auの音楽サービス「うたパス」が提供するVRコンテンツ「VROOM(ブイアルーム)」にて、ACIDMANの大木伸夫とNAOTO QUARTETによるスペシャル・ユニット「ROCKIN’ QUARTET」によるVR映像が公開された。

「VROOM(ブイアルーム)」は過去にもgo!go!vanillas、Awesome City Club、GRIM SPANKY、SILENT SIREN、ORANGE RANGEといった様々なアーティストの撮りおろしVR映像を配信しているプロジェクト。その第6弾となる今回は、「ROCKIN’ QUARTET」によるACIDMANの楽曲“ある証明”のライブ映像を360°VRで撮影し、メンバーの息遣いまで感じられる特等席とも言える空間で、彼らの演奏のダイナミズムを臨場感溢れる体験型コンテンツに落とし込んでいる。

今回はその制作過程やそもそもの企画が実現した経緯、そしてプロジェクトを通して感じたVRコンテンツの可能性を、「VROOM(ブイアルーム)」プロデューサーのカタオカセブン氏と、ACIDMANの大木伸夫氏に語ってもらった。

Interview:大木伸夫×カタオカセブン

【対談】大木伸夫(ACIDMAN)×カタオカセブン。360°VRライブ映像「VROOM」とVRの未来を語る vroom-pickup3-700x467
大木伸夫
【対談】大木伸夫(ACIDMAN)×カタオカセブン。360°VRライブ映像「VROOM」とVRの未来を語る vroom-pickup4-700x467
カタオカセブン

——今回は「ROCKIN’ QUARTET」でタッグを組んでいる大木さんとNAOTO QUARTETによる“ある証明”の撮影が実現しました。まずはカタオカさんに伺いたいのですが、今回「ROCKIN’ QUARTET」を起用した決め手はどんなものだったのでしょう?

カタオカセブン(以下、カタオカ) 「ROCKIN’ QUARTET」という企画がはじまるという話を企画のプロデューサーに聞いたときに、単純に「面白そうだな」と興味を持っていたんですよ。想像するだけでも美しい世界観のものになるんじゃないかと思って。結局、ライブに向かうことは出来なかったんですが、その後ライブの映像を観させていただいたときに「ああ、これを撮りたい!」と純粋に思えて。それを今回やっと実現出来たというのが一番の経緯ですね。

——「ROCKIN’ QUARTET」はストリングス・カルテットと大木さんのコラボレーションとあって、大木さんにとってもかなり新鮮な体験になっているのではないかと思います。

大木伸夫(以下、大木) 普段とは全然違いますね。僕は普段ACIDMANでギターを弾きながら歌っているわけですけど、あのプロジェクトは僕がマイク一本で歌だけに専念出来るし、アレンジもすべてNAOTOさんにお任せしているので、普段のライブとはまったく異なる体験でした。僕自身、自分の作った歌詞や歌の世界に入り込めるような魅力を感じたので、普段とは違う形で音楽表現をするいい場所をいただけたような感覚でした。

カタオカ やっぱり、ACIDMANのときとは全然違う感覚なんですね。

大木 誤解されるとよくないですけど、あえて言うならACIDMANのときは100%しんどい(笑)。というのも、やることがたくさんありますし、前準備も必要だし、ライブが終わった後の余韻もすごいので。でも、「ROCKIN’ QUARTET」では歌だけに集中することができるというのが、とても新鮮でした。アレンジもNAOTOさんが原曲の魅力を生かしつつすべて担当してくれたので、ACIDMANの楽曲をアレンジ違いのBパターンでライブをしているような雰囲気でした。

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——そして今回、「VROOM(ブイアルーム)」でのプロジェクトが実現しました。

大木 面白い企画をいただきました。僕はもともとVRに興味があったんですよ。男なので、最初はVRAVへの興味が一番でしたけどね(笑)。でも、そこから次は、ホラー映像や、宇宙のVRも体験したくなりました。とにかくドキドキしたいというか、VRはそういうコンテンツに向いているのかな、と思う部分があったので。

カタオカ そういえば、ちょうど撮影の前後に、VRAVの話をしたんですよ。ただ、大木さんはあまりはまらないのかな、とは最初にお伝えしていて。

大木 飲んでいるときに、「大木さんはハマらないかもしれない。制作側の視点で見てしまうんじゃないか」と言われました。それで「そんなわけあるかい! 俺がどんだけエロいと思ってるんじゃ!」と思って観てみたら、確かにあまりハマらなかった……。

——(笑)。大木さんはACIDMANでもヴィジュアル要素を含めた表現を大切にされてきただけに、むしろ音楽活動における映像ツールしての可能性を感じたんじゃないですか?

