James Blake/ジェイムス・ブレイク
フィジカルとマシーンが見事に融合した、
文句なしの完璧パフォーマンス!!
ロングコートを纏った貴公子、ジェイムス・ブレイクがステージに現れると、この夜、最も大きな歓声が湧き上がる。それまで会場の脇の方で静観していたオーディエンスたちもムクムクと動き始める。「コンバンワ!」と日本語で挨拶をひとこと言った後、1曲目“I Never Learnt to Share”の美し過ぎるアカペラが会場に響き渡ると、サポート・メンバーのドラムのベン・アシター、ベース/ギター/キーボードのロブ・マクアンドリュースもステージに。ヴォイスをルーパーで重ね、後半に向かって大きな盛り上がりを作るこの曲で、早くもオーディエンスは最高潮の盛り上がりに。
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続く“Life Round Here”、“To the Last”、“Air & Lack Thereof”、そして“CMYK”という流れはもはや鉄板という感じの完成度。中盤は“I Am Sold”、“Our Love Comes Back”、“Limit to Your Love”、“Klavierwerke”という流れ、後半は“Voyeur”、“Retrograde”、“The Wilhelm Scream”と続き、ラストはベン・アシターとロブ・マクアンドリュースがステージを去り、たったひとりで“Measurements”を演奏してフィナーレ。フィジカルとマシーンが見事に融合した素晴らしいパフォーマンス。まさにワールド・ツアーの最終公演に相応しい、照明、演奏、演出に至るまで、すべてが無駄のない、洗練された完璧なアクトだった。
2manydjs/トゥー・メニー・ディージェイズ
マッシュアップは死なず!
圧巻の破壊力を見せつけた帝王のオーディオ・ヴィジュアル・ライヴ!
さあ、ここからはお待ちかねのパーティ・タイムだ。ジェイムス・ブレイクの余韻をかき消すように、巨大スクリーンにはなんともおバカでエロい映像が映し出される(レコードのスクラップから絞りでた液体(レコード濃液?)が裸の女性の身体の中を経由して、黄金水として放出されるという……もはや、なんとも)! 今回のセットは彼らのDJにぴったりと映像がシンクされているお馴染みのオーディオ・ヴィジュアル・ライヴで、マッシュアップしたレコード・ジャケットをモチーフにしたユニークな映像がサウンドと効果的に混じり合い、笑えて踊れる最高に楽しいパーティ・タイムを演出。
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ざっと使用されたネタを挙げると、MGMT、ダフト・パンク、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、ジャクソン・アンド・ヒズ・コンピューターバンド、アフロジャック、ジャンゴ・ジャンゴ、ボーイズ・ノイズ……。人気者たちがさらながらジェットコースターのようなスピード感で次々とマッシュアップの餌食になっていく様はとーてもスリリング。さらに最後はイエロー・マジック・オーケストラのクラシック“ライディーン”とともに大量の紙吹雪が噴射され、ド派手にフィナーレ! もうこれで脳ミソは完全にお花畑状態だ。
!!!(chk chk chk)/チック・チック・チック
気絶するくらいバカになって踊れ!
最強のダンス・バンドが最強を証明した!!
今回のクライマックスかってくらい盛り上がったトゥー・メニー・ディージェイズの“ライディーン”の直後、(かなりハードルの高い状態で)バトンを受け取ったのは最新作『THR!!!ER』も好調な最強のダンス・バンド=!!!(チック・チック・チック)。ディスコ・パンクとはコイツらのことである。やけに丈の短いお馴染みの半ズボン(どうやら水着らしい)を纏ったフロントマンのニック・オファーが、ファンキーなグルーヴに合わせて、キレのいいダンスを披露すると、会場の盛り上がりはさらなる高みへ。
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彼らのライヴは初来日当時から観ているのだが、いやー、相変わらずかっこいい。年齢を重ねるごとにどんどん味わい深く、そしてファンキーになっていく。フロアを爆発させたアンセム“Must Be The Moon”の強度は増すばかりだし、“Californiyeah”、“One Girl/One Boy”、“Yadnus”といった近年の楽曲の破壊力も申し分ない。途中、日本人の女性ヴォーカリストをフィーチャーしたり、メンバー数人でダンスを合わせるという細やかな芸もいいスパイスになっていた。7月の来日公演では盛り上がりすぎて気を失った筆者だが、今回はレポーターということもあり、そこそこの余力を残して、次なるモードセレクターに挑んだ。気絶するくらいアホになって踊っている友人たちが羨ましい……。
Modeselektor[DJ SET+909]with Pfadfinderei/モードセレクター
まるで重戦車!
