◼︎ミュージック・ビデオから窺えるシニカルな現実および自己認識
アルバムのリリースに先駆けること4ヶ月、昨年9月にリリースしたシングル“センチュリーズ”のミュージック・ビデオが早送り動画を撮るアプリ「Hyperlapse from Instagram」で作った世界初のビデオと話題になったが、FOBはこれまでもミュージック・ビデオ作りに意欲的に取り組み、見ごたえある作品を送り出してきた。
Fall Out Boy -“Centuries”(Hyperlapse Edition)
ピートが自分で撮影した股間丸出しの写真がネット上に流出してしまった事件を、自虐的に(?)茶化したシーンを含む“アームズ・レース”は、ゴシップの対象とされるポップ・スターになってしまった自分達を皮肉っているようにも思えるが、“サンクス・フォー・ザ・メモリーズ”やギルビー・クラーク(元ガンズ&ローゼズ)やファレル・ウィリアムスら、豪華ゲストが多数出演している“アイ・ドント・ケア”など、自分達も含め、ポップ・スターおよびロック・スター、あるいは音楽業界を揶揄したシニカルな作品が多いところがFOBらしいと言うか何と言うか、彼らの冷静な現実および自己認識が窺えるようでおもしろい。それらを見れば、彼らがロック・シーンの頂点を究め、有頂天になっているポップ・バンドでも可愛いだけのボーイズ・バンドでもないことがわかるはずだ。
Fall Out Boy -“Thnks fr th Mmrs”
Fall Out Boy -“I Don’t Care”
『セイヴ・ロックンロール』では全11曲のビデオを作り、それらをつなげた50分のショート・ムービー『The Young Blood Chronicles』を限定DVDとしてリリースした。メンバー達はそれらビデオの中で演技にも熱心に取り組んでいるが、中でもパトリックはバンドが活動休止している間、俳優として『ロウ&オーダー』や『ドクター・ハウス』といった人気テレビドラマに出演。当時は本気で俳優になろうと考え、オーディションをいくつも受けていたそうだ。
『ドクター・ハウス』出演時のパトリック・スタンプ