大木 そうですね。僕はもともと最先端技術のようなものが大好きで、VRも15年ぐらい前から興味があって、「いつかこの技術が身近にならないかな」と思っていたんですよ。それがここまで身近なものになっていることを、今回のプロジェクトで実感できました。「今後、これも表現のツールとして存在していくんだな」と改めて感じましたね。

——今回の映像は「ROCKIN’ QUARTET」でACIDMANの“ある証明”が演奏されています。まず、この映像作品の大枠としてはどんなことを考えていったんでしょう?

カタオカ 今回の映像に関してはすごくシンプルで、まずは「ROCKIN’ QUARTET」の演奏を間近で観てみたい、ということですよね。でも、ライブでそれを実現するには特等席の券売をするしかない。だから、その特等席をVR空間に用意しようと思ったんです。今回はそういうシンプルな発想でいきました。これはファンやお客さんは絶対に嬉しいだろうと。

——“ある証明” を選んだ理由は何かあったのですか? この曲はACIDMANにとって、メンバーの関係性が上手くいかず一度バンドが分解しかけた時期を経て、また前に進んでいく際に出来た大事な曲でもあり、ライブの定番曲でもあると思います。

大木 そうですね。この曲は、バンドがはじまって5年ぐらい経ったときに作った曲で、それから10年ぐらい、ほぼ欠かさずずっとライブで演奏してきた曲です。だから、僕らにとってはすごく大事な曲でもあり、それをNAOTOさんが見事にアレンジしてくれたので、「ROCKIN’ QUARTET」にとってもプロジェクトを象徴する曲のひとつだと思います。

ACIDMAN – ある証明

——これまでの「VROOM(ブイアルーム)」の映像と比べても、今回の作品は実際の演奏の臨場感やリアリティのようなものが大切に表現されているように思いました。

カタオカ そうですね。「この演奏をVRで観たい!」と思ったときの初期衝動のようなものや、美しさに監督とこだわっていきました。つまり、NAOTO QUARTETの演奏と大木さんの声を映像の中にどれだけ美しく落とし込めるか、ということですね。「ROCKIN’ QUARTETの輪の中に入れたら最高だな」という初期衝動をどう具現化して、観てくれる人がその世界に入り込めるものにしていくか、ということが重要でした。

あと、企画に賛同してくださったレコーディングエンジニア山内”Dr.”隆義(gogomix@)さんをご紹介頂いて、音も生演奏で録らせていただけたので、映像だけではなく今回も「音」にこだわりました。そこでレコーディング・スタジオでの撮影になりました。もちろん、最初は色々な候補があって、白ホリのスタジオで撮ろうとか、ガラスのモニュメントの前で撮って、そのモニュメントに「ROCKIN’ QUARTET」のシルエットを反射させようとか……色んな案があったんですよ。モニュメントの案では、モニュメントに投影された大木さんだけが歌っていない、という仕掛けを作ろうとか、結構色々考えました。

大木 へええ、そっちの方がよかったかも(笑)。

カタオカ こら!(笑)。じゃあ、このアイディアはACIDMANのVR作品に撮っておきましょう。他にも、ACIDMANの新作『Λ(ラムダ)』の6曲目“ユートピア”を聴いていて思ったことなんですけど、4枚の鏡を並べてひとつだけ実際の大木さんの映像にするとか……。色々なアイディアを考えていった中で、最終的にこの形に落ち着きました。

——シンプルなようでいて、全編には様々な工夫が凝らされていますね。冒頭、先に位置についているNAOTOさんたちのところに大木さんが階段を降りてやってきますが、そのときの大木さんの靴音のようなものまで聞こえてくるところなどは印象的でした。

カタオカ VR映像は360°観られることもあって、目線誘導のために入れた個所ですね。その辺りは、「ROCKIN’ QUARTET」のみなさんにとても助けてもらいました。360°観られるVR撮影の場合、僕らスタッフは(映らない場所に)逃げないといけないので、最終的には出演するみなさんにお任せしなければいけなくなるんですよ。この辺りは、「ROCKIN’ QUARTET」のみなさんに上手くやっていただいたところですね。とはいえ、大木さんは「歌詞間違えたかも?」と言われていましたけど(笑)。

大木 ちょっとだけ間違えてしまったんですよ。もう10何年も歌っている曲だし、目の前に歌詞カードがあるにもかかわらず(笑)。

カタオカ そこは公開されたものでチェックしてもらえると嬉しいですね。

【対談】大木伸夫(ACIDMAN)×カタオカセブン。360°VRライブ映像「VROOM」とVRの未来を語る vroom-pickup1-700x467