ウルトラ・ハイブリッドなベース・ミュージックに幕張が震撼!!
もうとっくに4時をまわっているというのに、幕張のフロアはまったく疲労を感じさせない。いや、むしろまだまだ駆け上がっている途中段階のようですらある。ステージでは怪物、モードセレクターがズガンズガンと強靭なビートをフロアに叩きつけている。セバスチャンはマイクを握ってオーディエンスをアジテートし、ゲアノットはTR-909(ローランドが80年代前半に発売した伝説的なドラムマシン)を駆使しながら、散弾銃をぶちかますかのようにアグレッシヴにビートを放つ。背後の巨大スクリーンには彼らのトレードマークとして知られるチンパンジーのイラストが様々なアレンジで投影され、強力な幻覚剤のように視覚をチカチカと刺激する。
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テクノ、ハウス、ヒップホップ、IDM、エレクトロ、ダブステップ……さまざまな音楽を貪欲にハイブリッドした超攻撃型のサウンドだが、走り続けるだけではなく、途中、フロアにいる全員を座らせ一気に立たせるというパフォーマンスがあったりと、しっかりと流れや起伏を作り、オーディエンスのハートを掴んでくるのも心憎い。トゥー・メニー・ディージェイズからモードセレクターとう流れだったらもっとよかったのになー(チック・チック・チック、セオ・パリッシュという流れもそそられる)という個人的な好みはあったにせよ、重戦車のようなアグレッシヴなパフォーマンスは圧巻であった。
Theo Parrish/セオ・パリッシュ
最後がセオ・パリッシュで良かった。
エレグラを締めくくった素晴らしくハートフルなグルーヴ!!
今回の<エレグラ>において、セオ・パリッシュの存在、そしてそのDJプレイはやはりどこか異質なものに感じられた。いや、でもだからこそ素晴らしかったのだ。セオ・パリッシュは大掛かりな映像装置を使ったり、斬新なビートや最先端というようなサウンドを得意とするタイプのアーティストではない。彼が使うのは、ターンテーブルとミキサー、そしてレコードのみ。そのとことんシンプルでアナログな武器を使って、ヒップホップからはじまり、アップリフティングなディスコやソウル、ジャズやファンク等を挟みながら、ディープ・ハウスへとレコードを繋ぎ合わせていく。
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観客ひとりひとりとコミュニケーションをするかのように、彼はフロアに視線を投げかけ、何やらアクションをしていた。また今回はとてもハートフルな選曲だなという印象を持った。僕はセオ・パリッシュが古いと言いたいのではない。むしろ彼が作るトラックはしばしば斬新であり、革新的ですらある。だが、彼のDJから感じ取れる音楽を通じてのコミュニケーションのあり方のようなものは、とても人間的であり、体温を感じさせるものだ。彼のプレイスタイルであったり、ターンテーブルに乗せる1曲、1曲から、そのようなものをすごく感じる。
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あの日、何か思いつめた気持ちであの場にいた人がいたら、セオのDJを聴いて少し温かな気持ちになれた人もいたかもしれない。何かそんなようなことを思わせるDJだった。ハウスやディスコ好きにはお馴染みのクラシックで“Last Night A DJ Saved My Life”という曲があるが、あの晩のセオ・パリッシュのDJを聴きながら、その曲のことを思い出した。セオ・パリッシュを最後の最後にもってくるあたり、やはり<エレグラ>は素晴らしい。今年も最高の体験をありがとう!
text by Naohiro Kato