カゴ音響派の雄、ザ・シー・アンド・ケイクとトクマルシューゴが11月12日(水)に恵比寿リキッドルームにてツーマンライブを行う!

このライブは恵比寿リキッドルームの10周年アニバーサリー企画の一環として開催されるもので。今年デビュー10周年となるトクマルシューゴと、2012年4月以来の来日公演となるザ・シー・アンド・ケイクの初競演には胸が高まるばかりだ。また、オープニングアクトにはGREAT3のベーシストとしても知られるjan(B, Vo, G)とnaomi(Vo, G)によるデュオ、jan and naomiの登場にも注目したい。

そんな本公演に向けて、Qeticではザ・シー・アンド・ケイクのメンバー3人による個別インタビューを順次お届け。まずは、ボーカル、ギターであり、ソロ名義としても活動しているサム・プレコップのインタビューをどうぞ!

Interview:The Sea and Cake[Sam Prekop(Vo.&G)]

── サムさん、こんにちは。まず、今はどこに? 辺りの様子を、説明してもらえますか?

サムこんにちは。今自宅のキッチンでラップトップを開きながら、君の質問の答えを考えているところだよ。さっきまで暗室と現像についての文章を読んでいたから、今朝子供達と行った地元の温室で撮影した写真の事が頭から離れない。もうすぐ夏も終わるけど、すごく充実した毎日だった。

──一昨年の来日、去年は<フジロック>、連続の来日になりますが、今年の夏はどう過ごしましたか?

そうだなあ、写真集を作りたくてその事を考えながら過ごしてた。でもまだまだ撮影をがんばらないとダメだね。夏は子供と過ごす時間が多いから面倒をみながら同時に出来る創作活動と言えば、写真が一番なんだ。外出する事が多くて、公園に行ったり、まだ訪れたことのない場所でランチしたり、被写体は無限大なんだ。

──ベースのエリック(・クラリッジ)さんが怪我で来日できないことが残念なのですが、その後の様子は如何ですか?

そうなんだよ、エリックは手根管症候群を発症してベースを弾けなくなったんだ。特にツアーでは、毎晩演奏しないとダメだからきついみたいだ。だから今は絵画の制作に集中しているみたいで、精力的に活動しているようだよ。けれど彼は日本に来て演奏するのが大好きだから今回参加してもらえなくて本当に残念だよ。今は彼の代わりにダグ・マッカム(Tortoise/Brokeback)がベースで入ってくれて、すごくいい感じだ。

── ザ・シー・アンド・ケイクとソロ名義での作品に取り組む姿勢の違いを、どう認識し、今現在、それらがどのように育ってきたと思いますか?

僕にとってザ・シー・アンド・ケイクは、真の意味での実験的なバンドだ。音楽スタイルは常に実験的ってわけじゃないけれど、実践的な意味では常にそうだ。僕のソロ・プロジェクトでやったシンセサイザーを使った最新のインストゥルメンタル作品なんかと比べると、圧倒的な違いは、バンドにはヴォーカルがあると言う事。ヴォーカルがあるとないのとではアプローチの仕方が全く変わってくるし、そういう意味合いにおいて、このバンドを僕のヴォーカルを発揮する場所として捉えてる。いつもヴォーカルが中心という訳じゃないけれど、曲を書く時は常にヴォーカルのイメージがあるんだ。僕はいわゆる典型的な歌手じゃないし、けっこうゆるい感じで歌ってるから、それがバンドの実験的な要素に貢献しているのかもしれないね。

僕個人のプロジェクトであるシンセサイザーを使った音楽への興味は、僕のミュージシャンとしての幅をすごく広げたと思うし、その影響がバンドにも出てると思う。アルバム『Runner』は僕がモジュラー・シンセサイザーから着想したアイデアを中心に制作されていて、想いを超えた面白いアイデアがいっぱい出て来て制作に大いに役立った。

The Sea and Cake – “Harps”(Official Music Video)

もう2年くらいザ・シー・アンド・ケイクのアルバム制作はしてないからそろそろ何かやりたいなと考えて興奮している。今までと違ったすごく面白い事が出来るような予感がしているんだ。でもスタジオに入ってみるまで何も予想出来ないんだけどね。早く始めたいよ。

── ここ最近興味があるアートや音楽、映画、本は?

サムここ数ヶ月はずっと写真撮影ばっかりしてたから朝から晩まで様々な写真集を眺めていた。ロバート・アダムズ、ウィリアム・エグルストン、スティーブン・ショア、ウォーカー・エバンス、ポール・ストランドなど、昔から好きな写真家の作品を見ていた。最近ジョージア州出身のマーク・スタインマッツという写真家について知ったんだけど、彼は昨年「Paris in My Time」という美しい本を出版したんだ。これには刺激を受けたよ。音楽なら、アレクシス・ズンバの『A Lament for Epirus 1926-1928』というレコードをずっと聞いているよ。怖いぐらいに美しい作品だ。

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