ブラー(Blur)のフロントマン、デーモン・アルバーンと、『タンク・ガール』などの作者として知られる漫画家/イラストレーターのジェイミー・ヒューレットによって結成され、「最も成功した架空のバンド」としてギネスブックにも認定されたバーチャル・バンド、ゴリラズ(GORILLAZ)。2017年には<FUJI ROCK FESTIVAL ’17>のヘッドライナーとして久方ぶりの来日を果たしたことも話題になった彼らが、6月21日(木)に幕張メッセイベントホールで待望の単独公演を行なう。

これまでフェスへの出演はあったものの、単独での来日公演は初めてのこと。若いリスナーの中には、ゴリラズのそもそもの設定やストーリーなどを知らない人もいるかもしれません。そこで今回は、実はかなり詳細に作り込まれているゴリラズのキャラクター設定や、作品ごとのストーリー性などを中心に、この類まれなバーチャル・バンドのこれまでの歩みをまとめてみようと思います。

徹底検証:ゴリラズ

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キャラクター設定

■2D

ゴリラズのフロントマン/ルックス担当。本名はスチュアート・ポット。2Dという名前は「顔に2つくぼみ(2dents)がある」という意味で、叔父が経営するキーボード専門店で働いていたところにマードックの運転する車が突っ込んできて片目を損傷し、植物状態に。その後再びマードックの運転により事故に遭った際に今度は両眼を損傷してしまうも同時に意識を取り戻し、マードックとバンドを組むことになります。

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■マードック・ニコルス

ゴリラズのベーシスト/リーダー的存在で、バンドの創始者。66年6月6日(悪魔の象徴のような日)生まれの悪魔教の信奉者でもあります。「車ごと楽器屋に突っ込んでシンセサイザーを奪い、バンドを組む」ために楽器店に突っ込んだところ、店員として働いていた2Dを植物人間状態にしてしまう事故が発生。その後も悪びれることなく生活していたものの、植物状態の2Dを後部座席に乗せてもう一度事故を起こしたことがきっかけで意識を取り戻した2Dとゴリラズを結成。

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■ラッセル・ホブス

ゴリラズのドラマー担当。悪魔に取り憑かれて学校を退学になり、4年間昏睡状態にあったものの、その後回復。復学したブルックリン大学でヒップホップに出会って活気を取り戻すも、今度は仲間が通り魔に殺され、その際に自分の心を仲間たちの魂に乗っ取られてしまう。ラッセルの目が白いのはこのためで、ラップやドラムのテクニックは彼にとり憑いた仲間たちから習得。移住した先のイギリスのレコード店でマードックと出会いバンドに加入。彼にとり憑いた友人の中でも特に仲のよかったDell(デル・ザ・ファンキー・ホモサピエン)はサポートに加わることもあり、“Clint Eastwood”や“Rock the Hous”のMVにも登場。

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■ヌードル

ゴリラズのギター/紅一点。大阪出身の10歳の少女(結成時)で、先に集まった他のメンバー3人が音楽雑誌にギタリスト募集の広告を出したところ、日本から航空便で届けられた箱から飛び出し、素晴らしいギターとカンフーを披露したことでバンドに加入。名前の由来は、英語がしゃべれなかった彼女が唯一まともに話せた単語が「ヌードル」だったため。

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ゴリラズは覆面バンドとして正体を明かさないままスタートしたプロジェクトだったため、特に最初期はイラストやアニメーションで表現された4体のキャラクターが重要な役割を果たしていました(注:ただし、歌声からブラーのデーモン・アルバーンの別プロジェクトであることはすぐに判明)。そもそものユニットの構想は、デーモン・アルバーンが元エラスティカ(Elastica)のジャスティーン・フリッシュマンと、ジェイミー・ヒューレットがジェーン・オリバーとそれぞれ破局し2人で共同生活をはじめた際、ある日何気なくMTVを観ていたときに思いついたもの。

また、音楽的にはゴリラズとしての楽曲リリース直前に当たる2000年にデーモンが参加したダン・ジ・オートメイターやデル・ザ・ファンキー・ホモサピエン、キッド・コアラらによるスーパーグループ=デルトロン3030(Deltron 3030)の作品がひな型になった部分は大きいはずで、デビュー曲“Tomorrow Comes Today”がブラーのデモ曲“I Got Law”をもとに制作されていることからもうかがえる通り、ブラーでは表現しきれない、デーモンの新たな興味が純粋な遊びとして反映されたユニットという印象が強いものでした。

ストーリー設定

とはいえ、このグループにはキャラクターごとに細かく用意された設定や架空のバンドとしてのストーリーが丁寧に用意されていて、その物語は基本的にバンドのリーダー的存在、マードックの無茶な行動に他メンバーが巻き込まれるような形で進んでいきます。ファースト・アルバム『ゴリラズ』発表までの経緯はこんなストーリーでした——。

