トロ・イ・モアやシフテッド、ダニエル・ロパティン(ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー)が好きだと言う連中がやっているロック・バンドなんて、めちゃめちゃ興味が湧いてくるだろう? しかもそのバンドはいわゆるギター、ベース、ドラムからなる一般的な編成のロック・バンドではない。プログラミング、ギター、ヴォーカルを担当する松村勇弥、VJ、アートワークを担当する田嶋紘大、そしてドラムの平沼喜多郎という実にユニークな編成からなる3人組なのだ。そのバンドの名は、white white sisters。
2008年に名古屋で結成された彼らは、いく度かのメンバー・チェンジを経て、現在に至る。デビュー当初より、BOOM BOOM SATELLITESやスーパーカーの後を追う、新世代のダンス・バンドして注目を集め、<SUMMER SONIC 2010>や<SXSW2011>などの大舞台も経験している彼らのことをすでに知っているという人も少なくないだろう。彼らはこれまでに2枚のミニ・アルバム、CMT、ALTZ、nakakoらが参加した(ディープ過ぎるメンツ!)リミックス盤、映像と音楽をパッケージしたDVDシングルを世に送り出し、ジワリジワリとそのサウンドの中毒者たちを増殖させてきたが、この度、いよいよリリースされるファースト・フル・アルバム『SOMETHING WONDROUS』によって、そのサウンドはさらに多くの人たちの耳に届けられることになるだろう。
『SOMETHING WONDROUS』は、これまで彼らのサウンドを特徴づけていた要素──例えば、グリッジ音を散りばめた先鋭的なエレクトロニック・サウンド、ソリッドで洗練されたダンスのグルーヴ、アグレッシヴでサイケデリックなギターのノイズ──により磨きを掛けながらも、これまで以上に“歌もの”に比重を置いた素晴らしいポップ・アルバムに仕上がっている。コズミック・ディスコ、チルウェイヴ、ミニマル・テクノ、IDM、テック・ハウス、そしてなんとジュークまで(!)……近年のさまざまな音楽のエレメントが散りばめられていたサウンドは、この国のダンス・ロックの新しい息吹を感じさせる。またすべての楽曲にオリジナルの映像がセットになっているのも彼らのユニークなところ。その全貌はライヴで明らかになるに違いない。
今回は松村、田嶋、平沼のメンバー全員に話を訊くことができた、バンドの結成から、最新作に至るまで。瑞々しいセンスと可能性を感じさせるこの新鋭、white white sistersをまずは知っていただきたい。
Interview:white white sisters
––––まずバンド結成当初のお話からお伺いしたんですが、当時、どのような感じでメンバーが集まったんですか?
松村 最初は大学の軽音楽サークルのようなところで、スーパーカーのコピー・バンドをやっていたんです。で、じょじょにオリジナルもやりはじめて。でもいまとなってはその時のメンバーは僕しか残っていませんが(笑)。最初はベース&ヴォーカル、ドラム、プログラミングの3人編成だったんです。
––––その頃の音楽性というのは?
松村 打ち込み主体というのはいまと変わらないですけど、まだ明確な方向性がなく、いろいろブレてましたね。
––––バンド名の由来は?
松村 それが……、もういなくなったメンバー(元ベース&ヴォーカル)が付けた名前なんですよ。そんなに深い意味はないと思います。
田嶋 もう誰もわからない(笑)。
––––だはははは。TOTOに“White Sister”という曲がありますけど、そこからかなって思ったんですけど。
松村 いやいや、ヤツは絶対にTOTOなんて聴かないのでそれはないです。
––––田嶋さんはその頃からのお知り合いなんですか?
田嶋 いえいえ、僕はその頃は普通にお客さんとして彼らのライヴを観てました。学校も違いましたし。で、その後、一緒に記憶をなくすぐらい飲んだことがあり、それから仲良くなりました。
––––お客さん目線で、初期のwhite white sistersはどのようなバンドに写っていましたか?
田嶋 彼らのmyspaceに“spica”というバラード調の曲がアップされていて、それを聴いて「これは観ないと!」と思ってライヴを観にいったんです。で、ライヴがかなりよかったんですよ。何か新しい感覚を持ったバンドだなって思って、その場ですぐに話しかけて、そうしたら年齢も同じだったっていう。それが出会いです。