戦慄かなのが2回目のワンマンライブ<karma with you>を6月28日(水)にZepp Shinjukuで開催。終演後には「特報」として9月8日(金)に今年もEX THEATER ROPPONGIにて、戦慄かなの生誕祭2023<戦慄かなの超たまんないでしょ?♡>、さらに今年の冬には、戦慄かなのソロ活動として初の全国ツアーを開催することをアナウンス。ライブの前日にはワンマンライブと同タイトルの新曲“karma with you”、ライブの翌日には5月に開催された<悪魔night~RE:birth~>(かてぃ(Haze)との2人組ユニット・悪魔のキッスによるライブイベント)で初披露された楽曲“wake me up”のMVを立て続けに公開するなど、飛ぶ鳥も落とす勢いで活動を続けている。本記事では、そんな彼女のワンマンライブ<karma with you>の様子を、文筆家のつやちゃんが振り返る。ライブの撮影は稲垣謙一が担当した。(Qetic編集部)
LIVE REPORT:
戦慄かなの ソロワンマンライブ
<karma with you>
2023.06.28(水)@Zepp Shinjuku
まさに『LARME』から出てきたような可愛いあわあわピンクに、ロリータコーデ、ドールファッション、水色系に天使界隈、地雷系、ゴスなストリートギャルまで――新宿歌舞伎町タワー内のZepp Shinjukuから、今をときめくさまざまなルックの若者たちが出てくる。終演時に飛んできた蝶々モチーフのファビュラスな銀テを手に持ち、みんな涙で少し化粧が落ちて、けれどもとびきりの笑顔で。外はぽつぽつと、小雨が降りはじめた。
SNSを見ると、かてぃは「かなの素敵だった」とポストし、頓知気さきなは「過去1の戦慄かなの見たわ、自慢のお姉ちゃんだ」とツイートしていた。ダンサーである戦慄ビッチーズの面々も、次々に熱いコメントをアップ。それもそのはず、久々の戦慄かなのワンマンライブは、愛と誇りに満ちた心あたたまるステージだった。お客さんが泣いていたのは、戦慄かなのから、それら愛と誇りの一つひとつが丁寧に丁寧に伝えられたため。この日、最後に彼女は長尺のMCであふれ出る想いを伝えた。
オープニングから、計算し尽くされたショウだった。彼女のシルエットが浮き彫りになるドラマティックな演出で観客の期待を高めたのちに、“broken”から“Iceblink”へなだれ込み、幕が落ち本人が登場。ダメージ処理の効いたサバイバー×パンクなカーキ色の衣装、黒のアームウォーマー&穴あきアシンメトリータイツというカッコいいコーデに会場が沸く。続く、アレンジが加えられた“drop”もハイテンションで、戦慄ビッチーズの面々もあわせたtwerkダンスでヒップを強調。このあたりの息はぴったりで、ダンサーも含めたチームワークが強化されてきていることを証明した。さらに、新曲“Ride my wave”で登場したメンズダンサー2名とのコンビネーションも抜群。ライブ前半は、クールな衣装に加え低域が前面に出た脳に響くサウンドも相まって、戦慄かなののソロワークスに宿るヒップホップ~クラブミュージック色を強く感じることができた。
中盤は、一転してピンク色のコルセット衣装にチェンジ。カッコいいから可愛いをこれだけ極端に行き来することができるのはさすがだ。その後はゲストで登場したサクライケンタとともに、アコースティック版でのOriginal Love“接吻”、悪魔とキッス“Unhappy Birthday”(音源化希望!)のカバーも披露。しっとりと歌いあげるシーンと、レーザーや煙を使ってのシアトリカルな演出で魅せるシーンの対比が激しく、振れ幅の広さを見せる。そして終盤は、ストリート&カジュアルな衣装で激しくダンスし歌うというエキサイティングな展開に。“soda”では突然フロアに降り、マイクを持って客席の中を歩き回った。普通なら揉みくちゃにされてもおかしくないが、ファンは皆ファビュラスな戦慄かなのをカメラにおさめようと、必死に撮影していたのが印象的だった。
先日、彼女はとあるインタビューで次のように語っていた。
アイドルっていう枠組みの中で活動している理由のひとつに、アイドルオタクのリテラシーを上げたいという気持ちがあって。中には楽曲派オタクみたいな人もいるんですけど、だいたいは疑似恋愛の対象としてアイドルを見ている人が多いと思うんですよ。そんな状況の中、私がアイドルを名乗っていろんなクリエイトを生み落とすことで、アイドルという存在の見られ方やファン層自体が変わっていけばいいなって思うんですよね。それがリテラシーの底上げっていうことなんですけど。
戦慄かなのの卓越した点は、上記の発言にも表れている。常に表現者である自身と観客の関係性に思いを巡らせるのはもちろんのこと、もう一歩高い視点で“アイドルやアーティストとしての在り方”といった部分まで、自分なりの解釈を加えながらアウトプットを果たしていく。だからこそ、繰り出される作品はどれもふんだんにエッジが効いている。この日披露されMVがスクリーンに投影された新曲“wake me up”も、ハイパーポップを通過したサウンドや映像の質感が怪奇で、戦慄かなのという存在を自らが切り刻み編集していくようなアプローチに凄みを感じた。通常、アイドルのライブには「可愛い」しか存在しない。だが、彼女のステージには「カッコいい」も「美しい」も「グロテスク」も「怖い」も、美醜や清濁をあわせ持った全てが表現される。
そして、それらを彼女は全てセルフプロデュースで創り出すのだ。この日、中盤に新曲 “Karma With You”のMVメイキング映像が投影され、今回のビデオについて彼女が監督~ディレクションを務めたうえでカット割りや香盤表(撮影当日のスケジュール)まで作成していることが語られた。美術や小物も自宅から持参した私物が多いとのことで、ここまで自己プロデュースを徹底するアイドルもなかなかいないだろう。カーテンコールではダンサーだけでなく裏方の制作スタッフ全員のメンバー紹介も行われ、愛のこもったやり取りに彼女の人柄が垣間見えた。
