──1stアルバム『The Sea and Cake』から20年が経った現在、あなたにとってザ・シー・アンド・ケイクは、どんな存在ですか?

このバンドにはいつも驚かされる。もちろん良い意味でね。これだけ長年一緒にやっているのに、毎回曲を書いたりレコーディングする度に新しい発見をし、面白いものが作れる。それになんてったってあんな天才的に笑えるユーモアのセンスを持ったメンバー達と知り合いになれた事を本当に光栄に思っている。

── 以前、サムと一緒に“モートン・サボトニックチャット”という企画がありましたね。トータスで使っていたEMS(※2)をはじめとして、あなたのアナログ・シンセサイザーやエフェクト類のコレクションで最近一番興味を持っているものは?

いつも楽器や機材はローテーションで使っている。今は引っ越し中でほとんど倉庫に入れてるから一つ選ぶのは難しいけど、しいて言うなら、最近手に入れた1969年型のエレクトロダインのレコーディング・コンソールを手入れする事に一番興味を持っている。好きな機材というか、一番よく使う機材はEMS、VCS3(※3)、そしてSynthi AKS(※4)かな。良い意味ですごく原始的なんで、予期できない効果を生み出してくれる。すごくユニークですばらしい機材だ。

※2:EMS
イギリスのElectronic Music Studios社のヴィンテージ・シンセサイザー
※3:VCS3
EMS社のポータブル・アナログ・シンセサイザー
※4:Synthi AKS
EMS社の代表選手。アタッシュケース型アナログ・シンセサイザー

── 実際、それらの機材を録音で使用してみて、あなた自身一番おもしろかった作品は?

僕の記憶にまず蘇ってきたのはステレオラブの『Dots and Loops』。あのレコードは素晴らしい作曲、アレンジ、そしてミュージシャンの技術の完璧な組み合わせだったんだけど、忘れてはいけないのはレコーディング技術だ。当時レコーディング技術がすごく面白い時期に来ていて、そんな側面があのレコードを形創るのに大きく貢献したんだ。Pro Toolsを使うのは初めてだったけど(なんせ1997年だったからね!)、レコーディングはもちろんの事、アレンジしたり、曲を仕上げるのにも非常に重要な役割を果たした。テープだけだったらあそこまで出来なかったよ。

あと、コンピューターを使う事で複数のシンセサイザー音の融合がすごく簡単になった。MIDIからCVコンバーターへと全てのデヴァイスをコントロール出来るようになったからね。それから、モジュラー・シンセサイザーもすごく大きな役割を果たしたよ。大抵はアウトボードギアのように使われていたから、いつでも使えるようにセットアップされ、楽器の音やヴォーカルがいつでも足せるようになっていた。

Stereolab – 『Dots And Loops』

── エレクトロ・ミュージックの録音作品であなたのトップ5アルバムは?

(順不問)
ヤニス・クセナキス『La Legende d’Eer』(Montaigne)
ベルナール・パルメジャーニ『De Natura Sonorum』(INA-GRM)
ロバート・アシュリー『Automatic Writing』(Lovely Music)
ニュー・ブロッケーダース『Changez Les Blockeurs』(自主制作)
インキャパシタンツ『Tight』(DOGMA CHASE/DOGMA-001)

Robert Ashley – Automatic writing(1979)

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