このバンドにVJは絶対に必要だと思っていた
––––その後、田嶋さんはどういう感じでバンドに合流するんですか?
田嶋 記憶をなくした飲み会の後、その頃はまだ別のVJがいたんですけど、そのVJがやめたタイミングで、試しにやってみないかという誘いがあって、そこからですね。
松村 勝手にメンバーっぽくなってきた(笑)。
田嶋 誰にも頼まれていないのにね。いまでもたまに「今日は何で来たの?」っていう皮肉を言われます(笑)。
––––アンダーワールドにおけるTOMATOがそうであるように、バンドに専属のヴィジュアル・チームがいることは珍しくないですけれど、バンドの正式なメンバーとしてVJ、デザイナーが存在しているというのはなかなかにレアなんじゃないかと思います。
松村 たしかに。その点については、いまでもどうなのかなって思ってますけれど(笑)。
田嶋 おーい!
松村 まあ、このバンドにVJは絶対に必要だと思っていたし、そうであれば、常に近くでいろいろ見たり、感じてくれたりしている人間がそれをやってくれるにこしたことはないというか。曲作りにも口を出してくるので(笑)。
––––すべての楽曲に映像があるというのは、いまやwhite white sistersの強力な武器になっていますよね。
松村 そうですね。
––––制作の過程においては、映像は楽曲よりも後に作るんですか?
田嶋 ほとんど楽曲先行のパターンです。一回だけ、前回のDVDシングルの2曲目“no where // now here”に関しては、映像先行でやりましたけど。
––––松村さんから映像に関してのディレクションは多いですか?
松村 いや、ほとんどディレクションはしないです。まるっと任せることが多いですね。楽曲を作る段階から、すでに情報共有しているので、ほとんど何も言わないです。
––––田嶋さんはもともと映像制作をされていたのですか?
田嶋 まったくの未経験でした(笑)。もともと美大に通っていて、油絵を専門にやっていたんですけど、ずっとメディア・アートみたいなことに興味があって、ちょうどそんな時期にバンドとの出会いがあって。映像もやってみたいなって思っていた時期でもあったので、やってみるかと。
––––ほぼ独学で学ばれたんですね?
田嶋 最初はそうですね。いまは「HEART BOMB」(映像ディレクター集団、VJ。ミュージックビデオ、TVCM、ビデオインスタレーション、ビッグフェスの映像演出など現在引っ張りだこの人気チーム)のアシスタントをさせてもらっているので、そこでも学ばせてもらっています。
––––影響を受けた映像作家さんは?
田嶋 映像をはじめようと思ったきっかけは、コーネリアスの『センシャス(SENSUOUS)』の時のライヴですね。辻川幸一郎さんの映像表現に本当に衝撃を受けて。実は後からその時のツアーを松村君も観ていたということを知って、ちょっと盛り上がりました(笑)。
松村 僕は2回観に行きましたから。
田嶋 あとタクコムさんも素晴らしいと思います。<CINEMA 4D>というソフトを使ってるんですけど、世界でもトップレベルの使い手だと思います。一度、一緒にコラボしてライヴをやらせていただく機会があり、めちゃくちゃ刺激を受けました。
コーネリアス – 『センシャス(SENSUOUS)』
––––なるほど。ではサウンド面で、現在のような音楽性は現いつ頃から固まってきたんですか?
松村 ちょうど本作のレコーディング中ですかね。
田嶋 そうだね。
––––いやいや、前の作品からあるじゃないですか(笑)。
松村 それがそうでもなくて。過去のデモを聴くと本当にブレているんです。なんかいろんなことをやろうとし過ぎていて。でも最近のデモはまとまりがあり、ブレが少なくなってきたなって感じます。ようやくやりたい音楽の方向性が定まってきたのかなって。
––––意外です。
松村 これまでの作品に関しては、いろいろなデモがある中で、同じようなテイストの曲を選んで出しているので、リスナーのみなさんにはそう感じてもらえるのかもしれないですけど、水面下はなかなかカオスです。