この『ブラジル』を決定打として、JFDRの才能はこれからインディ・シーン全体により広く知れ渡っていくに違いない
メランコリックなカシオトーンの旋律に導かれて、今にも消え入りそうな歌声が響く“White Sun”で始まる本作。続く“Anew”ではアコースティック・ギターのアルペジオがリードするが、パスカル・ピノンのフォーキーな牧歌性とは一味違い、幾層にも重ねられた彼女のヴォーカリゼーションからはピンと張り詰めた緊張感が伝わってくる。また、サマリスに通じるエレクトロニックなプロダクションの“Wires”や“Destiny’s Upon Us”等の楽曲も、徹底してミニマルで繊細。エレクトロニック・ミュージック、フォークといった彼女のこれまでの音楽性から一歩奥へと進み、ビョークやシガー・ロスといったアイスランドの先達のみならず、『ア・ムーン・シェイプド・プール』におけるレディオヘッドやジュリア・ホルター等に代表される、ポップ・フィールドにおけるポスト・クラシカル的分野にまで接近した印象もある。
そして、本作の中でも白眉と言えるのは“Airborne”だろう。これまでドラマーと一緒に演奏したことがなかったという彼女が初めて生ドラムを取り入れた楽曲であり、ドラムを叩いているのはブルックリンを代表するアヴァンギャルド/エクスペリメンタル・バンド、リタジーとZsのドラマー、グレッグ・フォックス。彼が叩き出すシャープなドラミングと、悲し気なピアノとヴォーカルの対比が化学反応を起こす同曲は、JFDRの音楽を更にユニークでカテゴライズ不可能なものにしている。この『ブラジル』を決定打として、ヨフリヅル・アウカドッティルの才能はこれからインディ・シーン全体により広く知れ渡っていくに違いない。
JFDR – White Sun
JFDR – Wires
JFDR – Airborne
最後に、ワーカホリックで多作な彼女が、このソロ・キャリアやサマリス、パスカル・ピノンと並行して行っている他プロジェクトについても少し紹介しておきたい。その筆頭は、ガングリ。シーベアーとオヤマという、アイスランドで人気を博す二バンドのフロントマンと組んだ、アイスランド・ローカル・シーンのスーパーグループとも言うべきアクトで、約2年前から断続的に活動中。昨年から今年にかけて楽曲を定期的にアップしており、活動の本格化が待たれる。また、こちらもアイスランドのバンドであるロウ・ロアの次回作にも参加することが発表されるなど、自作・他作・コラボレーションを問わず、アイスランド・シーンにおけるJFDRの八面六臂の活躍は今後も続きそうだ。
JFDR – Instant Patience
RELEASE INFORMATION
ブラジル
NOW ON SALE
ジェイエフディーアール
AMIP-0103
White Sun Records
¥2,200(+tax)
日本流通盤のみボーナストラック1曲のDLクーポン付き
Track list
1. White Sun
2. Anew
3. Instant Patience
4. Wires
5. Higher State
6. Anything Goes
7. Airborne
8. Destiny’s Upon Us
9. Journey
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