最後、新曲“Pinky Gang”をパフォーマンスし、爽やかな四つ打ちビートを聴かせて90分間のステージを終えた彼女。今年は生誕祭に加え、全国ツアーも予定しているそうだ。この日、10分間に渡って胸の内を打ち明けたMCを一部紹介して結びとしよう。まっすぐに届けられた、愛と誇りのメッセージ(※以下、意訳のうえ一部抜粋)。
私は最近、ファンの人に好きになってもらうことが申し訳ないなと思うんです。皆にあまりあげられてないのに、私ばっかりもらっちゃって。
自分が誰だか分からなくなるような時があるんです。鏡を見ていたら、吸い込まれそうになる瞬間ってないですか?私は少年院にいる時から将来アイドルとしてこういうことをやるんだろうなって分かっていたし、そのためにずっと一日たりとも努力を怠ったことはないんですけど、自分でも不思議なくらい両親とぬるりと関係が良くなっていたりとか、外づらが良くなっていたりとか……最近、過去の自分が取り残されてきている感じがする。私が私を演じている感覚で、それはそれで良いことなのかもしれないけど。
私、元々は男に生まれたかったんですよ。でも、男の人を羨ましがったり女であることを憎んだりするのはみじめじゃないですか。だから、私は、女の子が女の子であることを誇れるような人でありたい。「かなのちゃんにどうやったらなれるんですか」ってよく訊かれるんですけど、別に皆も普通になれるし、それぞれの良さを持っているじゃんって思う。
詳細は言えないんですけど、実は今決めたことがあって、それを手伝ってくれる人もいるんです。幸せだなって思う。私、まだ辞めないですよ。私がいなくなっても大丈夫なように準備しないといけない。えっ、皆なんで泣いてるの? 暗い顔、やめていただけます? 今日はパーティなんだよ。
皆が幸せになれるようにって、毎日祈ってます。その気持ちを込めて、今日のワンマンはパーティみたいにしたんだから。
セットリスト
1. broken(short)
2. ice blink
3. drop(リミックス)
4. wake me up
5. ダンスブレイク
6. Ride my wave(新曲)
7. baby ufo(short)
8. karma with you(新曲)
9. 接吻(Cover)
10. unhappy birthday(Cover)
11. fire paan
12. moist(short)
13. soda(short)
14. unstable(short)
15. distance(short)
16. Pinky gang(新曲)
取材・文/つやちゃん
撮影/稲垣謙一
戦慄かなの “karma with you” M/V
戦慄かなの “wake me up” M/V
▼関連記事
孤独が私を成長させた──戦慄かなの、インタビュー
INFORMATION
戦慄かなの(せんりつ かなの、1998年9月8日生まれ)
フジテレビ「アウト×デラックス」2022年3月までレギュラー出演。
セルフプロデュースアイドルユニット「femme fatale」で実妹・頓知気さきなと活動中。
2021年6月1stシングル「Fire Paan」をリリースしソロ活動を始動。
現在全国のクラブ出演なども行い、2023年1月には1stフルアルバム「Solitary」をリリース。
同年1月14日にはZepp DiverCity(TOKYO)にて自身最大規模となるワンマンライブを開催。6月28日にはZepp Shinjuku(TOKYO)にて2度目のワンマンライブを開催した。
また今年4月1日から朋友・かてぃとともに新ユニット「悪魔のキッス」を本格始動し、楽曲をリリース。5月1日にはZepp Haneda(Tokyo)にて主催イベント「悪魔night〜RE:birth〜」を開催し大盛況となった。7月25日からは大阪を皮切りに全国ツアーを開催する。
戦慄かなの生誕祭2023「戦慄かなの超たまんないでしょ?♡」
2023.09.08(金)
OPEN 18:00/START 19:00
会場:EX THEATER ROPPONGI
〒106-0031 東京都港区西麻布1-2-9
https://www.ex-theater.com/sphone/
チケット:前売6,500円(D別)
チケットは6/30(日)18:00 〜femme fatale公式ファンクラブ「隠し子倶楽部」にて先行抽選受付開始
制作:ATFIELD inc.
お問い合わせ:株式会社 エイティーフィールド 03-5712-5227(平日12:00~19:00)
●戦慄かなのチェキ撮影会
日程:9/9(土)時間未定
会場:都内某所
※詳細は後日発表
●戦慄かなのワンマンライブ全国ツアー2023
2023年11月中旬〜12月にて開催予定
※詳細は後日発表
※詳しくはfemme fatale公式HP、Twitterなどにて
●Twitter
・戦慄かなの[@FABkanano]:https://twitter.com/FABkanano?s=20
・femme fatale[@femme_iDOL]:https://twitter.com/femme_iDOL
・悪魔のキッス:[@Devilschu]:https://twitter.com/Devilschu
●Instagram
戦慄かなの(fabkanano):https://www.instagram.com/fabkanano/
悪魔のキッス(devilschu):https://www.instagram.com/devilschu/
●Tik Tok
femme fatale:https://www.tiktok.com/@femme_idol?lang=ja
悪魔のキッス:https://www.tiktok.com/@devilschu