マック・デマルコ
カナダが生んだスラッカー・ロック界のヒーロー

フューチャー・アイランズ、マック・デマルコ来日特集!絶対に逃せない2組の魅力とは? music_futureislands-macdemarco_5-700x525

続いて紹介するのは、カナダが生んだスラッカー・ロック界のヒーロー、マック・デマルコ。

「スラッカー」とは、元々第一次/第二次世界大戦で徴兵を拒否した人々のことを指す言葉だったが、スーパーチャンクが“スラック・マザーファッカー”というタイトルのシングルをリリースし、1990年にリチャード・リンクレイター監督が撮ったインディ映画『スラッカー』がカルト人気を博したことで、90年代以降「無気力で、働きもせずにフラフラしている奴ら」のことを指すようになった言葉。

特にアメリカのインディ・シーンには、そういった負け犬の生活を愛で、競争社会や資本主義の外側からユニークな才能が生まれてきた歴史がある。例えば、“ルーザー”で《俺は負け犬さベイビー/いっそ殺してくれよ》と歌っていた初期のベックは、その典型だった。

現在27歳のマック・デマルコは、その系譜を受け継いだローファイ・脱力系シンガーソングライターの現代における最高峰だ。

2008年から自主リリースで楽曲を発表し、知る人ぞ知るインディ界の新鋭と目されていた彼が世界的に耳目を集めたのは、2012年のデビュー・アルバム『2』から。ギター・ポップ系の才能が数多く集うアメリカのインディ・レーベル〈キャプチャード・トラックス〉からの初リリースとなった同作では、ローファイの極みのようだった初期から音像が洗練され、持ち前のメロディ・センスが前面に出た開放的な作風に。

この『2』は、すきっ歯を全開にした笑顔とピース・サインが印象的なアートワークとなっているが、実はこのジャケット・デザインは細野晴臣の名作『HOSONO HOUSE』へのオマージュ。彼は、日本のポップ/ロックにも造詣が深く、YMO、坂本龍一、矢野顕子らを愛聴しているのだという。

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また、海外のTV番組で『ガキの使いやあらへんで』のパロディを披露したこともあり、日本のポップ・カルチャー全般と波長が合う稀有な存在としても、もっと日本で注目されていいはずだ。

彼の来日は、2015年1月以来、3年振りの二度目。前回のライブは、彼の評価を確立し全米チャート30位の好成績を収めた2nd『サラダ・デイズ』を引っさげての公演だった。今回のライブは、『サラダ・デイズ』に続く3作目『ディス・オールド・ドッグ』に伴うツアーとなる。

Mac DeMarco // This Old Dog (Official Video)

今年5月にリリースされた同最新作は、長年に渡って拠点にしていたニューヨークから、レコーディングの地をLAに移して制作。レイドバックした緩いビート、T・レックスをはじめとするグラム・ロックの影響が垣間見えるアコースティックなギター・リフ、捻くれたソフト・ロック風の甘いメロディ等、従来の持ち味はそのままに、シンセサイザーを重用することで、よりロマンティックに進化している。

歌詞の面でもリリカルで内省的な言葉が増え、今まではヘラヘラした笑顔とバカらしい挙動の奥に隠れていた、彼のシリアスな側面が明瞭に顔を覗かせた一枚と言えるだろう。

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最新作『ディス・オールド・ドッグ』

彼の人気は今や北米のみならず、イギリス・ヨーロッパでも不動のものになっている。特にイギリスでは、5000人キャパのブリクストン・アカデミー2デイズをソールドアウトにするほどで、ライヴ・パフォーマンスの面でも3年前とは比較にならないほどの進化を遂げているに違いない。

フューチャー・アイランズとマック・デマルコ。彼らの来日は、現USインディ・シーンの奥深さと多様性を知る上でも必見のライブとなるはず。今から首を長くして待っていて欲しい。

EVENT INFORMATION

マック・デマルコ来日公演

2018.01.18(月)
OPEN 18:00/START 19:00
恵比寿 LIQUIDROOM
ADV ¥5,500(1ドリンク別)

2018.01.23(火
OPEN 18:00/START 19:00
Umeda CLUB QUATTRO
ADV ¥5,500(1ドリンク別)

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text by 青山晃大