――その裏面は同じ切り抜きを使ったものになっています。表と裏で同じモチーフを題材にしているのがすごく面白いですね。

上岡 そうすることで繋がりというか、ストーリーが出来ると思ったんですよ。表は龍がいるけど、裏面にはいなくて、(ブラックホールのようなものに)吸い込まれていっている、みたいな。それが時間の流れになっているんです。

コムアイ (携帯のロック画面を見せながら)見て見て! そのイラスト、待ち受けになっているんです。

――おお、すごいですね!

コムアイ わたしは裏面がどんなものになるのかも全然知らなかったんで、お任せしますっていう感じだったんですけど、ビックリしました。それで、裏面の方の色味がすごく綺麗になったんですけど、なかなか印刷で(色が)出なかったんですよね。

――この裏面をどうしようかという話は、オタミラムズさんも一緒に考えていったんですか。それとも上岡さんが考えていったんですか?

上岡 これはもう、俺が勝手に考えていきましたね。なんせ、相談しても答えが出ないアートワークを作ろうっていうことだったと思うんで、話したところで答えが出ないから、ある程度は突っ走っちゃわないと「終わんねえのかな」という俺の勝手な解釈だったんですよ。

水曜日のカンパネラ、最高傑作『ジパング』をクリエイター陣と紐解く MG_8121

コムアイ 何の疑いもなく進めていたよね(笑)。

全員 あははは(笑)。

コムアイ そもそも、「ジャケ写お願いします」というところから始まって、どんどん(上岡)拓也さんの担当ページ数が増えていったんです。快諾するから(笑)。

――(笑)。最初にコムアイさんが提示したイメージと完成版を比べてみると、上岡さんがだいぶ飛躍させているのが分かりますね。

コムアイ そうですね。やっぱり想像以上になっていてビックリしたし、顔がすごく似てて「キモッ」ってなったりもしたし。キモ笑いというか、泣き笑いみたいな感じでした。「わぁ、似てる……!!」って(笑)。

白玖 うん、似てる(笑)。

上岡 顔はめっちゃ時間かかりましたね。このままの写真がなかったから、写真を探りまくって、「目はどんなんかな? もうちょっと近いかな。肌はこんな感じかな?」とか、色々考えて。

コムアイ なんか、急にものすごく似ましたよね。1日ぐらいで急にものすごく変わって。

上岡 1~2日ぐらい顔だけずーっと書いていたんです。

白玖 途中のものも出しましょうか?

――ぜひぜひ。(受け取って)わあ、全然違いますね。これはこれで素晴らしいですけど。

コムアイ こっちは童話絵本っぽい(笑)。

――途中で「どうすれば似るか」というコツがわかったということですよね?

上岡 あ、でもそれは最後までわかんなかったですね。ちょっと目を変えたり、ちょっと鼻を変えたりして徐々に詰めていった感じで。あと、一回メールをくれたよね?

コムアイ そうそう。顔だけは細かく言ったんです。「もっと肌を白くして」とか「首が太い感じがする」とか、「アイラインを薄くした方が私っぽくなる」とか。そしたら、作家には珍しんですけど、拓也さんってそういうのに対処するのが早いっていうか。じゃあこういうことになるのかな、みたいなことを自分でイメージできる人だったんですよ。

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――そして、背景も相当エクストリームに振り切れていますよね。途中の段階では何もなかったと思うんですけど、完成形には色んなモチーフがちりばめられていて。

コムアイ そうそう、確かに。

上岡 まぁそこは、決めないで書いていこうと思っていたんですよ。

コムアイ お月さまとか、いいよね。ここの思い付きで拓也さんが描いた月が、最終的に盤の絵柄になっていたりもして。

――月のイラストを採用したのはどういう経緯だったんですか?

コムアイ 確か、ここは2転3転したんだよね?

白玖 した(笑)。本当は、得体のしれない新種の鉱物が盤面に描かれていて、4本目のシルクロードを通ってきたその鉱物がリスナーの手に渡るような、紙ジャケットからその盤が出てくる演出にしたいと考えていたんです。

コムアイ そうそう、スリーブからポロッと出てくるのがいいかなと思って。

平岡佐知⌘B(以下、平岡) それで一回、かりんとうのバージョンを送ったよね(笑)。

コムアイ ああー、そうそう! でも完全に○○○みたいだったっていう(笑)。

平岡 ダメだった(笑)。

水曜日のカンパネラ、最高傑作『ジパング』をクリエイター陣と紐解く MG_8107

――(笑)。それで、結局月になったのは何故だったんですか?

上岡 ある日、白玖さんから「盤はこれになったから」って言われて「え、マジで」っていう(笑)。小っちゃく描いていたんで、「これを盤面に使うんだったら」と思って描きなおしました。

コムアイ それでまた仕事が増えちゃった(笑)。

全員 ははははは(笑)。

平岡 描き直した月って、若干コムさんに似ていますよね(笑)?

コムアイ ああー、確かに! 実はダルビッシュさんに似てるとも言われているんですけど。

――(笑)。オタミラムズさんは、どんなアートワークにしようと考えていたんですか。

白玖 僕たちは、アイディアをヒアリングした時点で、「変容」を表現しようと思っていたんです。シルクロードの話もそうなんですけど、どこからかが出発地点になって、どんどんそれが移動し、変容していく。たとえば音楽の音階とかも、イスラム圏の音楽がどんどん伝わっていって、日本へやってきた時にはひと味違ったものになっていたりしますよね。そもそもは同じものだけど、徐々に変容を遂げていく……。だから鉱物も、コムさんの新種の鉱物がどこからかやってきて、それが変容を遂げていく、という風に落とし込めばいいと思っていて。ジャケットやブックレットでも、その変容を表現できればと思って、「蛇腹になった歌詞カードの文字絵を開くと、その絵がまったく違う絵に変容する」という形にできればと思ったんです。

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