相談者のエピソードをもとに委員会のメンバーが“やれた/やれたとは言えない”を判定するユニークな設定で話題を呼んでいる吉田貴司による人気マンガを原作にしたTVドラマ「やれたかも委員会」が、この4月より放送開始となる。
AbemaTV版に続いて2度目の実写化となる今回は、メインキャストとなる『やれたかも委員会』のメンバーとして、能島譲役に佐藤二朗、月綾子役に白石麻衣、オアシス役に山田孝之が決定。
原作以上に登場人物の感情や“やれた/やれたとは言えない”を判定する過程を詳細に描くことで、まるで“やれたかも=純愛!?”とも言えそうな世界観が、より楽しめる作品になっている。今回のTVドラマ版/原作の魅力や、演技面での工夫などについて、佐藤二朗さんと山田孝之さんに聞いた。
Interview:佐藤二朗&山田孝之
——『やれたかも委員会』の原作や、今回のTVドラマ版の台本を読んで、お2人はこの作品にどんな魅力を感じましたか?
佐藤二朗(以下、佐藤) “やれたか/やれたとは言えない”かを判定するというのは、一見バカバカしいことですよね。でも、実際は男なら誰しも経験があるような、苦くて純な恋愛の話になっていて。原作を読んでいても、一見バカバカしい設定があるからこそ、その恋愛部分に入り込めたので、他にはない作品だと思いました。原作は一本の尺が短いですが、TVドラマはある程度尺があるので、相談者の回想部分を多く撮っているのも特徴ですね。
山田孝之(以下、山田) 「あるある」をテーマにした作品なので、楽しみやすいですよね。あとは、原作を読んだときもそうだったんですが、「女性目線で見るとどうなんだろう?」ということはすごく気になっていました。この前、友達の女性がやっているラジオ番組に出た際に『やれたかも委員会』の話になったんですよ。その子が言っていたのは、「原作を読んだけど、私からすると全部やれている」ということで。「えーっ?!」と思いました。
佐藤 なるほど。でも、女の子によっては逆に全部「やれたとは言えない」と思う人もいるだろうね。僕もこの間、情報解禁になったときに、20代後半の後輩の女優から「原作のファンなので楽しみにしているんです!」とメールが来て、意外に思ったので「女性も読むんだね?」と聞いたら、どうやら原作を男女混合でみんなで読んで、判定をくだすらしいんですよ。「そういう読み方をしている子もいるんだな!」と驚きました。
山田 変な空気になりそうですね(笑)。でも、確かにそれは楽しいかもしれないです。
佐藤 人によってシーンごとに反応が違ったりすると面白そうだよね。
——今回、役作りの面ではどんなことを意識されましたか?
佐藤 面白い設定の作品なので、最初は「どうやって面白く演じようか」と考えていました。そうしたら、山口雅俊さん(『闇金ウシジマくん』シリーズなどで知られるプロデューサー/監督。『やれたかも委員会』で演出を担当)に、「能島も委員会にやってくる相談者と同じように、すぐにやれてしまう人間ではないので、とにかく相談者に寄り添って演じてほしい」という話をされて。それで、このバカバカしいテーマに真剣に向き合おう、と考えました。「ここはコミカルにできるかな」と思うときも抑えて、誠実に相談者に向き合うことだけを考えて演じましたね。能島が「やれた」という札を常に出してしまうのも、相談者と真剣に向き合い感情移入してるからだと思うので。あとは、原作では顔に陰影をつけるなど漫画ならではの画の面白さがあるので、それを実写でどう表現するのかということも最初は悩みました。が、途中からはそこをそのまま継承するのは難しいと割り切り、しかし原作と同じように心の底から相談者を想う能島を演じようと思いました。
——実際にエピソードのひとつを観させていただくと、佐藤さん演じる能島が身を乗り出したりするような仕草など、セリフ以外のお芝居もとても印象的でした。
佐藤 能島は、(委員会のメンバー)オアシスや月綾子に比べて、恋愛に関して少し不器用な人間で、喋りたくても他の2人のロジックについていくことに一生懸命なんでしょうね。それで、たまに喋ると間違っていたりもする(笑)。でも、それをコミカルにではなく、あくまで真剣にやろうと思っていたんですよ。
——オアシスを演じた山田さんはいかがですか?
