アイスランドのローカルバンドも見応え抜群!

そうしたメインアクト、ヘッドライナー級の国外バンドに加えて、実に個性豊かな音楽性を持ったローカルバンドの出演も大きな見どころである。こうしたバンドは、サブステージへの出演が多く、こちらは地元のラジオ局などがキュレーターとしてアーティストのセレクションを行っている。

アイスランドのバンドというと、シガー・ロスやムームの世界的な活躍によって、ポストロック、エレクトロニカ的なサウンドが真っ先に脳裏に浮かぶ方も多いと思うが、<ATP Iceland>に出演したローカルバンドは、どれも良い意味で雑多な印象があり、そのパフォーマンスも非常に見応えがある

女性ハードコアパンクのBORNや、プログレッシヴ・ロックから大きく影響を受けているという屈折まくったロックサウンドを鳴らすCaterpillarmanといったバンドは、このイベントを通じて、初めてその名前と音楽を知ったものの、そのユニークなサウンドと堂々としたパフォーマンスには、初見ながらも思わず目を奪われてしまった。

そんなアイスランド勢の中でも特に会場で人気を博していたのが、HAMだ。このHAMは、アイスランドにおけるヘヴィメタルシーンのパイオニア的な存在らしく、過去にはドイツのラムシュタインのようなメジャーなバンドとの共演も果たしているとのこと。

HAM – Full Performance(Live on KEXP)

欧米の人気アーティストのステージを楽しむのと同時に、こうしたアイスランド・ロックシーンの懐の深さを体感できるのも、本イベントの大きなチャームポイントといえるだろう。

アイスランドの豊かな自然の中、ロックを堪能する贅沢さ

その出演者について色々と言及したところで、今度は、現地の環境や会場のディティールにも触れておこう。メインの会場となるアトランティック・スタジオは、フジのレッド・マーキーを横に2つ並べたような規模の縦に長いステージ。アイスランドの国際空港であるケプラヴィーク国際空港からタクシーを使えば15分から20分程で到着する。アクセスの良さは、かなりのものだ。

北欧の自然とインディーロックの真髄を味わえるフェスとは music150817_atp_atlanticstudio

このアトランティック・スタジオは、元々はNATOの軍事施設だったそうだが、現在では、映画の撮影や音楽イベントの会場として活用されている。屋根があるので雨が降っても安心で、更にはWiFiも完備。イベント開催中の3日間は、急に小雨がぱらついてくるやや不安定な空模様だった為、屋内フェスの利便性を噛み締めつつ、非常に快適にライヴを楽しませてもらった。

サブステージのアンドリューズ・シアターは、その名の通り、通常は映画館として使用されている。会場内は、映画館らしく傾斜の付いた椅子席となっているので、ステージの見やすさは抜群。このアンドリューズ・シアターには、主に地元のバンドが出演しており、前述したような個性的なステージが繰り広げられていた。

北欧の自然とインディーロックの真髄を味わえるフェスとは music150817_atp_andrews_theater

メインとサブの2つのステージを中心にイベントは進行するが、この他にも、DJプレイがメインとなるテントハウスのザ・オフィサーズ・クラブや、公民館(図書館?)のようなパブリックスペースでの映画上映もスケジュールに含まれており、内容は非常に充実している。

北欧の自然とインディーロックの真髄を味わえるフェスとは music150817_atp_taimetable

撮影スタジオに映画館、公共施設など、ライヴハウスではない建物をステージとして仕様している為、各ステージは立地的に点在してまっているものの、その間の移動距離は徒歩で5分も掛からないので、非常にアクティヴに動くことが可能だ。

さらには、会場から少し歩けば、海も山も見えてくる。地平線すら見えるのではないかという自然豊かな光景は、アイスランド特有の眺望と言えるだろう。自然とロックが両立しているバランス感覚の心地よさは、<フジロック>ファンにもオススメだ。

北欧の自然とインディーロックの真髄を味わえるフェスとは music150817_atp_sea

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