新たな時代の幕開けか

しかし、それにもようやく変化が訪れつつあることをバンクスの登場は感じさせる。他にも80年代ポップスと90年代R&Bがキュートに混ざり合ったような音楽をやるハイムのデビューもまた示唆的だ。新しい時代への突入を示す非アフリカ(ヒスパニック)系の新たな女性R&Bスターが生まれる日も近い。そんな潮の変わり目に今、あるのかもしれない。そのスターがバンクスなのかどうかはともかくとして。こうして書いてしまうと「バンクスの登場はシーンの流れにおいて必然である」と言えなくもない。だが、そんな文脈を抜きにしてもこの異様にエレガントで魅惑的な音楽を聴き逃がす手は無いと僕は思う。余りの美貌に嘆息したついでにでも、その音楽も聴いてみてくれるだけでも良い。日本で日々増えていく「届くべきなのに届かない」音楽にこのバンクスも仲間入りするのは余りに口惜しい。

“This is What it feels like”

9月にバンクスは大きなブレイクのきっかけとなるかもしれないザ・ウィークエンドとのアメリカ・ツアーに乗り出した。その後にはイギリスへと向かう予定だ。溢れんばかりの可能性を手に彼女がイギリス・ツアーの最後を締めくくる場所は最大2万人の収容を誇るO2アリーナである。また僕らが乗り遅れるという選択肢は残されているのだろうか?

text by Keigo SADAKANE

Release Information

[amazonjs asin=”B00EPP3MGK” locale=”JP” title=”London EP”]