とにかくワンダーという言葉を入れたかったんです

––––クラブやレイヴ・カルチャー的なものからの影響はありますか?

松村 大学生の頃はかなりクラブに足を運んでいました。ミニマル・テクノとかディープ・ハウス的なサウンドにハマっていた時期があって。その後、パッタリ行かなくなってしまったんですけど。でもその頃に聴いていた音楽はいまでも打ち込みをするときに、意識したり、目指そうとしたりしてしまいますね。

––––アーティストで言うと?

松村 シフテッド(Shifted)とかスティミング(Stimming)とかコンフォース(Conforce)とか。スキューバ(Scuba)とかも好きですね。

Scuba Boiler Room Berlin DJ Set

––––ディープな感じのテック・ハウスというか。

松村 ハウスともテクノとも言えない感じのミニマルな音が好きですね。

––––新作『SOMETHING WONDROUS』についても教えてください。まずジャケットなんですが、これはどういうイメージなんでしょうか?

田嶋 最初に不思議な感じにしたいなってイメージがありました。で、いま自分的なブームなんですけど、シュールレアリスムにハマっていて。そうしたイメージを展開していきたいなって。あとMVに使っていた蝶というアイコンがすでにあったので、それをどうミックスしようかなって考えながら、これにたどり着きました。最初は扉が開いていて、そこから変な液体が流れ出ているみたいなイメージもあったんですけれど、途中で違うなって(笑)。

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––––『SOMETHING WONDROUS』というタイトルの由来は?

松村 そうですね、とにかくワンダーという言葉を入れたかったんですよ。素晴らしいとか、不思議なとか、そういう意味合いを持たせたかったんです。で、まあ、そのものズバリになりましたけど。

––––さっき田嶋さんもおっしゃっていましたが、“不思議な感じ”というのがテーマとしてあったという感じなのでしょうか?

松村 それはキーワードのひとつとしてありましたね。

田嶋 夢を見ているのか現実なのかわからないような感覚というか。起きているのか眠っているのかわからないボーッとした状態。無意識の意識というか。

––––どうして今回そういうテーマに行き着いたのでしょうか?

松村 なんででしょうね……。歌詞もなぜかそういうものが多いですね。“Never Ever Land”なんかは、まさにそういう歌詞だし。

––––そうしたテーマはサウンドにも反映しているのですか?

松村 意識はしなかったですね。でも何かしらあるとは思いますけどね。それよりも、むしろ本作ではコードであったりメロディであったり、歌ものであることを意識しました。ファーストやセカンドではリアクターっぽいグリッジ音を随所に散りばめていたんですけれど、今回はそういう音も減らしています。

田嶋 口ずさめる曲を作りたいっていうのがあったよね。

––––本作でより歌ものにシフトしようと考えたのは、どういう意図からだったんですか?

松村 これまでよりも多くの人たちに聴いて欲しいという願いもありましたし、自分たちにとってのチャレンジでもあるなって思って。マニアックなものはマニアックなもので決して簡単ではないですけれど、いまの自分たちにとって必要なハードルは、それではないなって。より多くの人たちに聴いてもらえる音楽を作るという挑戦を自分たちに課したかったんだと思います。

––––なるほど。それぞれ特に気に入ってる曲ってありますか?

田嶋 僕は8曲目の“Ophelia”。いまバンドとしていちばんやりたい方向性の曲なのかなって。

松村 そうかも。

––––オフィーリア(=Ophelia)と言えば、シェイクスピアによる戯曲『ハムレット』の登場人物ですが。

松村 そうですね。でもこの曲に関しては、原作ではなく、(ジョン・エヴァレット・)ミレイの絵画『オフィーリア』からインスピレーションを得ています。実は原作の『ハムレット』はちゃんと読んだことがなくて(笑)。

––––美しいけど、何かゾッとするような怖さも感じる絵ですよね。なるほど、あの絵画からヒントを得ているんですね。松村さんはどうですか?

松村 僕は11曲目の“Lust For Love”かなあ。

––––まさにさっき言っていたR&Bっぽいテイストがあるし、ダブっぽいエフェクトなんかもあって、バンドの新たな展開を感じさせるユニークな曲だと感じました。

松村 ありがとうございます。いちばん最後に作った曲なんです。時間もないので、ちゃちゃっと作ろうと思ったんですけど、なんだか気に入ってしまって、結局時間をかけてしまいました。

––––平沼さんはどうでしょうか?

平沼 4曲目の“Experience Auras”ですかね。前半と後半で展開が変わってくるユニークな曲。エンジニアさんも「これはわけわかんない曲だなあ」って驚いてました(笑)。

田嶋 はははは、けっこうハッキリ言うもんね(笑)。

松村 後半にジュークっぽいリズムを入れたくなって。もちろん本物のジュークではないんですけれど、ジュークっぽい感じで。

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