Group2に付されたキャッチコピー、「靴見るシティサイケバンド」はなるほど実際、音を聴くと全ての要素が詰め込まれている。つまりシューゲイザーとシティポップとサイケ。しかもその境界線をなんとか滑らかにトリートメントしたり、溝を埋めるべくキャッチーな構成にしたり「しない」。サウンドは異なるものの、いつの時代にだってアンファンテリブル=おそるべき子供たちは存在していてほしいものだ。

特に情報の取捨選択がうまく、演奏スキルも高く、大人の考えていることも分かった上でクレバーな対処ができるのがなんとなくミレニアルズと呼ばれる、20代半ば世代の特質だとすれば、なおさらだ。そう。サウンドにもほんのりそのニュアンスを感じるのだが、2010年代後半の東京で活動するGroup2には、どこか超初期のフリッパーズ・ギターや、ザ・スミス(The Smiths)のような鋭さとクソガキ感がある。「すでに世の中にある音楽のほとんどがだせえ」。そんなこと、本人たちが言ってるわけじゃないけれど、Group2の音楽は正しくシニカルなのだ。

シンセとボーカルを担当する女性フロントマンと男性の3リズムからなる4ピースバンドで、バンド活動と社会人としての生活を両立しているという。そして本稿のお題であるバンドにとっての1stフル・アルバムとなるセルフタイトルの『Group2』のレコーディングとミックスエンジニアにはミツメやシャムキャッツなどを手がける馬場友美、マスタリングには坂本慎太郎など多数を手がける中村宗一郎があたっている、という情報程度しか持ち得ない中(いや、作品を聴くには過剰なぐらいの情報だ)このアルバムを聴いてみよう。

その前に“Group2”というバンド名が引っかかる。なんらかのワークのためにグループ分けされた時の呼び名、もしくは「1じゃない方」、穿った見方をすればメインストリームじゃない方、流行りとは関係ない方。無機質なネーミングから勝手に想像が膨らむ。詮索したがりにはありがたいバンドネームである。

1stアルバム『Group2』を紐解く

1曲目は外国人男性のナレーションがレトロ・サイケなラウンジミュージックに乗るイントロからタイトなビートに転換する“44.1kHz”。投げやりな山口風花(Vo/Syn)の語り口や、ジョニー・マーみもグレアム・コクソンみも同時に感じる熊谷太起(Gt/Vo)の音選びも相まって冒頭に抱いたようなアンファンテリブル感、しかも《愛嬌で会議をちょっとブレイク》なんてな社会人としてもあるあるな場面を歌詞に盛り込むあたりに、ドライなユーモアも覗かせて聴き手の本音にもするっと飛び込んでくるのだ。

Group2 – 44.1kHz Music Video

続く“Echoes”はドリーミィなシンセと洒脱なギターカッティングに、スネアのダブ処理やTR-808がいきなり耳に飛び込んでくるAメロだけでもかなりひねくれている。それでも感触としてはシティなポップを唐突にノイジーなシューゲサウンドの壁で塗りつぶしに来る。シューゲなギターポップに一番近い“Abduction”には最もザ・スミスのDNAを感じた。時折鳴るエマージェンシー・コール、そして誰にいうともなく(もしかしたら自分に言ってる?)《人生さっさと受け付けろよ つったってんな案内しろよ》という、ヤケクソと不安を無機質なていで吐き出すアンビバレンツ。

そしてシュールなMVも話題になった“MILK”は、サイケとクラウトロックが融合した上で、限りなくビートは奥の方で控えめに鳴っている。オルガンとシンセの音色がどこか懐かしい響きでビザールだが、懐かしいという感情自体には否定的な歌詞が並ぶ。音も言葉もミニマルで、バンドサウンドにこだわらないアレンジが乾いたこわさを醸し出す。

