パスカル・ピノンとサマリスは彼女のアーティスト活動の両輪として並行的に継続されている

JFDRがプロの音楽家としてキャリアをスタートさせたのは、サマリスよりもさらに時をさかのぼる2009年頃。当時まだ十代半ばの彼女が双子の妹と共に始めたデュオ、パスカル・ピノンが音楽家としての原点だ。

こちらはサマリスとは打って変わって、アコースティック・ギターの朴訥な響きと姉妹の愛らしいコーラスを基調としたフォーキーな音楽性。セルフ・タイトルのデビュー・アルバムがアイスランド国内で注目を集め、2作目として2013年に発表した『Twosomeness』はシガー・ロスやヨンシーの作品で知られるアレックス・ソマーズがプロデュースを手掛けることに。より洗練された音像を手にした同作はビョークやアントニー・アンド・ザ・ジョンソンズ、ルーファス・ウェインライトらとのコラボレーションでも知られる現代音楽家、ニコ・ミューリーの目にも留まり、「ニューヨーク・タイムズ」紙でも紹介されることになった。それから現在に至るまで、パスカル・ピノンとサマリスは彼女のアーティスト活動の両輪として並行的に継続されている。

昨年2016年には、サマリスの最新作『Black Lights』とパスカル・ピノンの3作目『Sundur』の2枚のアルバムを上梓。溢れ出んばかりの多作ぶりを見せる中、彼女が次なるプロジェクトとして用意したのが、自主レーベル〈White Sun Records〉からのリリースとなる、自身初のソロ名義JFDRのデビュー作『ブラジル』だ。ソロでの創作活動を始めるきっかけは、本作の共同プロデュースも手掛けているシャザード・イズマイリーとの出会いだという。

彼は、ローリー・アンダーソン、ルー・リード、トム・ウェイツ、ヨーコ・オノ、ボニー・プリンス・ビリーといった名だたる才能とコラボレーションしてきたマルチ奏者であり名プロデューサー。アイスランドにあるJFDRの自宅で開いたホーム・パーティーに居合わせたシャザード・イズマイリーが彼女の楽曲に興味を持ち、自身のスタジオでの録音を打診してきたのが始まりだったようだ。かくして本作はアイスランドからニューヨークにレコーディングの舞台を移して制作されることに。結果として、この『ブラジル』はサマリスとパスカル・ピノンで培ってきた多様な音楽性を融合させ、さらなる高みに押し上げたキャリア屈指の傑作に仕上がった。

ビョークも称賛。アイスランド音楽シーンの若き才能・JFDRとは JFDR_1-700x467