イギリスにおけるR&B/ソウル・エクスプロージョン

イギリスは今まさに「90年代のビッグ・ビート以来」と言われるほどのダンス・ミュージック・エクスプロージョンの真っ只中にある。シーンにはディスクロージャーアルーナ・ジョージジェシー・ウエアと素晴らしい才能が次々と現れている。この動きの特徴は明確なR&Bやソウル・テイストであり、そして際立った女性シンガーの存在である。これは彼らに大きな影響を与えたダブステップがその当初からR&Bをサンプリングしていたこと、そして90年代の米R&B(TLCからデスチャまで)を思い切り吸収してきた世代であることも関係しているだろう。

“Waiting Game”

そして忘れてはいけないのは、ポスト・ダブステップの最初のアイコン=ジェームス・ブレイクもR&Bやソウルのエレクトロニックな解釈というファクターは大きかったことだ。となれば、サウンド的に近しい趣を持つバンクスをイギリスが先に受け入れたのも不思議ではない。事実、彼女の制作周辺の人脈もイギリス・ベースが中心である。ジェームスとの比較において「歌ものからダブステップへ行った」と言われたJamie Woon、UKファンキー人脈の Lil Silva、元はロンドンだが今はウィーンを拠点にするエレクトロ・プロデューサーSOHNらが経緯は定かではないが、これまでに関わっている。彼らのミックスした楽曲を聴くとバンクスがイギリスから出てきたアーティストだと思ってしまう程だし、実際にバンクス本人がイギリスでのエキサイティングな女性アクトに大いに刺激を受け、今のサウンドを志向していったと捉えても全く不思議ではない。