◼︎新作『アメリカン・ビューティー/アメリカン・サイコ』から窺えるバンドの絆

前作から1年9ヶ月でリリースする最新6thアルバム『アメリカン・ビューティー/アメリカン・サイコ』。大観衆の熱狂に刺激され、ツアーの真っ最中に作った“センチュリーズ”を、レーベルが気に入り、シングルとしてリリースすることが決まってしまったため、急遽、アルバムとしてリリースすることを前提に新曲作りに突入したことがかえって弾みとなって、あれこれと考えこむことなく、ある意味、自然発生的に曲が次々にできあがっていったそうだ。

ホーンやピアノを巧みに使いながらR&Bやヒップホップのエッセンスをバンド・サウンドに落とし込むという意味では前作『セイヴ・ロックンロール』の延長上と言えるものの、前作のプロデューサー、ブッチ・ウォーカーが多忙だったため、代わりにプロデュースを手がけた前作のエンジニア、ジェイク・シンクレアのアイディアで、今回は敢えて、これまで重ねていた音数を削ぎ落としたことで、メンバー一人一人の存在がこれまで以上にダイレクトに感じられる作品になっているところが現在のバンドの状態を物語っているようだ。スザンヌ・ヴェガの“トムズ・ダイナー”をサンプリングしたり(“センチュリーズ”)、基本編成以外の楽器や音色を加えたりするほか、ギミックも存分に使いながらそれでもバンドらしさをアピールしているところが新作のポイントだ。前述したように、これまで多彩なゲストを招いていた彼らが今回、ほぼメンバー4人だけで作り上げたところにも活動再開後、さらに強いものになったバンドの絆が窺える。

Fall Out Boy -“Centuries”

シンガロング必至のFOB節を歌い上げ、より一層、ソウルフルになったヴォーカルをアピールするパトリックもさることながら、“ユマ・サーマン”のエキゾチックなフレーズをはじめ、随所で印象深いギター・プレイを閃かせているジョーの活躍も聴きのがせない。

3月には名古屋、大阪、東京で開催される<PUNKSPRING 2015>のヘッドライナーとして来日することも決まっている。新曲の数々はきっと大観衆のシンガロングを巻き起こすにちがいない。

(text by Tomoo Yamaguchi)

Fall Out Boy -“Uma Thurman”

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