◼︎キャッチーなメロディーとソウルフルな歌声を武器にブレイク
当時はまだポップ・パンク/エモ(コア)の新人バンドに過ぎなかった彼らがデビュー・アルバムのヒットをステップに05年、『フロム・アンダー・ザ・コーク・ツリー』でメジャー・デビューを飾り、いきなりブレイクしたのは、やはりそれ以前のメロコア・バンドとは一味違うテイストを持ったキャッチーな楽曲と、それを歌い上げるパトリックの歌声の魅力がパンク・ファンに止まらないリスナーから歓迎されたことが大きい。
Fall Out Boy -“Sugar, We’re Goin Down”
Fall Out Boy -“Dance, Dance”
そんな魅力は全米9位を記録した『フロム・アンダー・ザ・コーク・ツリー』を経て、07年にリリースした『インフィニティ・オン・ハイ –星月夜』で見事、開花。FOBの人気がブレイクするきっかけになった『フロム・アンダー・ザ・コーク・ツリー』からのシングル“シュガー、ウィアー・ゴーイン・ダウン”と“ダンス、ダンス”で隠し味程度に使っていたR&Bの影響を大胆に反映させ、新たなFOB節を印象づけたのである。
全米2位まで上ったシングル“アームズ・レース~フォール・アウト・ボーイの頂上作戦”をはじめ、パトリックもソウルフルという表現がふさわしい歌声を披露。稀代のヴォーカリストとして、その存在をこれでもかとアピールしているが、FOBがここで確立したサウンドがいかに新しかったかは、その後、R&Bの影響を取り入れたポップ・パンク/エモ・バンドが数多くシーンに現れてきたことが物語っている。
Fall Out Boy -“This Ain’t A Scene, It’s An Arms Race”
その他、レナード・コーエンの名曲“ハレルヤ”のサビを歌いこんだ“ハム・ハレルヤ”、複雑なハーモニーを聴かせるピアノ・バラードの“ゴールデン”をはじめ、ストリングス、ホーン、ゴスペルのコーラス隊なども使いながら多彩な曲を作るというFOBの挑戦は『インフィニティ・オン・ハイ』に全米No.1ヒットの快挙をもたらした。しかし、「天上の無限」(=『インフィニティ・オン・ハイ』)を求めるFOBの挑戦は止まることなく、よりファンキーなサウンドに接近した08年発表の『フォリ・ア・ドゥ –FOB狂想曲』で、さらに多彩な曲の数々とパトリックの成熟した歌声に結実した。
Fall Out Boy -“Hum Hallelujah”(Live From UCF Arena)
Fall Out Boy -“Golden”(AOL Music Live)