2年ぶりとなる日本ツアーで来日した幾何学模様（Kikagaku Moyo）の東京公演が、渋谷・WWW Xで10月5日に開催された。ゲストアクトには、新作『新しい人』をリリースしたばかりのOGRE YOU ASSHOLEが迎えられ、同ヴェニューWWW9周年・WWW X3周年のアニバーサリーを彩った。

世界各国で人気を博す幾何学模様は2018年に4作目のアルバムとなる最新作『Masana Temples（マサナ寺院群）』をリリース。本作ではマルチ・インストゥルメンタリストでジャズを起点としたフィールドで活躍するブルーノ・ペルナーダス（Bruno Pernadas）をプロデューサーとして招き、世界各地での経験を独自に吸収しオーディエンスの反応を楽しむ様子を想像させる、多様性に溢れた作品となっている。刺激的なインスピレーションを側に、異なった状況／場所／時間を逆手に取りながらサイケデリックミュージックを探求してきた幾何学模様は、生粋のロックファンだけでなく、ダンスミュージック界で一番の耳利きであるジャイルス・ピーターソン（Gilles Peterson）からも注目を集めている。そんな世界を旅するバンドの2年ぶりとなる来日公演だ。

当日、鋭い陽光が差し込む残暑にうってかわり、夕方からは秋めいた空気が心地良く、開演時間の18時にはほどよいコンディションに。チケットはソールドアウトしており、会場は満員。BGMとしてかかるアンビエントに耳を傾け各々が思索にふけるなか、サイケデリアの轟音が方向感覚を狂わせはじめる。

最初に登場したのはOGRE YOU ASSHOLE。バンドは8枚目のアルバム『新しい人』を9月にリリースしたばかりだ。

ライブ用にアレンジされた“黒い窓”からライブがはじまると、煌びやかなギターの音色に惹きつけられ、パーカッションでテンポをキープしたまま新作よりダンサブルな“朝”へ。徐々にヒートアップしていき、反復するアンサンブルにノイズが覆い被さる。そして続く“さわれないのに”では『新しい人』の艶っぽい世界観を拡張し、夢を見るかのようなまどろみが身体を支配していく。

代表曲のひとつ“フラッグ”では、唸るベースラインと民族的なドラムからうねるような展開へ。日本屈指のライブバンドと呼ばれる所以が一瞬でわかるダイナミズムある楽曲から、たたみ込むようにOGRE的ファンク“見えないルール”でフロアを沸かせる。最後は定番曲“ロープ”で50分強のステージを終えた。

OGRE YOU ASSHOLEは11月4日（月）、六本木・EXシアターでリリースツアーファイナルを迎える。『新しい人』の世界観は音源のみならず、ライブでの伸張も含めて味わっていただきたい。

続いて登場したのは、幾何学模様。リーダーのGo Kurosawaがステージ中央のドラムセットの前に着席すると、メンバーはお互いを確認しあうように彼を取り囲んでいく。バンドがなだらかにインプロヴィゼーションをはじめ、次第にベースラインが曲の骨格を強調する。糸を通すような繊細なギターでじんわりとフロアを温めていくと次の瞬間、幾何学模様印の変拍子と轟音がオーディエンスを驚かせた。OGRE YOU ASSHOLE同様、幾何学模様の音は視覚的で、頭の中であるイメージを描いていくよう。その精神世界は静謐。ここですでに始まりから15分ほど経過していたことに、自分の感覚を疑ってしまった。それほどに没頭してしまっていたのだ。

パーカッションとドラムが一定のダンサブルを保ちながら”Kogarashi”へ。ミニマリズムと哀愁を感じるギターリフ、メンバーのステージングが異様な世界へと感覚を引っ張っていく。ワウの効いた陶酔するようなシタールとダイナミックな展開が特徴的な“Tree Smoke”ではアリゾナ州のような荒野を彷彿させた。

Kurosawaがアコギを手に“Old Snow, White Sun”を披露すると、MCでは、2年ぶりの日本公演でホームに帰ってきたような気持ちだと語る。アコースティックセットで続くのは“Cardigan Song”。ファルセット・ボイスと浮遊感溢れるサウンドをしっとり聴かせると、最新作より“Entrance”で再びバンド編成に。ファズの効いたギターが空気を包み込んでゆくと、同作より“Dripping Sun”ではバンドならではの変拍子で、オーディエンスから大きな歓声が上がる。さらにその勢いを加速させる、締めくくりにふさわしい“Gatherings”で本編は終了した。

バンドはアンコールにも応え、柔らく表情豊かな“Nazo Nazo”、インド音楽とサイケデリック・ロックを見事に融合させた名曲“Street Of Calcutta”のカバーで終演となった。次はぜひ野外で観てみたい。