とんでもないセンスの持ち主がいる。“いちおう音楽ブログ”・“普段まったく音楽を聞かないアラサー女子が 恋人のCDをこっそり一枚づつ全曲聴いてレビューし運命の一枚を探すブログ”の『うんいち ~運命の一枚をさがせ~』では、どこか的を得る音楽レビューがツイッターでバズる。
とあるアラ子さんは音楽ブログだけでなく、コミックエッセイやnoteでの掲載など、精力的に活動を続けている。『美人が婚活してみたら』(2019年映画化決定!)や『わたしはあの子と絶対ちがうの』では、恋愛と幸せという大きなテーマを、現実と直面しながら、アラ子さんの独特なセンスで探し求めていく。
そんな彼女だが、素性はよくわかっていない。どういう音楽が好きなのか、どんな映画を観ているのか、好きなYouTubeの動画、更新が止まっている『うんいち』についてなどについて、メールインタビューにお答えいただいた。
メールインタビュー:とあるアラ子
自己紹介をお願いします。
とあるアラ子です。雑誌やアプリで漫画の連載をしています。
漫画を描く前は「とあるアラサー女子」という名前で恋人のCD棚を勝手にレビューする『うんいち ~運命の一枚をさがせ~』というひどいブログをやっていました。その後いろいろあって漫画を描くことになり「とあるアラサー女子」を縮めて「とあるアラ子」を名乗るようになりました。現在はアラサーといえる年齢は過ぎてしまっており「とあるアラ子」を名乗る資格はあるのかな、と悩んだりしましたが、「とあるアラフォー女子」「とあるアラカン女性」を縮めても「とあるアラ子」になることに気づいたので、これからも末永く名乗っていきたいと思っています。
とあるアラ子さんが好きなもの/ことはなんですか?
対戦型のソリティアが好きで、通算1万回以上プレイしています。視力が悪くなるので止めていた時期もあるのですが、夢に出てきたり、禁断症状がでるので、最近は1日あたりの回数を決めてプレイしています。
一番気に入っている/何回でも観ちゃうYouTubeビデオは?
CASIOトルコ温泉の『スリマッカのうた』です。おそらく「スリマッカ」という組み立てられるシルクスクルーンキットの宣伝を兼ねたミュージックビデオだと思うのですが、意味不明な歌詞と、妙齢の女性たちが体操着を着ながら変な踊りをするのが面白くて何度も見てしまいます。あと、ちょっとシルクスクリーンもやってみたくなります。
スリマッカのうた/CASIOトルコ温泉
一番好きなフィクションキャラクターをお答えください。
入江喜和先生の大名作『たそがれたかこ』の主人公・片岡たかこです。最終回のとんでも展開に賛否両論あったようですが、わたしはたかこの行動が面白すぎて、かわいすぎて、共感しすぎて、「大好き!」って声に出しながら読みました。45歳のパート勤めの内気な主人公が、アーティストにハマることで少しづつ変わっていく物語なのですが、好きなアーティストや音楽に救われたことのある人なら、年齢、性別にかかわらずグっとくる作品だと思います。ふだん女性向けの漫画をあまり読まない人でも騙されたと思って読んでみて欲しいです。わたしが今連載している漫画の主人公もタカコという名前ですが、わたしの漫画の100倍くらい面白いです。
座右の銘は?
「いつ寝てるの? って思われたいから寝ないで頑張る」
これは10年くらい前にみうらじゅんさんが雑誌の対談で話されていた言葉です。なんの雑誌かは忘れてしまったのに上げるのは申し訳ないのですが……。「こういう人間だと思われたい」という小さな見栄や願望は誰の中にもあるものだと思いますが、実際に「そう」思われるためには、「そう」努力するしかないのだと、当たり前のことを気付かせてくれる素晴らしい言葉だと思ったので、以来座右の銘にしています。
最近ハマってるテレビ番組は何ですか?
『陸海空 地球征服するなんて』(テレビ朝日系列)のバイキングの西村さんがInstagramの「いいね!」数に応じた金額だけで旅をするコーナーがとても好きです。インスタ映えをバカにする風潮に一石を投じる(?)素晴らしい番組だと思います。
最も読み返した本/漫画は?
矢沢あい先生の『ご近所物語』です。1995年からりぼんで連載された作品で、私は当時小学生だったのですが、高校生を主人公にしながら恋愛や友情だけではなく「仕事とは何か」という深いテーマも描かれているところが脳天を突き抜けるほどの衝撃を受け何度も読み返しました。登場人物たちのポップなファッションとは対照的に、デザイナーを志す主人公・実果子が才能がありすぎるが故に恋人と距離ができてしまう終盤の展開や、クリエイターを志す仲間の中で唯一やりたい事の見つからないバディ子という影のあるキャラクターがリアルに描かれており、20年たった今でも全く色褪せることのない大名作だと思います。
ラストが納得のいかなかった映画は? またその理由、感想があればお答えください。
前田弘二監督の映画『婚前特急』です。吉高由里子さん演じる超ビッチなOL池下チエが、たくさんの彼氏の中から一人にしぼって結婚しようとするコメディ映画で、登場人物が魅力的で、本当に面白い作品なのですが……。ラストシーンだけは「どういう意味なんじゃーい!」と叫びたくなるような展開でどうしても納得しかないんですよね。でもこういう反応を想定して作ってると思うので、けっきょく監督の思うつぼなのだと思いますが(笑)。
『婚前特急』 予告編
寝る前に聴きたい一曲は?
特になし。
『うんいち ~運命の一枚をさがせ~』の更新が止まっていますが……?
楽しみにしている方もいるらしいので頑張りたいと思ってるのですが、706枚目のsloanさんの『ビトゥーン・ザ・ブリッジズ』というアルバムが、ジャケットはあるのに中身のCDが見つからず、そこからプッツリとやる気をなくしてしまいました。仕事が忙しくなったことも関係しているかもしれません。積極的に更新していた2014年~2015年頃は体調を崩してあまり働いてなく暇な時期だったので……。でもブログを更新しなくなってから体調もすっかり良くなって、もしかして音楽を聴くことが精神に良くない作用を及ぼしていたのかもと今は思っています。
今後の活動目標は?
現在Vコミで連載中の『美人が婚活してみたら』をとにかく最終回まで無事に描きたいというのが一番の目標です。
今後の予定は?
『美人が婚活してみたら』の2巻が小学館クリエイティブより4月11日(水)に発売されます。実在する私の友人の婚活を描いた漫画です。なんと来年は大九明子監督・シソンヌじろうさん脚本・黒川芽以さん主演で映画化も予定されています。はじめの10話はVコミで無料で読めるので気になった方はぜひ!
『美人が婚活してみたら』
2019年公開
【監督】 大九明子
【脚本】 じろう(シソンヌ)
【原作】 とあるアラ子『美人が婚活してみたら』(小学館クリエイティブ)
【出演】 黒川芽以、臼田あさ美、中村倫也、田中圭(2018年3月現在)