NYで誕生したバッグブランド「Manhattan Portage」が、「都市」をキーワードとする音楽プロジェクト<City Connection>を始動する。そのキックオフイベントが10月22日(火・祝)に代官山UNITの3フロアを解放して開催。

City Connection powered by Manhattan Portage

Manhattan Portageとは?

1983年、NYCのワーキングクラスのヒーローであるメッセンジャーのためのバッグで、一躍その名を知らしめたManhattan Portage。“New York Tough”をテーマに、シグネーチャーであるメッセンジャーバッグを始め、バッグパックやレコードバッグの名品を世に送り出してきた背景には、バイク(自転車)やスケートボード、DJカルチャーの盛り上がりがあり、今や世界中の都市生活者に愛用されているのは周知の通りだ。

「都市」をテーマに集まった出演アーティスト

2020年を目前に控えた今の「都市」をニュートラルに生きる多様なジャンルのDJ、バンド、ヒップホップアクトが出演する<City Connection>。tofubeatsやLicaxxxらDJを始め、D.A.N.のDJセット、PAELLASやWONKのHIKARU ARATA名義のDJや、ヒップホップ勢からはFNCY(ZEN-LA-ROCK/G.RINA/鎮座DOPENESS)ら、総勢16組がラインナップ。肩肘張らず、最先端。そんなオリジナルなプレイリストを作るリスナーのリクエストがそのまま具体化したようなラインナップを中心にDJ、バンド、HIP HOPに分けて紹介していこう。

City Connection 2019 公式プレイリスト

DJ

tofubeats -Live set-

tofubeats 「Keep on Lovin’ You」-徒然草 第150段の再解釈-

都市的な音楽を作るのに、必ずしも拠点が東京である必要がないことを端的に示したアーティストといえば彼だろう。今も神戸市在住の彼は現在の世界的な日本のシティポップ・ブームを予感するかのように、キャリア初期から80〜90年代のJ-POPと自身のビートやサウンドをミックスしてきた。サンプリングとインターネット。1人、DTMで作り上げる彼の音楽には自ずと都市生活者のリアルがにじむ。特に自身で歌い始めた『RUN』以降のtofubeatsの作品には、洒脱と聴きやすさのバランスとともに、特定の個人にしか表現できない独白めいたニュアンスが宿っている。パッと聴き無機的な彼の楽曲で踊る時の切なさこそ、都市的と言えるかもしれない。

D.A.N. -DJ set-

D.A.N. – Elephant

生音とエレクトロを融合し、海外インディーと呼応しつつ、最近ではよりプリミティブなビートも導入。ジャパニーズ・ミニマル・メロウという形容も超えつつある今のD.A.N.。だが、やはり登場当時の“Zidane”など、ダークで硬質なサイケデリアとループするビートのクオリティの高さに、バンドが作る都市的なダンスミュージックがついに登場した歓喜にあふれたヘッズもバンド好きも多かったはず。どこかアンニュイでアンサンブルでストイック。今回はDJセットだが、<FUJI ROCK FESTIVAL>などのフェスやイベントで、DJとしても高評価を得ているだけに、彼らの美学は今回も感じられるはず。

Licaxxx

SCR GUEST MIX – Licaxxx(19.04.18)

DJ、ビートメーカー、ラジオ・パーソナリティ、編集者など、多岐にわたり活躍する彼女の一般的な知名度と企画すると、実際にクラブでDJプレイに触れたことがある人はどのくらいいるのだろう。だが、Licaxxxのスタンスは対象への音楽のプレゼンテーションと言えそうな知的な提案があるように思う。マシーンテクノ・ハウスを軸にしたプレイからキャリアをスタートさせ、最近ではアナログレコードも回す彼女。今回も場やオーディエンスのテンションを感知しながら空間を作ってくれそうだが、Licaxxxの都市感覚は世界のアンダーグラウンドDJとの交流から生まれるユニバーサルな部分ではないだろうか。

