ここ3年ほどで若いリスナーを中心にファンを増やしている、EDMのサブジャンルのひとつ、トロピカル・ハウス。15年以降ポップ・シーンにもその要素を取り入れた楽曲が増えたことで、このジャンルはいよいよ16年、クラブ・シーンを越えて大きな人気を獲得していきそうな雰囲気です。今回はそんなトロピカル・ハウスの歴史や魅力をおさらい。イマドキ男女への街頭アンケートも加えることで、注目の新ジャンルに迫ってみましょう!

そもそも、トロピカル・ハウスって何?

トロピカル・ハウスのオリジネイターと言われているのは、オーストラリア出身のプロデューサー、トーマス・ジャック。「トロピカル・ハウス」というジャンル名は、彼が12年頃にSoundcloud上で発表した楽曲につけたタグが、その意図を越えて広がったものでした。

Thomas Jack – Rivers (feat. Nico & Vinz)

とはいえ、本格的に人気に火が付き始めたのは、北欧ノルウェー屈指の音楽都市ベルゲン出身のプロデューサー、カイゴが登場して以降。6歳でピアノを始め、15歳からDJとして活動をスタートさせたカイゴは、13年からリアーナやジェイムス・ブレイク、エド・シーラン、ザ・エックス・エックスらのリミックスをSoundcloudで続々発表。14年にコンラッド・スーウェルを迎えた“Firestone”を発表すると、この曲はノルウェー国内チャートの1位を獲得し、YouTubeでも現在までに2億4,000万回以上の再生数を記録しています。

Kygo – Stay ft. Maty Noyes

Kygo – Firestone ft. Conrad Sewell

以降もヒット・シングルを連発したカイゴは、15年に大型フェス、<ウルトラ・ミュージック・フェスティバル>のオフィシャル・アンセムを担当。同年12月にはエレクトロニック・アーティストとして初めて、母国ノルウェーで開催されたノーベル平和賞のコンサートに出演し、自身の楽曲に加えてアーハとのコラボレーションも披露したことも話題に。単独公演でも、キャパ18,000人のNYのバークレイズ・センター公演を即ソールドアウトさせています。

KYGO – STAY- feat. MATY NOYES – The 2015 Nobel Peace Prize Concert

A-HA feat KYGO – TAKE ON ME – EXCLUSIVE – The 2015 Nobel Peace Prize Concert

トロピカル・ハウスへの注目は、00年代中盤以降のフェスバブルとリンクする形で盛り上がったEDMのパーティー・ブームがひと段落したことが関係しています。実際、このジャンルの楽曲の多くは、四つ打ちのキックが大音量で鳴り響くビッグルーム系のEDMとは異なるBPM100から120前後のややスロウなビートを持ち、サウンドプロダクション的にはディープ・ハウスが主なルーツ。そのためEDMの肝でもあるド派手なドロップ(サビに当たる部分)がなく、南国のリゾート地を思わせる清涼感溢れるシンセやビートを全編にわたって広げています。つまりはビーチで騒ぐというよりも、浜辺で肩の力を抜いてまったりと踊っているような雰囲気。たとえばEDMのトップスターのひとりとして知られるゼッドの楽曲と比べてみると、その違いが分かりやすく伝わるはずです。

Zedd – Clarity ft. Foxes

カイゴの活躍を追い風にして、現在ではジェイソン・デルーロ&ジェニファー・ロペスともコラボを果たした同じくノルウェー出身のマトマや、イギリスのアレックス・アデア、オランダのサム・フェルド、トラップ~フューチャーベース界隈での評価も高いサンバーンといった精鋭たちが登場。他ジャンルのDJ/プロデューサーもトロピカル・ハウス調の楽曲を発表し、16年には日本でもトロピカル・ハウスに特化した国内初の大型野外イベント<トロピカルディスコ>が開催。ここにはアレックス・アデアも出演していました。

Matoma – Feeling Right (Everything is Nice) feat. Popcaan & Wale

Alex Adair – Heaven

Sam Feldt – Shadows of Love feat. Heidi Rojas

SNBRN feat. Kerli – Raindrops

OMI – Cheerleader (Felix Jaehn Remix)

Steve Aoki & Felix Jaehn – Can’t Go Home feat. Adam Lambert

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