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自身が車で突っ込んだ楽器店での事故で2Dを植物人間にしてしまったマードックは地域奉仕と2Dの世話を命じられるものの、2Dを後部座席に乗せていた際にふたたび無茶な運転で彼を車外に吹き飛ばしてしまいます。しかしそれと引き換えに意識を取り戻した2Dをフロントマンに据えてバンド結成を画策。レコード店で見つけたラッセルの後頭部にバッグをぶつけて無理やりコング・スタジオへと連れ去り、そのままメンバーに加えると、最後に日本からの航空便で届いたヌードルを加えてゴリラズを結成。ファースト・アルバムを制作すると、現実同様に2Dたちが暮らす架空の世界でもヒットを記録します。

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続くセカンド・アルバム『デーモン・デイズ』では、ファーストで数々の音楽賞を受賞し、映画出演のオファーを受けハリウッドに向かうも、業界の闇に嫌気がさして映画を降板した後のストーリーを描写。バンドが一旦活動休止することとなり、メキシコで偽小切手発行を繰り返し懲役30年の実刑判決を受けていたマードック、出生の秘密を知りに日本に向かい、恩師から自分が日本政府によって極秘に育成されていた軍のスーパーソルジャー計画の一員であることを知らされたヌードル、マードックがいなくなり順風満帆な生活を送っていた2D、自分に取り憑いていた友人たちが成仏して世捨て人のような生活を送っていたラッセル。それぞれ一度違う道を歩むメンバーでしたが、ふたたび拠点となるコング・スタジオに集まり、ゾンビだらけの館になったスタジオで音楽制作をはじめていきます。

また、ここではゴリラズの物語史上初めてジミー・マンソンという明確な敵が登場し、物語はバンド内の物語を越えて、徐々に冒険度を増すことに。中でも印象的だったのは“El Mañana”のMVで、ジミー・マンソンを罠にかけるためにヌードルの失踪を偽装したところ、ヌードルが本当に行方不明になるという衝撃の展開に。また、ネナ・チェリーやデ・ラ・ソウル(De La Soul)を筆頭にゲスト・ミュージシャンが大幅に増え、“Feel Good Inc.”ではデ・ラ・ソウルが実写でMVに登場するなど、後の活動に繋がる世界観の広がりが芽生えていったのがこの時期のゴリラズでした。

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サード・アルバム『プラスティック・ビーチ』では、物語は海の孤島を舞台にした海洋アドベンチャーに。ブラック・クラウンと呼ばれる組織に不発弾を売りつけて追われる身となったマードックが逃げ込んだ、腐ったプラスチックの破片やゴミで出来た孤島プラスティック・ビーチに新たなスタジオを建設し、ゴリラズの再結成を画策します。まずは行方不明になっているままのヌードルを探しに“El Mañana”のMVの舞台をふたたび訪れたマードックは、そこで手に入れたヌードルのDNAサンプルからサイボーグ・ヌードルを制作。

続いて「サード・アルバムには参加しない」と言った2Dに薬品を嗅がせて誘拐&プラスティック・ビーチに監禁し、またもや廃人になっていたラッセルは置き去りのままレコーディングに突入。ここで描かれるのはマードックがちりじりになったメンバーを回収していく再生の物語で、自暴自棄になって海に飛び込み、海の汚染物質によって巨大化したラッセルや、突如訪れるヌードルの帰還を経て物語がクライマックスへと進む展開でした。ちなみに、この『プラスティック・ビーチ』の一連のストーリーは、それぞれ結婚したデーモン・アルバーンとジェイミー・ヒューレットが家族ぐるみで一緒に向かった旅行先で思いついたもの。ゲスト・ミュージシャンがさらに豪華/多彩になり、スケールの大きな海洋アドベンチャーに発展したことで、ゴリラズの世界観をより拡張することに繋がりました。

また、この作品をリリースして回った<エスケープ・トゥ・プラスティック・ビーチ・ワールド・ツアー>の北米ツアー中に制作され、前作から約1年という短いインターバルで発表された4作目のアルバム『ザ・フォール』は、ツアーの記録としてデーモン・アルバーンがiPadと様々な楽器を駆使して制作した作品に。この作品はいわば、現実とフィクションの境界線が曖昧になりつつあった当時のゴリラズらしい作品といえるかもしれません。

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そして現時点での最新作となる『ヒューマンズ』では、プラスティック・ビーチが海賊に襲われ、マードックはアビー・ロード・スタジオの地下に幽閉、2Dはグアダルーペ島、ヌードルは故郷の日本、ラッセルは北朝鮮へとメンバーが散り散りになる中で、マードックがゴリラズのアルバムに着手することを条件に釈放され、ゴリラズを再始動するところから物語がスタート。アメリカの気鋭ラッパーたちを多数招集して昨今の世界情勢も反映させたダーク・ファンタジー的な世界観を広げながらも、ラスト曲“We Got The Power”では犬猿の仲として有名だったノエル・ギャラガーを迎えて愛の力を説くなど力強い作品を完成させています。

