開催が目前に迫った<FUJI ROCK FESTIVAL 2023>(以下、フジロック 2023)。最終ラインナップとタイムテーブルが発表され、出演アーティストから逆算してスケジュールを組み始めている人も多いことだろう。しかし、何が起きるかわからないのが苗場のお祭り。ハプニングだらけの3日間で迷ってしまった時、あなたならどうする?

そんな場合に備えて、今回は<フジロック 2023>で見逃せないアーティストを曜日別にご紹介。「とりあえずこの人は見ておきたい!」という目処をつけて、一年に一度のお祭りへと臨んでほしい。

今回はDAY 1、金曜日の出演アーティストを時系列順にピックアップ。当日のステージや予定時間と照らし合わせながら、ハンドブック感覚でどうぞ!

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SUDAN ARCHIVES
WHITE STAGE 14:20-15:10

初日の最初のアクトとしてチョイスしたのは、オハイオ州出身のシンガー/バイオリン奏者/シンガーソングライター/ビートメーカーのスーダン・アーカイブスSudan Archives)。GREEN STAGEからWHITE STAGEへの道のりは自然に囲まれて気分爽快、夜は神秘的な一面が楽しめる。

メロウなR&Bサウンドをベースに、自身のルーツであるアフリカ諸国の跳躍するビートや拠点であるLAのプロデューサーたちとの協働、そしてスーダン自身のバイオリンを重ねて、彼女以外では辿り着けないアバンギャルドなポップスを構築している。昨年〈Stones Throw〉からリリースされた2ndアルバム『Natural Brown Prom Queen』はPitchforkによる「2022年ベストアルバム」で第2位、さらにはオバマ前大統領が毎年選ぶフェイバリット・ソングのプレイリストにも入るなど、昨年最も賞賛を浴びたアルバムの一つとなった。

今年だけでも<Coachella 2023>に<Primavera Sound Festival>、<Glastonbury Festival>と世界中の大型フェスに出演しているスーダン。磨きがかかった極上のファンク&メロウ空間、どっぷりと没入してほしい。

YVES TUMOR
RED MARQUEE 16:00-17:00

WHITE STAGEから向かうはRED MARQUEE、OASIS AREAに隣接するステージ。16時から登場するのは、フロリダ州はマイアミの生まれ、ショーン・ボウイによるソロプロジェクト=イヴ・トゥモアYves Tumor)。彼の音楽性は、2018年にリリースされた〈Warp〉からのレーベル・デビュー作『Safe In The Hands Of Love』から比較しても、実にドラスティックな変貌を遂げている。

それまでベルリンの〈PAN〉からグリッチを貴重とした実験的かつアブストラクトな小品をリリースしていた彼は、このレーベル・デビュー作で80’s〜90’sのオルタナティブな要素を取り入れたトラックを披露。その路線を継承……するかと思いきや、次作『Heaven To A Tortured Mind』(2020)ではグラムを思わせる蠱惑的なロックサウンドを大々的にフィーチャー。予測不可能な方向へと舵を切り、EP『The Asymptotical World』を挟んで今年3月にリリースされた最新作『Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume;(Or Simply, Hot Between Worlds)』ではインダストリアルな荒々しい質感を獲得。

イヴ・トゥモアの、鮮やかなキャリア変遷。官能性と凶暴性を併存させた唯一無二のステージングは圧巻そのものだ。歴史の目撃者となるためにも、暮れなずむ時間のRED MARQUEEへと足を運んでほしい。

矢沢永吉
GREEN STAGE 17:00-18:00

イヴ・トゥモアのライブ終了直後、RED MARQUEEからすぐに移動。そして余計な説明は不要、日本のロックアイコンとして数々の金字塔を打ち立ててきたE.YAZAWAが苗場に降臨! 1972年、キャロルでのデビューから51年。自身の揺るがざる野心とエンターテイナーとしての矜持を体現し続け、唯一無二の地位まで登り詰めたロックスターがフジロックに初登場する。

過去には<SUMMER SONIC>や<ROCK IN JAPAN FESTIVAL>にも出演、さらには音楽フェスティバル<E.YAZAWA SPECIAL EVENT “ONE NIGHT SHOW”>を2019年より主催するなど、夏フェスとの相性は抜群。薄暮に差し掛かったグリーンステージの初日、広大な緑の上でタオルが宙を舞う光景がありありと浮かぶ。そんな歴史の一幕の当事者として、記憶に残り続ける体験をしてもらいたい。