MURO

PUSHIM – SEXY WOMAN Produced by MURO

日本が世界に誇るKing of Diggin’、MURO。アンダーグラウンドからメジャーシーンまで、幅広くプロデュースワークやDJとして活躍する、その手腕は世界のどの都市でも通用するという意味で、彼のワークスは都市的だ。10年代後半は〈TOKYO RECORDS〉から『和音 Mixed Up』と題した、MURO視点で黒っぽさのある和モノ・ミックスをコンパイル。アン・ルイスや桑江知子、いしだあゆみなど、昭和の都市感がミックスで見事に現代に通用することを証明して見せた。日本のヒップホップ黎明期を作った彼が2020年を前にこのイベントで何を回すのか。興味は尽きない。

okadada

ベタな曲をかっこよく、コアな曲を面白くーーほぼオールジャンルで踊らせるokadada。ファンキーなブレイクビーツやソウル、ヒップホップ、その中でもミドルスクール、オールドスクール、ディスコ、ハウスなどの影響を受け、自分がいい曲だと思えばかけるというスタイルを貫く。Red Bullへの楽曲提供、ユースカルチャー誌への執筆、SPACE SHOWER TVの番組のカラオケなど、一見、節操なく見える活動の振り幅はオーディエンスを選ばない理由かもしれない。そういう意味でokadadaのチョイスは雑然とした都市そのもの。

YonYon

YonYon, SIRUP – Mirror(選択)

ソウル生まれ東京育ちの彼女。DJやとトラックメーカー、シンガーとして活動する一方、裏方として韓国のアンダーグラウンドのアーティストを日本に招聘するプロモーターとしても活躍している。DJスタイルはフューチャービーツ、ヒップホップ、テクノ、ハウスなどが軸だが、リミックス作品はボーダレス感覚。2017年には日韓の注目すべきプロデューサーとシンガーが楽曲を共同制作するプロジェクト「The Link」を立ち上げるなど、彼女の行動の側には常にアジア発の都市的な音楽があると言えるだろう。作りたいもの、紹介したい音楽があるのなら、自分が動く。そのメンタリティもプレイに反映されている。

Hikaru Arata(WONK)-DJ set-

Hikaru Arata – Apartment

全世界的な新世代ジャズやネオソウルのムーブメントに呼応するように活動してきたWONK。今やJ-POPにも影響を与えるキーマンが集合している感があるが、そのWONKのドラマーでありリーダーの荒田 洸は2018年に初のソロ作『Persona.』でボーカルにもチャレンジ。ダニエル・シーザー(Daniel Caesar)やフランク・オーシャン(Frank Ocean)にも通じる歌唱や、アンビエントなR&Bでバンドとはまた違う個性を覗かせる。ミュージシャンシップに支えられたWONKのコネクションも都市的だが、荒田のソロはそのパーソナルな表現に都市的な魅力がある。そんな彼はDJセットで出演、どのような物語を紡いでいくのだろうか。

他にもTechnicsの名機、SL-1200シリーズだけを用いた世界初のターンテーブルオーケストラの一員としてCMに出演。ニューヨークディスコサウンドのトップレーベル〈Salsoul Records〉の音源を使用したオフィシャルミックスをリリースしているDJ SARASA、ダンス/エレクトロニックを軸にした独自のプレイスタイルを持つDisk Nagataki、ストリートを騒がせるクリエイティブ集団「CreativeDrugStore」に所属し、自身のアルバムジャケットに人肉MPCを使用し、大いに引かれたdoooo、モデルとして活動しパリコレにも出演、DJ以外にイーストロンドンを拠点とするNTS Radioでレギュラーも持つYuka Mizuhara、2014年にLAを拠点とする〈Soulection〉に日本人で唯一のアーティストとして活動するYUKIBEBら、日本に出自を持ちながらも、個々のインスピレーションは世界のあらゆる都市に偏在する個性が集合する。

BANDS

PAELLAS

PAELLAS – in your eyes

残念ながら12月のワンマンライブを最後に解散することがアナウンスされたPAELLAS。テン年代の関西発祥インディーの高いセンスを具現化したバンドの1つだが、最近の作品ではオルタナティブR&Bや、山下達郎など日本の80年代シティポップを現代の手さばきで構築した存在はいなかったのではないか。派手に盛り上がる東京というより、個人として生きる一人一人の日常の音楽として、彼らのメロウかつ儚い音楽性は際立つ。

