■ アメリカ制覇も視野に入れた3rdアルバム『シーザス』で完全復活!!

度重なる音楽業界復帰のウワサが真実味を帯びてきたのは、リリーの“Who’d Have Known”をサンプリングしたT-ペインの“5 O’Clock”(11年)のヒットや、12年にマンチェスター北部のヒートン・パークで行われたストーン・ローゼズの復活ライヴで、前座を務めたプロフェッサー・グリーンのステージにリリーがサプライズで登場し、10年の共演ナンバー“Just Be Good to Green”を披露したこと、そしてピンクの新作『トゥルース・アバウト・ラヴ』(13年)に収録されたスカ・ポップ調のナンバー“True Love”にコーラスとして客演したことだ。誰もがいよいよ復活か!? と期待した矢先、「I’m coming back, bitches(あたし戻ってくるから、ビッチども)」と、ツイッターで堂々のカムバック宣言。

P!nk -“True Love ft. Lily Allen”

復帰第一弾シングルとなったのが、活動休止中のUKロック・バンド、キーンのカヴァー曲“Somewhere Only We Know”だ。この曲はイギリスのデパート「ジョン・ルイス」のクリスマス・キャンペーン・ソングに起用され、全英チャート3週連続1位の大ヒット。

Lily Allen -“Somewhere Only We Know”

続いて、“ビッチ”を72回も連呼したビッチのためのアンセム“Hard out Here”をリリースすると、黒人ダンサーを多数従えたミュージック・ビデオが「人種差別的だ」とSNSで大炎上。彼女を擁護するアーティストも大勢いたが、一連のバズもきっと想定内だったのだろう。すべての御膳立てが揃った今年の5月、敬愛するカニエ・ウェストへのトリビュートとして、カニエの『イーザス(Yeezus)』(13年)をもじった最新アルバム『シーザス(Sheezus)』を遂にリリース。

Lily Allen -“Hard out Here”

今作もグレッグ・カースティンがほぼ全編で関わっており、表題曲の“Sheezus”ではケイティ・ペリーやリアーナ、ビヨンセ、レディー・ガガ、そしてロードといったポップ・スターたちをリングに上げ、《試合の流れは変わってる/ただ復帰してマイクに飛びついて/同じことをやればいいわけじゃない》と自らを鼓舞してみせる一方、《ディーヴァに2番目はふさわしくない/あの王冠を私にちょうだいよ、シーザスになりたいの》なんて彼女らしいパンチラインも飛び出してくる。テイラー・スウィフトの“We Are Never Ever Getting Back Together”を手がけたシェルバックによるプロデュースの“Air Balloon”や、自分と夫の関係をビヨンセ&ジェイ・Zになぞらえた“Close Your Eyes”など、客観的な視点も身に付けたリリックの切れ味/面白さは今なお健在。徹底してアメリカのマーケットを意識したR&B寄りのサウンド・プロダクションにも、リリーが復帰にかける想いのガチっぷりが伝わってくるというものだ。

Lily Allen -“Air Balloon”

ゼロ年代後期とは打って変わって、今やフィメール・シンガーは群雄割拠の戦国時代に突入している。決して短くないブランクを挟んだリリー・アレンが再びシーンの最前線に返り咲くためには、あと一歩も二歩も「攻める」スタンスが重要になってくるだろう。二児のママとなった彼女の「ありのままの」姿を、ぜひ1月の来日公演で見届けたい。

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