の傑作セカンド『プライマリー・カラーズ』でポーティスヘッドのジェフ・バーロウと共にサイケデリックな音響美を開花させると、11年の3作目『スカイング』ではメロディーに焦点を当て、自身最高となる全英5位を獲得したロンドンの5人組、ザ・ホラーズ。彼らはいわば、作品ごとに自分たちのパブリック・イメージをするっと脱ぎ捨てて、嬉々として新たな実験に飛び込んでいく生粋の“バガボンド=放浪者”。そして通算4作目となるこの新作『ルミナス』でも、そんな5人の性格は少しも変わっていないようなのだ。

前作『スカイング』同様、イースト・ロンドンにある自身のスタジオでセルフ・プロデュースによって制作された本作は、メンバー曰く「楽しくて」「踊れる」ダンス・レコード。これはもしや、ディスクロージャーを筆頭にしたUKのダンス・ムーヴメントの盛り上がりとも何か関係があるのでは――。しかし実際のところ、彼らにとって大切だったのは、決して過去の自分を振り返らないことだった。今回5人が着想を得たのは、レコードを繋いでいくDJの手法。ジョルジオ・モロダー風のマシーン・ディスコ“In And Out Of Sight”を筆頭に、全編を通してミニマルなフレーズの反復を軸にした楽曲が増え、それぞれの曲が作品全体の勢いを保ったまま、7分越えの‟I See You“を含む終盤に向けてぐんぐん加速していく。とはいえ、リスナーを意識の向こう側に連れ去るサイケデリックなギターの洪水はもちろん健在。前作の余韻を残しつつも、作品としては『プライマリー・カラーズ』に最も近く、その上で開かれた雰囲気が全編を覆っている。

『ルミナス』

前作『スカイング』が、自身への人気を追い風にポップ化して空へと飛び立った作品だったとするならば、『ルミナス』(=発光する、輝く)と名付けられた本作は、バンドがそのまま大気圏を突破して、夜空でパーティーを繰り広げるかのようなレコードだ。あなたもホラーズと共に、めくるめく異星のダンス・フロアへ。4作目にしてなおキラキラと目を輝かせて未知なる冒険に飛び込んでいった新作について、ファリス・バドワン(Vo.)とリース・ウェッブ(B)に語ってもらった。

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