“TOKYO”という街への不安と期待

–––あれ、ワンカットだったんですね! ノースタントの中、恐るべしです。話は変わりますが、『TOKYO TRIBE』ではそれぞれのトライブを縄張るギャングたちが暴れ回るわけですが、あの時代(10年程前)に原作の作風が流行ったのはめちゃくちゃな世界だけど少なからず憧れがあったと思うし、若者たちにも勢いがあったからだと思うんです。いち若者として個人的にそういった勢いに危機感を感じているのですが、お2人はどう感じていますか?

 「外に出ていく、世界を目指す」という勢いは確かにないよね。文化面は。スポーツは、メジャー(リーグ)とかサッカーとか色々出ているけど、文化面では海外を意識して、「日本はこういうことやっている」って打ち出し方がないんだよ。「外の人は色々やっていますけど、ウチはこんな感じです」ってちょっと鎖国状態になりつつある。だからそういう意味で元気がなくなってきているかもしれないね。

清野 ……(考える)。

 今の話は難しいね。そうじゃなくて、「最近の若者は元気あるか? ないか?」って。ジャスティン・ビーバーみたいな元気があるか?って。

一同 (笑)

清野 いや、ないと思います。みんな、型にはまっている気がしてて、「もっと自分がやりたいようにやればいいのに!」とはすごく感じています。若者だけじゃないと思うけど。

 礼儀正しさはすごく増したと思う。前もサッカーのとき、皆でゴミを片付けてたりね。もしかしたら、そういうのが強すぎて元気なくしちゃってんのかなー、とも思うときもある。「約束事は守んなきゃいけない」みたいなモラルはしっかりして、元気を失っているのかもしれないってね。

【インタビュー】園子温 × 清野菜名、“TOKYO”という街への不安と期待 film140827_tokyotribe_3

–––なるほど。監督は以前TV番組でワールドカップの際に渋谷で騒いだ人々に対して、「そもそも子供達が遊ぶ場所が無い」とおっしゃっていましたよね。

 第一にそういった自由を与えようとしてない東京というのがあるので。サッカーの中継行われるとき、全世界どこにだってみんなが熱狂できる広場が用意されてるんだよ。日本にはないから、ハチ公前交差点にみんなが行っちゃうのは仕方がない。普通だったら、都市空間として駅前広場が普通はある。決して、あの若者たちを批判するわけのではなく、そういった都市計画自体を見直したほうがいいと思うんだよ。

清野 私も東京って場所がないと思うんです。実家が愛知県ですごい田舎に住んでいたんですけど、いつも自分が好きなタイミングで人を気にせず運動できたんです。東京に上京してきてから、運動する場所がなくて、すっごくストレスが溜まったのがアクション始めたきっかけでもあるんです。本当、東京って場所がないなぁって思います。

【インタビュー】園子温 × 清野菜名、“TOKYO”という街への不安と期待 film140827_tokyotribe_9

–––そんな東京に対して今後の期待はありますか?

 東京は……あまり期待しないほうがいいと思う。実はこの後、東京オリンピックを間近に控えた東京を舞台に『ラブ&ピース』って映画をやるんです。そこで、東京オリンピックとかそんなムードで盛り上がっている東京に対して一撃を食らわしたい。それを見てもらいたいですね。

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