ロバート・グラスパーらの登場を契機にして他ジャンルの音楽とも次々に融合し、躍進を続けてきた新世代のジャズ・ミュージシャンたち。中でもその台風の目となっている名門〈ブルーノート〉と契約したことで注目を集めているのが、ジャズ・クラブとダンス・フロアを並列に繋ぐマンチェスターのピアノ・トリオ、ゴーゴー・ペンギンだ。彼らが最新作『マン・メイド・オブジェクト』を日本先行1月27日(水)にリリースする。

ジャイルス・ピーターソンも絶賛! リーダー不在のピアノ・トリオ

09年、地元マンチェスターで結成されたゴーゴー・ペンギンは、ピアノのクリス・アイリングワース、ドラムのロブ・ターナー、ベーシスト、ニック・ブラッカによる3人組。特定のリーダーは存在せず、3人が民主的にアイディアを持ち寄る形で制作を行なっている。12年にインディー・レーベルから『Fanfares』でアルバム・デビューを果たすと、この作品をジャイルス・ピーターソンが年間ベスト・ジャズ・アルバムに選出。続く14年の『V.20』はイギリスで最も権威のある音楽賞マーキュリー・プライズにノミネートされ、ジャズを超えた幅広いリスナーの間で認知を獲得していくこととなる。そして今回、3人は名門ブルーノートと契約。本作『マン・メイド・オブジェクト』で憧れのレーベルからメジャー・デビューを果たすこととなった。

テクノやクラシックの影響も!ジャズの新生ゴーゴー・ペンギンとは music160125_ggp_1

『マン・メイド・オブジェクト』ジャケット

トリップホップからエイフェックス、ドビュッシー、テクノまで、幅広い影響源

彼らの主要な影響源は、エイフェックス・ツインやスクエアプッシャー、アンダーワールドなどを筆頭にしたドリルンベース~テクノ、マッシヴ・アタックやポーティスヘッドらトリップホップ、そして00年代以降UKシーンで人気を獲得していったダブステップなど、古今東西のエレクトロニック・ミュージックの数々。それらすべてをSSW的な視点で再構築したジョン・ホプキンスにも影響を受けているそうだ。

Aphex Twin – Windowlicker

Underworld – Rez/Cowgirl

Jon Hopkins – Collider

同時にドビュッシーやショスタコービッチといったクラシックからクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのようなストーナー・ロックなども影響源に挙げていて、作品全体の雰囲気は『キッドA』~『アムニージアック』期のレディオヘッドからトム・ヨークのソロ作などに至る進化のジャズ版といった雰囲気だ。では、他のアーティストとは異なる、彼らならではの魅力とは何なのだろう? 同じくエレクトロニック・ミュージックをバンドに置き換えた存在として、ダブステップ・バンド、サブモーション・オーケストラの楽曲と比べてみましょう。

GoGo Penguin – All Res -live at Union Chapel

Submotion Orchestra Performance – Bass Music Awards

こうして見ると明らかに違うのは、ゴーゴー・ペンギンの場合、あくまで人力で、音数を重視したアンサンブルを追究しているということ。これは明らかに、プレイヤー志向の音楽=ジャズならではのもので、彼らの楽曲にはドラムンベースやドリルンベースのようなビートの嵐とクラシックの香り、プログレッシヴ・ジャズ的な構築美が広がっている。

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