YO LA TENGO
FIELD OF HEAVEN 19:00-20:30

矢沢永吉のライブ後はゆっくりとFIELD OF HEAVENへ。その前にOASIS AREAやところ天国で腹ごしらえするのもあり。USインディーのリビング・レジェンドでありながら、現在進行形でグッドメロディーとノイズの洪水を振り撒き続けているヨ・ラ・テンゴYo La Tengo)。その求心力は止まることを知らず、今なお世界中のキッズたちのハートを射抜き続けている。『I Can Hear the Heart Beating as One』や『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』といった往年の名盤の輝きはそのままに、今年リリースされた最新作『This Stupid World』では初期作を思わせる前のめりなバンドサウンドを展開した3人。結成40周年も目前に迫った今、2023年現在のヨ・ラ・テンゴを観る意義は、十分すぎるほどにある。

彼らの出演は2013年のGREEN STAGE以来、実に10年ぶりとのこと。盟友・坂本慎太郎との並びにも、ただならぬ期待をしてしまう……。夜のFIELD OF HEAVEN、感傷にどっぷり浸かりながら、轟音吹き荒ぶ夜空を眺めるのはいかがだろう。

なお、ヨ・ラ・テンゴは11月に単独公演が控えているので、そちらもぜひチェックを。

Ryoji Ikeda
RED MARQUEE「PLANET GROOVE」 23:00-23:55

ここから怒涛の一夜が始まる。1日目から<フジロック>の深夜を遊び倒す。電子音楽/実験音楽の実践家として、テクノロジーを駆使した没入喚起的なライブパフォーマンスを行う池田亮二。世界規模でのメディアアートを展開するアーティストグループ・ダムタイプのメンバーとしても知られる。世界各地で個展を開催するほか、<あいちトリエンナーレ2010>や<第58回ヴェネチア・ビエンナーレ>にも参加。ソロワークとしては2018年にレーベル〈codex|edition〉を立ち上げ、昨年12月に約10年ぶりとなるオリジナルアルバム『ultratronics』をリリースした。

精緻に組み上げられた、聴衆の五感を刺激してやまないイマーシブな体験を提示する池田亮二のパフォーマンス。ワイルドな息遣いを感じるレッドマーキーの夜、55分間の思弁的なトリップ、見ない手はない。

VEGYN
RED MARQUEE「PLANET GROOVE」 24:00-25:00

立て続けに登場するのは、ロンドン出身のプロデューサー/DJであるヴィーガンVegyn)ことJoe Thornalley。2010年代の前半から活動を開始させた彼が最も注目を集めたのは、なんといってもフランク・オーシャンFrank Ocean)が2016年の夏に発表した『Blonde』と『Endless』というクラシックへの参加だろう。その後もコラボレーターとして「blonded RADIO」のホストを務めるなど、ヴィーガンのセンスには常に世界中のクラバーが注目していた。75曲・2時間半越えの最新作『Don’t Follow Me Because I’m Lost Too!!』(2022)を聞けば、そのあまりにも多い手札が伺えるであろう。

バラバラなようで、端正な時空間を描写し続けるヴィーガン。これまでのジャパンツアーや昨年の<朝霧Jam>はDJセットでの出演だったが、なんと今回は国内初となるライブセットを披露! 深夜のレッドマーキー、長い夜はまだまだ入り口だ。

OVERMONO
RED MARQUEE「PLANET GROOVE」 25:10-26:25

OASIS AREAで夜食など嗜むのも良し。さらに躍らせにかかってくるのは、ウェールズ出身のトム・ラッセル&エド・ラッセル兄弟によるプロジェクト、オーバーモノOvermono)。活況を呈するUKベースシーンの、その熱狂の中心にいる超重要ユニットだ。それぞれソロでも活躍しながら、2016年に〈XL Recordings〉からデビューEP『Arla』をリリース。以降も数多のキラートラックを量産、今年5月に満を辞して発表された1stアルバム『Good Lies』は大絶賛をもって迎えられた。UKのダンスシーンを語る上で、いの一番に名前が挙げられる存在といっても過言ではない。

Glastonbury Festival>や<Coachella>など、あらゆる大舞台を難なくこなしてきたオーバーモノ。そんな2人がライブセットでフジロックに初登場する。夜も深まり、いよいよ最高潮に膨れ上がったレッドマーキー。ここまで残してきた体力を、ぜひ搾り切ってほしい。

初日にしてこのボリューム。大自然の中、極上の音楽の多幸感に包まれるフジロックまだまだ続きます。あなたはどう過ごしますか?ぜひ参考にしてみてくださいね。

Road to FUJI ROCK!!

EVENT INFORMATION

FUJI ROCK FESTIVAL 2023

迷子になったらこのアクト!<FUJI ROCK FESTIVAL 2023>直前ハンドブック〜DAY 1 金曜日編 music230725-fujirockfestival2023-fri2

2023.07.28(金), 29(土), 30(日)

新潟県 湯沢町 苗場スキー場

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