Underslowjams

underslowjams – 酩酊

今回出演するバンド、DJ、ヒップホップ勢の中でも00年代半ばから活動してきたunderslowjamsは東京のヒップホップバンド、そして広くシーンの変遷を見てきたバンドと言えるだろう。ア・トライヴ・コールド・クエスト(A Tribe Called Quest)の影響を受けた彼らは、その後、様々な試行錯誤を経て、パラレルにルーツに戻ってきたような印象がある。近年はアーシーなR&B、90年代のアシッドジャズなどを想起させるサウンドプロダクションで、当時を知らない若いリスナーには新鮮に聴こえるはず。いわゆるプラスチックソウル的なものの対極ともいうべき、都市生活者だからこそ必要な有機的なサウンドが彼らの個性だ。

HIP HOP

FNCY(ZEN-LA-ROCK/G.RINA/鎮座DOPENESS)

FNCY – AOI夜

昨年、かねて親交のあったZEN-LA-ROCK、G.RINA、鎮座DOOPENESSが結成したこのユニット。服を着替えまくるMV、ニュージャックスウィングやオールドスクール・ラップ、ブラコンなどへのオマージュが散りばめられた楽曲は、この3人ならではのバランスを保つ。今よりバブリーで元気だった東京の都市感を醸し出しつつ、当然、トラップ以降のヒップホップを消化しているあたりがキャリアの長い彼らだからこそ出せるムードなのでは。

in-d(THE OTOGIBANASHI‘S/CreativeDrugStore)

In-d – On My Way

THE OTOGIBANASHI’S、CreativeDrugStoreのメンバーでありラッパーのin-dが今年5月にEP『indoor』をリリースし、ソロも本格化。VaVaがプロデュースし、MVも制作された“On My Way”に端的に表れているように、端正なビートと温もりのあるエレピ、ミニマル・メロウな感触はニュートラルな都市感覚。東京タワーが見えるあたりの夜の街を気持ちがいいから2駅分歩くとか、その気持ちをアルコールで濁らせたくないとか、でも誰かに電話はしてしまうとか……、素直なリリックに共感するリスナーも多いのでは。冷たくもなく、ベタベタするわけでもない都市との付き合い方がin-dの音楽にはそのまま表出している。

各々の都市感覚を持ったアーティストがジャンルを超えて集うこのイベントを象徴するフライヤーのビジュアルは渋谷の工事中のシャッターに描かれたストリート性のあるイラストも話題になった金安亮。また、スケボーの疾走感と柔らかな空気感が心地よいティザーを手がけたのは新鋭の映像作家UMMMI.。イギリス在住の彼女は映画『ガーデンアパート』で見せた女の子の愛と狂気とはまた違う側面を今回のティザーでは表現している。

35年というManhattan Portageが歩んできた時間や時代背景ともリンクする幅広いラインナップ。狭いジャンルや世代に絡め取られることなく、オーディエンス一人一人にとっての「都市感」に気づかせてくれそうだ。

Text by 石角 友香

EVENT INFORMATION

City Connection

Manhattan Portage主催の音楽プロジェクト<City Connection>のラインナップを徹底解剖 music191010-city-connection-1

2019.10.22(火・祝)
14:00〜21:00
代官山UNIT/SALOON/B1FLAT
ADV ¥3,800/DOOR ¥4,300(1ドリンク別)

LINEUP
D.A.N. -DJ set-
Disk Nagataki(tokyovitamin)
DJ SARASA
doooo(CreativeDrugStore)
FNCY(ZEN-LA-ROCK/G.RINA/鎮座DOPENESS)
Hikaru Arata -DJ set-(WONK)
in-d(THE OTOGIBANASHI’S/CreativeDrugStore)
Licaxxx
MURO
okadada
PAELLAS
tofubeats -Live set-
underslowjams
YonYon
Yuka Mizuhara
YUKIBEB(Soulection)

TICKET
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