Group2 – MILK Music Video

“MILK”のエンディングからシームレスに、アナログレコードのノイズが聴こえ、心地よいディレイのかかったギターにスティールパンも聴こえる“寝てる人”は、タイトル通りどこか半覚醒状態で見る妙にリアルな夢のようだ。“MILK”と“寝てる人”に共通するちょっとドラッギーなサイケ感は、どうやら2曲とも作曲が上田真平(Ba/Vo)によるものだからだろうか。チープな打ち込みの破裂音めいたスネアの80s感から一転、リバーヴが効いたカッティングが白日夢や水に溺れるような感覚をもたらす“プール”。あくまで比喩かもしれないが《宵に身を投げた 一緒に泳ごう カルキに溶けてく尽きそうな金魚》というラストの歌詞は、ゾッとするような色気が漂う。

7曲目はGroup2と同日のアルバム『KINô』をリリースしたチルアウト・ヒップホップアーティストmaco maretsを迎えた(歌詞も山口との共作)“PEAK TIME feat. maco marets”。平たく言えば今作中最も旬でアーバンな匂いの16ビートのチルなヒップホップだ。この曲ではひねりより、夜のピークタイムとその後、夜が白々と明けていく、むしろ体がその白に混ざっていくようなオ—ル明けの感覚とでも言おうか。Group2初のコラボレーションでもあり、男性のラップがあることも大きいが、ねじれ、シニカル、ちょっとビザールな楽しさからリアルな20代の生が垣間見える曲に思えてならない。

Group2 – PEAK TIME feat. maco marets Music Video

そしてビートがパッシヴでノイジーなギターとブライトなシンセが、本作の中では珍しく00年代のUSインディーに通じるテイストの“サークルズ”。でも平歌でのギターはリヴァーヴィで、ギターの熊谷の音選びのセンスと音使いの変化で、曲が表す心情や表情もコロコロ変わる。

そしてラストはフュージョンで用いられるようなシンセの音色がそれそのものがちょっとシニカルに聴こえる“セレモニー”。洒脱なカッティングもコード進行も型通りに進まないのは山口の不穏な歌声とシンセ、そして歌詞のなせる技。アルバム中盤が白日夢的だとすれば、この終盤はメロウグルーヴでありつつ、言葉や上物がどこか刺々しい。いや、素面でいようとするタフさというべきだろうか。《五感マストで駆使して アイソレーションで持ってくASC》というフレーズに、(堅苦しい言い方だが)この人たちの個のプライドを見る。

Group2 – セレモニー Music Video

ふと言った、ふとメモした。そんな言葉やアイデアが無理やり拡張せずに存在していられるアンサンブルのバランス。それが冒頭に書いた境界線をトリートメントしたり、溝を埋めないということだ。サイケもシューゲイザーもシティポップも同じ「部屋」で話ができる。その話のテーマが曲という接地点なのだろう。いびつなのに聴くほどに楽しさやツボが増えるのは、聴き手である自分も仮想の会話に少しずつ参加しているからなんだと思う。

明らかに2018年に20代の男女が作ったサウンドだけれど、とかく「じゃない方」を選ぶ人には世代を超えて響くところが多いアルバムなはずだ。なお、12月には大阪・東京で、彼らとセンスも近しい“曲者”揃いのリリース・パーティも開催。

Group2とは果たして何者なのかその目で確認してみては?

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Photo by スグロリョウゴ

RELEASE INFORMATION

『Group2』

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2018.11.07

トラックリスト
1. 44.1kHz(MV)
2. Echoes
3. Abduction
4. MILK
5. 寝てる人
6. プール
7. PEAK TIME feat. maco marets
8. サークルズ
9. セレモニー(MV)

詳細はこちら

EVENT INFORMATION

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的(TEKI) Vol.2~大阪~ 「Group2 1st ALBUM 『Group2』Release Party!」

2018.12.23(金)
OPEN17:30/START 18:00
CIRCUS Osaka
ADV ¥2,500 DOOR ¥3,000
LIVE
Group2
And Summer Club
LADY FLASH
maco marets
Soleil Soleil

的(TEKI) Vol.2~東京~ 「Group2 1st ALBUM 『Group2』Release Party!」

2018.12.28(金)
OPEN/START 19:30
Shibuya O-EAST
ADV ¥2,500 DOOR ¥3,000
LIVE
Group2
PARKGOLF
Jappers
Magic Drums, and Love
Frasco

DJ
TA-1(KONCOS)
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斎藤雄(Getting Better/TIPS)

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