写メなんか撮ってないで、今を楽しもう。
すべてがハイライトだったニュートラル・ミルク・ホテル
日本でニュートラル・ミルク・ホテル(以下、NMH)の初来日公演が実現し、よもや超満員になることを一体誰が予想できただろうか? 17年越しーーそれもオリジナル・メンバーという奇跡。ある人はフランツ・フェルディナンドやアーケイド・ファイア経由で、またある人はフリート・フォクシーズやベイルート経由で彼らの名前を知ったのかもしれないが、洋楽不況がウソのように幸せな光景だ。
筆者が<ATP>で見たジェフ・マンガムのソロ・ライヴと同様に、オフィシャル・カメラマンでさえも撮影禁止の超厳戒態勢で幕を開けたこの夜のステージ。いきなり名曲“King of Carrot Flowers”の3本立てが投下され、「ア〜イラ〜ブユ〜/ジーザスクラ〜イスト〜」の大合唱に続くどんちゃん騒ぎでは、まさかのモッシュ&ダイヴまで巻き起こるほどの熱狂ぶり。楽曲も、声も、何ひとつ色褪せていない。スマホの光やシャッターが原因か最初はメンバーもピリピリしていたように見えたが、「カメラなんかしまって楽しもうや」と告げたジェフのMC後はもうバッチリ。それにしても、ここまで写メを毛嫌いするバンドはサヴェージズかNMHぐらいのものだ(笑)。
れっきとした新曲こそ無いが、セット・リストは2ndにして現時点で最後のアルバム『イン・ザ・エアロプレーン・オーバー・ザ・ シー』(歴史的名盤!)のナンバーを中心に、1stやEPの収録曲もバランス良くピックアップ。“Two Headed Boy”のようなジェフのソロ・パートを含めすべてがハイライトと呼んでも過言ではないが、アコギ、エレキ・ギター、ベース、ドラムス、ホーン、そしてアコーディオンやミュージック・ソーが徐々に折り重なっていき、サイケの一大絵巻を描くパフォーマンスは興奮を禁じ得ない。仙人かと見紛う長髪&ヒゲ面のジェフ(稀に彼女さんもステージに飛び入り)、酔いどれ船長みたいな巨体のスコット・スピレインはまるで御伽話から飛び出してきたかのようだったが、バンドのムードメーカーにして遊び心担当は、やっぱりジュリアン・コスター。アラフォーにしてあの垂れ耳ニット帽と笑顔は反則です。
アンコール含めおよそ90分。ジェフは何度もオーディエンスのことを「サンキュー、フレンズ!」と呼んでいたが、半ば伝説化していたはずのNMHとファンの距離を埋める、これ以上ない最高の言葉だった。
※ 残念ながら、NMHのステージ撮影は一切厳禁でした……。
text by Kohei Ueno
photo by 古溪 一道(コケイ カズミチ)
★セットリスト
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Temples
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Delorean
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Sebadoh
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Okkervil River
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Neutral Milk Hotel
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