山田 今回は相談を受ける側なので、役作りは特にしていないですね。ただ、月綾子がかなり引いた場所にいて、相談者に寄り添っている能島譲がいて、その間でのキャラクターとしての立ち位置は意識しました。結局この作品って、男の願望や、希望の話ですよね。「あのとき“やれた”と思いたい」という話で。だから、男としては「やれた」という方向にどうしても引っ張られてしまうところを、どうやって抑えるか、ということです。あとは、オアシスのビジュアル面について、メガネや帽子はどんなものがいいか沢山話し合って、そこで作っていきました。
——山田さんのビジュアル面での再現度がすごく高いと感じました。
山田 帽子をかぶってメガネをしているということが大きいと思いますけど(笑)、衣装合わせは結構時間をかけました。服も「あまり主張しすぎない方がいいのかな」と考えたりして。ひとつのエピソードだけ少し目立つ衣装を着る回があるんですが、基本的には原色のものを避けて、派手ではない服を選んでいきました。
佐藤 逆に、僕の衣装合わせは本当に短かったですよ。武道着を着るだけなんで(笑)。
山田 そうでしょうね(笑)!
——白石麻衣さん演じる月綾子も含めた委員会メンバー3人のコンビネーションも、このドラマの見どころではないかと思います。
佐藤 その辺りはすごくスムーズでした。僕が演じる能島譲は相談者にすごく寄り添って、白石麻衣さん演じる月綾子は逆にものすごく引いたポジションで、その中間に孝之が演じるオアシスがいる、というそれぞれのキャラクターがはっきりしていたので。撮影前に本読みを2回ほどやって、その際に演出の山口さんがキャラの設定を詳しく伝えてくれたので、撮影に入る頃にはそれぞれのキャラクターがちゃんと出来ていましたね。
山田 今回、こんなに他の出演者の方々と目が合わない現場も珍しいと思いました(笑)。委員会のメンバーはつねに横並びになっているので。
佐藤 確かに(笑)。孝之と一緒になった現場だと、たとえば『勇者ヨシヒコ』シリーズや『50回目のファーストキス』(2018年6月1日公開予定)などもありますけど、基本的には目を合わせて普通に会話をしますから。それに、自分の場合は相談者に寄り添うためにずっと目の前に集中しているので、横を見ることがあまりない。確かに珍しい現場でした。
——委員会のみなさんはシチュエーションコメディのように、基本的には毎回同じ空間にいるわけですよね。
山田 そうですね。それもあって、委員会の部分の撮影自体は4~5日で終わりました。
佐藤 改めて考えてみると、その期間でよく撮れたよね(笑)!
——それは大変だったんじゃないですか?!
山田 大変でした(笑)。でも、相談者の方が沢山喋るわけですし、そのあと回想シーンの撮影でロケに出るということも考えると、相談者の方たちの方が大変だったはずです。今の時点では(取材時)委員会のメンバーは回想シーンの完成版はまだ観られていないので、撮影中に聞いたエピソードが、完成版ではどういう風に映像化されているのか楽しみです。
佐藤 オフラインを観たんですが、相談者の皆さんも、笑っちゃうようなシチュエーションをド真剣に演じていて——。
山田 でも、僕はやっぱり観ていてバカバカしかったですよ(笑)。この作品に出てくる男の人って欲をむき出しにしているわけで、「そういうときの男ってこんなにも情けないんだな」って(笑)。
佐藤 滑稽で切ない。相談者の人は皆、切実に「やりたい」と願ってる。あと、この作品に出てくる女の人は皆、綺麗で色っぽい。そこも確実に見所。ただオフライン観てて息子が近づいて来た時は咄嗟に停止ボタン押したけど(笑)。
——また、この作品では様々な人の“やれたかも”が過去の淡い思い出として描かれていて、まるで初恋の体験を回想しているのと同じような雰囲気にもなる部分が面白かったです。
山田 やっぱり、相談者自身は真剣に恋をしているわけですからね。この作品に出て来る相談者は、「今日やりたい」ということではなくて、みんな相手を好きになっている。
佐藤 そうだよね。あと、人によってはすぐにやれてしまう人もいるわけですけど、僕自身は能島に近くて、すぐにやれるようなタイプではなかったので、そういう人をうらやましく思う気持ちがどこかにあるんです。でも、この作品に触れて思ったのは、「すぐにやれちゃう人には味わえないものがある」ということなんです。もちろん、その瞬間はほろ苦いでしょうけど、そこに侘び寂びのようなものがある。負け惜しみでも何でもなく、そのプロセスに恋愛の面白さが詰まっていることが表現されていて、すごくいい着眼点の作品だと思いました。
山田 今って純愛のラブストーリーをストレートにやっても、そんなに響かない部分もあると思うので、そういう意味では時代に合っている作品なのかもしれないですね。今は触れられる情報がたくさんあって、若い子たちも達観してるじゃないですか。だから、『やれたかも委員会』は、ある意味素直な作品なんだと思います。恋愛をする中で、こういう過程って絶対にくるものだとも思いますし。
佐藤 「純愛なんて」と思いつつも、でもみんな「そういうものを観たい!」と思っている中で、この作品みたいにバカバカしい設定を用意することで、そこにすごく入り込めますよね。そういう人たちも入り込んで観てくれたらいいな、と思います。
——また、“やれた/やれたとは言えない”を起点にしつつも、「自分の過去と向き合う」など、それを越えて大きなテーマに繋がっていく部分にも面白さを感じました。
佐藤 演出の山口さんが、段取りの前に、ホワイトボードに文字だったり記号だったりを書くことがあり、それがなんとも詩的だったり深みのある言葉だったりするんです。この作品は、回によっては人生哲学だったり、単純に笑えたり、グッときたりすると思います。
——TVドラマ版のエピソードの中で、お2人のお気に入りのものはありますか?
