・粘りつけ式:モウセンゴケ、ムシトリスミレ、ドロソフィルム、ビブリス、ロリドゥラ、イビセラなど。
葉の縁や表面にネバネバした粘液がついた腺毛が生えている。虫の羽や足がくっつくと、消化液が出てきてそのままじわりじわりと溶かされてしまう。最後は吸収されて黒い点のようになるそうだ。恐ろしや。
ドロセラ・システィフロラ(Drosera cistiflora) 南アフリカ産の塊根モウセンゴケ(画像提供:木谷美咲)
捕虫葉を拡大して見ると、腺毛の先に水滴のような粘液が付いている。これが朝露のようにキラキラしてとてもきれい。思わず触りたくなってしまうが、虫も同じような気持ちになるのだろうか。マニアはこのように部分部分を拡大し、“ミクロ”目線で見る人も多いらしい。
水滴のように見える部分が粘液 。食虫植物にはあまり臭いものはないが「ドロソフィルム」はなかなか強烈だそう。(ケモノ臭さ+死骸が腐った臭さ+青臭さ)÷3=近所迷惑になるぐらいの臭さ、だとか。
可愛いらしい花を咲かせるムシトリスミレ。これも食虫植物とは驚きだが、下にある葉の部分で虫を捕まえるそう。綺麗な花で虫をおびき寄せているのだろうか。
木谷さん「一つの植物の中に“天国と地獄”があります。なんというか因果を感じさせますね」
コスモスのような花を咲かせる「ビブリス」。「とてもきれいな植物ですが、線状の葉で虫を捕まえまし。 こんなに繊細なのに食虫植物なんですね~! 素晴らしい!」と興奮気味な木谷さん。この可憐さと残忍さのギャップに萌える。分かる気がする。
ツノゴマ科の「イビセラ・ルテア」。英語では“デビル・プランツ”、日本語では“悪魔の爪”、“旅人泣かせ”とも呼ばれる。木谷さんが実際に実を持ってきてくれたが、先端から2本の鋭く大きな鉤状の角が生えている上に、果実全体にも細かいトゲが沢山生えている。確かにこれを踏んだら泣く。なんて凶悪な形なんだろう。
木谷さん「ある意味食虫植物“らしい”形です。神経に触るというか、感覚を刺激する形ですよね」
また、食虫植物の学名は「ドロセラ・システィフロラ」、「ドロセラ・スコルピオイデス」などまるで呪文のよう。和名がないものも多いらしいが、学名での呼び名もミステリアスで素敵に思える。
・吸い込み式:ミミカキグサ類、タヌキモ類。
水中や土中に伸びた地下茎に低圧状態の小さい袋を持つ。袋の入り口にあるトゲに虫やプランクトンが触れることにより、袋のドアが開きスポイトのように水と一緒に虫を吸い込んでしまう。
まるで立てた耳かきのように見える「ミミカキグサ」や、ウサギそっくりな白い花を咲かせる「ウサギゴケ」。ウサギゴケの花は本当にかわいらしい。
・迷路誘導式:ゲンセリア属。
食虫植物の罠の中でもかなり複雑な仕組みだそう。逆Y字の細かい管状になった葉が、地面の下に迷路のように広がる。そこに迷い込んだ虫を消化室へ誘い入れる。一度入ると出てこられない恐怖の地下迷路だ。
あの手この手で虫を食べる食虫植物だが、逆にバッタなどの虫に食べられてしまうこともあるとか。自然の世界は厳しいのだ。