BT “Flaming June” 〈Perfecto〉
夜明けの湖、刻々とその色を変える空は湖面をも極彩色のスクリーンにしてゆく。その中央には『2001年宇宙の旅』のモノリスのようにそびえるプロフェット・ファイブ。これはBTのセカンド・アルバム『ESCM』のジャケットだ。タイトルはエレクトリック・スカイ・チャーチ・ミュージック。このタイトルがまさに時代の空気を表現している。パーティーはこれから自分たちが作り出す新しい時代の祝祭であり、無垢な気持ちで未来を信じることのできた希望の証だった。1996年にレーベルのプロモーションで来日したOakenfoldにもらったFlaming Juneのシングルを僕はそれから数年間プレイし続けた。いくつかの奇跡的な夜明けの瞬間は一生忘れることはないだろう。BTの初来日のステージでこのイントロが鳴り響いた瞬間のフロアもまた忘れることができない。
BT “Godspeed” 〈Renaissance〉
『ESCM』の世界的な成功のあと1999年、彼は〈Perfecto〉を離れRenaissanceよりこれまでのスタイルを刷新するようなシングルをリリースした。この時期からシーンは新しいスタイルを求め、いくつかの流れに分岐してゆく。Sasha & Digweedがリードしたプログレッシヴ・ハウスはニューヨークのクラブTwilloでDanny Tenagliaを巻き込みながら大きな流れとなり、トランス・シーンではFerry CorstenやArmin、Tiestoがいよい大きななステップを踏み出そうとしていた。またロンドンとアメリカのウエスト・コーストではタイミングを同じくしてブレイク・ビーツが新しい波となりはじめていた。このシングルのリミックスをしたHybridやロスを拠点にしているCrystal Methodなどが頭角を表してきた。ここでもBTのセンスの良さは充分に発揮されていて、この直後にリリースされたTsunami OneとのコラボレーションであるHIp Hop Phenomenonへとつながってゆく。しかしそれは2000以降のシーンが様々に枝分かれしてゆく前兆でもあった。