ンビエント・ミュージック。巨匠ブライアン・イーノが提唱した、ある意味では思想とも言えるこの音楽ジャンルは、以降、様々な拡張性を持ち非常に自由なフォーマットとして今なお機能する。カナダはバンクーバー出身のティム・ヘッカーは、10年以上の長きにわたりアンビエント・ノイズ・ドローンシーンを牽引してきた人物。アンビエントの要素はもちろん、そこに非常にアヴァンではあるが美しきドローンとノイズのエレメントを持って、アンビエントに更なる進化をもたらした最重要アーティストである。

活動当初はJetone(ジェトン)名義にてミニマル・ハウスからキャリアをスタートさせ、2000年初頭には活性化したクリック・ハウス/グリッジのムーブメントに接近。同時期にはティム・ヘッカーとしての活動もスタートさせ、オヴァル~クリスチャン・フェネス以後を感じさせる細やかなトリートメントをほどこしたアンビエント・ノイズ・ドローン音楽家としての力量を示す。

今年はシガー・ロスの春のUSツアーをサポートするなど、さらに世界的に活躍し高く評価される彼が、6月7日に渋谷のWWWにて待望の初来日公演(翌日8日には京都メトロ)を果たす。これまで池田亮司、cyclo.、PLAIDや黒川良一など国際的に前線で活躍するエレクトロニック・ミュージック/アーティストのライブが行われてきたWWWは、国内屈指のサウンドシステムを誇る。240V駆動のFUNKTION-ONEでティム・ヘッカーのサウンドがどう表現されるか、期待が高まる(当日のPAエンジニアはzAk)。
また、関西唯一の公演は「エレクトロニックミュージック特区」とも呼ばれる京都にて、地元拠点のイベント&レーベル〈night cruising〉とWWWがタッグを組んで開催。会場の京都METROは関西拠点のアーティストはもちろん、これまでも<ラスターノートン>ナイトやマシュー・ハーバートなど海外の大物アクトのイベントを開催してきた場所。梅雨の京都は、ティム・ヘッカーのライブを体験するには絶好のアンビエントシチュエーションとなるだろう(ちなみに両公演ともAmetsubがライブ出演!)

そんな直前にQetic編集部はインタビューを行った。インタビュアーには、これまた来日を待ちこがれていたという、warszawaのヤナシャワさんにお願いし、かなりのキャリアに深堀りした貴重なインタビューとなった。最後には新作アルバムの情報も!このインタビューを読んで、ぜひとも来日公演に足を運んで欲しい。

(text by ダブルビー)

Interview:Tim Hecker

――僕があなたの音楽を初めて聴いたのは Jetone(ジェトン)名義のミニマル・ハウスでした。あなたの音楽キャリアはこのジェトンが始まりで宜しかったですか?

そう。その名義でリズムを主体とした音楽を作り始めたけど、もうやってないに等しいね。

――今もハウスは聴いたり作ったりしますか?

今は全くしていないよ。

――その後、ティム・ヘッカーとしてのアンビエント・ミュージックはどのように始まったのですか?

個人的にパーカッシヴな音楽に飽きてしまって、情緒的でサイケデリックなサウンドを求める上でそこに限界を感じてしまった。

――ティム・ヘッカーとしてのデビュー作 『Haunt Me, Haunt Me Do It Again』 は、それ以降のあなたの作品の基本的なスタイルになっていると思います。あなたの音楽は、ギターなど何らかの生音がソースになっていますよね。アンビエン ト・ミュージックを作るうえで、何らかの基準や約束事があるのでしょうか?

ルールはないよ。アンビエントというスタイル的な制限があるとするなら、僕はそれを作ろうと思った事はないね。確かに初期の作品は加工されたギターをたくさん使っていたけど、ここ7年間はギターをほぼ使わず、シンセサイザー、サンプラーやその他の生音を使っている。

――『Ravedeath, 1972』は、アイスランドの教会でオルガンを用いて制作したようですが、その時の状況を詳しく教えて下さい。その後リリースした『Dropped Pianos』は、ピアノをシンプルに用いて、あなたの作品群の中では少し違うアプローチのものだと思いますが、あれはどういうタイミングで録音したものですか?

『Dropped Pianos』はほとんど『Ravedeath , 1972』の前に録音したもので、生音の楽器をパソコンに通してライブで加工や演奏する実験がしたかったんだ。まるでアドリブ演奏のようなもので、味気ないデジタル・コンピューターの音を使ってその信号をアンプや空間を通すことにより完全デジタルだけではできない深みを作りたくて。『Ravedeath , 1972』はその延長線でピアノではなくオルガンを使った。

――直近作『Instrumental Tourist』で競演した、ダニエル・ロパティンとはどのようなきっかけで一緒に始めたの?

インターネットで連絡をとって色々話してたら、何日か一緒にレコーディングをやってみようって流れになった。

――『Instrumental Tourist』でのあなたの役割はどのようなものでしたか?

決まった役割はなくて、片方がアイデアを出し、ジャムセッションのように反応したり一緒に演奏したりしながらテープに録音をした。まるでジャズを真似たようなアプローチだったね。

――あまりコラボレート作がなかったあなたですが、他のアーティストと一緒にやるのはどうでしたか?

とても楽しかった。ダニエルは音楽に対して結構捻くれた所があっていろいろなアプローチを持っているから、会話が面白くて作っている時はユーモアのある和気あいあいとした感じだった。出来上がった作品にそれが出てないと思うけどね。

――アンビエント・ミュージックを作り続けるのは大変じゃないですか? 言い方は悪いかもしれないですが、変化に乏しいし、他のアーティストとの差別化も難し い。また、アーティスト側のアイディアや制作行程などに大きな変化があってもリスナーには、記述を読まない限りなかなか伝わりにくいと思いますが。

正直あまり気にしてない。自分はアンビエントに対して熱心なわけでないし、他の作品に比べて‘変化’かあるかどうか、スタイル的に差別化できているかどうかはほとんど気にしてないよ。

――現在は何か新しい作品を作っていますか? もしそうであればどのようなものか少し教えて欲しいです。

今は2013年秋口にリリースする新しいアルバムを終わらせているところです。

(interview by Yuji Yanagisawa[warzsawa])

Event Information

WWW presents Tim Hecker Japan Tour 2013

●WWW presents(東京公演)
2013.06.07(金)@渋谷WWW
OPEN 19:00 / START 20:00
ADV. ¥4,000(ドリンク別 )
Opening Guest:Ametsub -exclusive set-
INFO:WWW(03-5458-7685)
主催:渋谷WWW
協力:p*dis / melting bot


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●WWW & night cruising present(京都公演)
2013.06.08(土)@京都METRO
OPEN 17:00 / START 17:30
ADV. ¥2,800(ドリンク別)
Opening Guest:Ametsub -exclusive set-
DJ:Tatsuya Shimada (night cruising)
INFO:METRO(075-752-2787) / WWW(03-5458-7685)
主催:渋谷WWW / night cruising
協力:京都METRO / p*dis / melting bot


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TICKET:チケットぴあローソンイープラス
WWW・シネマライズ店頭(東京公演のみ)にて発売。

Release Information

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