佐藤 僕はずっと人生の端っこを歩いてきた長迫まさゆきの話(エピソード4『告白編』)が好きでしたね。自分自身も主旋律から外れたところでワイワイやっている人間なので、単純に感情移入が出来たというか(笑)。と言いつつも、「俺は全然イケてるし、女にも困ってないし」というゲストの回(エピソード5『後日編』)もあって、それはそれで面白かったです。
山田 実はある回(エピソード7『カラオケボックス編』)だけオアシスや月綾子が面倒くさがって、明らかに早く終わらせようとすることがあるんですけど、僕はそれが面白かったですね。その回があることで、「委員会の3人も人間なんだ」って思えるというか(笑)。「人間だし面倒くさいこともあるよな」というのは、普通なかなか描かないことだと思うので、「委員会メンバーでもたまには早く終わらせようとしちゃうんだ?」というのが面白かったです。
佐藤 その回では、オアシスと月綾子が、完全に早く帰りたいモードなんですよ(笑)。
山田 きっと、何かあったんでしょうね(笑)。
佐藤 あれは確かに面白かった(笑)。
——役を離れたとき、お2人自身として、TVドラマ版のストーリーについて“やれた/やれたとは言えない”を判定するとしたらいかがでしょうか?
山田 でもそれは、全部「やれた」ということなんじゃないかと思うんです。そうでないと嘘になってしまうと思いますしね。
——観てくれる方には、作品をどんな風に楽しんでもらえると嬉しいですか?
佐藤 この作品に出てくる相談者は皆、思いを完遂できてない。でもその苦さを大事な思い出として帰っていく。ご自身の苦い思い出と重ね合わせて観て頂くのもいいかもしれません。
山田 あと、これは賭けですけど、男女で観たりすると、楽しんでもらえるかもしれないです。その結果ギクシャクしてしまったりするかもしれないですけど。でも、異性と観てもらうというのは面白い楽しみ方のひとつかもしれないです。
——見終わった後、さらにワイワイと話に花が咲くかもしれません(笑)。
佐藤 たとえば、これから付き合うような男女で一緒に観てもらうといいかもしれないですし、最初に言った後輩の女優の話のように、男女混合で判定をくだすのも面白いかも。
山田 “やれた/やれたとは言えない”の札も簡単に作れますしね。ぜひみなさん、札を自分で作って、異性も交えて大人数で観てもらえると嬉しいです。
INFORMATION
TVドラマ「やれたかも委員会」
MBS 4/22(日)スタート 毎週日曜深夜0:50~
TBS 4/24(火)スタート 毎週火曜深夜1:28~
dTV/NETFLIX 毎週水曜深夜0:00~
出演:佐藤二朗 白石麻衣(乃木坂46) 山田孝之
間宮祥太朗 勧修寺保都 小倉優香 / 浜野謙太 倉持由香 / 森永悠希 武田玲奈 / 永野宗典 江夏詩織 手塚とおる/
杉野遥亮 山本舞香 / 中尾明慶 森川葵 / 矢野聖人 山地まり / MEGUMI 福田麻由子 小関裕太(エピソード順)
原作:吉田貴司『やれたかも委員会』(cakes・双葉社)
演出:山口雅俊
脚本:山崎淳也 橋口俊貴 山口雅俊
主題歌:shiori「君のひとみは10000ボルト」
製作:ドラマ『やれたかも委員会』製作委員会・MBS
ⓒ2018吉田貴司/ドラマ『やれたかも委員会』製作委員会・MBS
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