サー・ノーランという名前に聞き覚えのある人はどのくらいいるだろう? 本名ノーラン・ランブローザ。セレーナ・ゴメスのティーン・スターとしてのイメージをセクシーなポップ・アイコンに変えた名曲“グッド・フォー・ユー”や、今では音楽的評価も名声もほしいままにしているジャスティン・ビーバーの楽曲をこれまで3曲手がけたバークリー出身の若きプロデューサー。だが、彼のツイッターのフォロワーは2000人足らず。ワークの内容に到底見合わない知名度だが、彼自身も「僕は束の間の名声が欲しいわけじゃない。ただ、アーティストが輝くための手伝いがしたいんだ」と話しているように、どうやら裏方に徹すると決めているようだ。
Selena Gomez – Good For You(Explicit)ft. A$AP ROCKY
そんな彼が全曲に参加しているブライス・バインのデビュー・アルバム『レイジー・フェアー』が1月22日(金)にリリースされる。こちらは、昨年アメリカでヒットを飛ばした彼のデビュー作『レイジー・フェアーEP』に最新の数曲を加えた日本オリジナル盤。ティーンの頃から俳優として活動していたブライスは、幼い頃に90年代のR&Bに魅了され、13歳からギターを弾き始める。音楽への熱は冷めることなく、大学はバークリーに入学し、ノーランとはそこで意気投合。すぐに2人で音楽活動を開始する。これまでもニック・ジョナスなど、数々のミュージシャンのターニング・ポイントを華麗に演出してきたノーランだが、ブライス・バインのアルバムにおいて重視されているのは、2人に共通する音楽的バックボーン、つまりカリフォルニアの風をたっぷり吸い込んだゴキゲンなポップサウンドを鳴らすという、ただそれだけのように思える。実際、このアルバムは、米テレビ局スターズのドラマ『サバイバーズ・リモース』のテーマ曲に起用された“サワー・パッチ・キッズ”をはじめ、聴いていて懐かしさに思わずニヤッとしてしまうような、シュガー・レイやサード・アイ・ブラインドの影がチラつく西海岸サウンド全開。それも、90年代生まれのノーランによるプロダクションのおかげでまったく古臭く聴こえないばかりか、「今の気分ってこれだったのか!」と意表をつかれた気分に。ブライスは最高の相方を手に入れたのだ。
Bryce Vine – Sour Patch Kids
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