こうした一連のとっちらかったストーリーは、やはり友人2人の悪ふざけからはじまったユニット特有で、ジェイミー・ヒューレットの代表作のひとつ『タンク・ガール』で描かれていたSF的な世界観にも通じるもの。また、物語が音楽作品の枠を越えた様々なコンテンツによってインタラクティヴな形で提供されてきたのもゴリラズの特徴で、CDをPCで読み込むと特設サイトが登場したデビュー・アルバム『ゴリラズ』での仕掛けを皮切りに、キャラクター情報や楽曲解説をまとめた自伝本『Rise of the Ogre』の出版、iPad、iPod touch、iPhone用ゲーム『Escape to plastic beach』の配信、2Dアニメーションと3DCGを合成した360度MVなど、様々なアイディアやテクノロジーを取り入れて変化する様子もこのグループならではのものでした。

ライブパフォーマンスの変動

そうした変化はライブ面にも顕著で、ゴリラズのステージは時期ごとにその内容を大きく変えてきました。デビュー作『ゴリラズ』リリース後のライブでは、ステージ前面に張られたスクリーンにアニメーションを投影し、デーモンを筆頭にしたバンドメンバーはステージに登場しない形でライブを開始。2001年の<SONICMANIA>でのライブもこの形式で行なわれています。

Gorillaz – Dirty Harry (BRITs Animation) (Screen only)

そしてセカンド『デーモン・デイズ』発表後は、デーモンを筆頭にしたバンドメンバーが照明を落としたステージ奥で演奏し、オーケストラ、DJ、合唱隊らもステージに配置。曲ごとにゲストが登場する中で背後のスクリーンにアニメーションを投影するライブに変化していきます。“Feel Good Inc.”が最優秀ポップボーカルコラボレーションを受賞した2006年のグラミー賞授賞式では、マドンナとの共演も実現。この様子は映像作品『フェイズ2:スロウボート・トゥー・ハデス』で観ることが可能です。

Gorillaz – Clint Eastwood (Live BRITs Performance)

そしてサード・アルバムリリース後は、<Coachella(Coachella Valley Music and Arts Festival)>を筆頭にした大型野外フェスへの出演や大規模なワールドツアーに乗り出し、ここでいよいよバンドがステージの前面に登場。現在のライブに繋がる演奏スタイルに移行していきました。中でもハイライトとなったのは、ヘッドライナーとして出演した<GLASTONBURY FESTIVAL 2010>。

ここではスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)、デ・ラ・ソウル、ルー・リード、マーク・E・スミス、ショーン・ライダー、ボビー・ウーマックが登場し、豪華ラインナップでのステージが話題を呼びました。そして『ヒューマンズ』リリース後のライブでは、TV番組で遂にオアシス(Oasis)のノエル・ギャラガーとの共演が実現。ちなみに、これ以前のデーモン・アルバーンとノエル・ギャラガーの直接的な共演は、恐らくブリットポップ直前のイギリスの音楽番組『TOP OF THE POPS』での一幕で、デーモンが期待のバンドとしてオアシスを紹介するという、その後の関係を考えると信じがたい状況が生まれていたのも印象深いところです。

Gorillaz Saturnz Barz Live At Printworks London

そして2017年の<FUJI ROCK FESTIVAL ’17>では、ヘッドライナーとして久々に来日公演が実現し、デーモン・アルバーンを筆頭にしたバンドメンバーが序盤からステージを広く使って観客を煽るという、今ならではのダイナミックなステージを披露!

Gorillaz – Strobelite FUJI ROCK FESTIVAL ’17

今回の来日公演もその延長線上にあるはずで、“Clint Eastwood”や“Feel Good Inc.”、“On Melancholy Hill”や“Stylo”といった過去の楽曲に加えて、最新作『ヒューマンズ』の楽曲も多数披露されるはず。また、彼らは現在2018年内に最新アルバムをリリース予定。2017年以降はライブの現場で“Idaho”“Hollywood”といった新曲も披露されているため、6月の来日公演でも次作の収録曲からさらなる楽曲の披露があるかもしれません。待望の来日公演はもうすぐ。この機会に世界一のバーチャル・バンド、ゴリラズの魅力をおさらいしてみるのもいいかもしれません。

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©Masanori Naruse
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EVENT INFORMATION

GORILLAZ “THE NOW NOW” Japan Tour 2018

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2018.06.21(木)
OPEN 18:00/START 19:30
幕張メッセイベントホール
アリーナスタンディング(ブロック指定) ¥12,000 スタンド指定S席 ¥12,000 スタンド指定A席 ¥10,000

TICKET:
ローソンチケット
【Lコード】72451
0570-084-003
http://l-tike.com/

チケットぴあ
【Pコード】103-339
0570-02-9999
http://t.pia.jp/

イープラス
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iFLYER
https://admin.iflyer.tv/apex/eticket/?id=298267

楽天
http://ticket.rakuten.co.jp/

岩盤(Web・店頭販売)
http://ganban.net/
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text by 杉山仁