騒がせ歌姫といえば、ちょっと昔ならブリトニー・スピアーズ、最近ではマイリー・サイラスの名前が真っ先に思い浮かぶところだが、「元祖ネット世代」の顔だったリリー・アレンの存在も忘れちゃいけない。09年に突然の引退宣言、結婚〜出産を経て主婦業に専念していた彼女が、今年5月、自身3作目となるアルバム『シーザス』を引っさげてカムバック。来年1月末には約6年ぶりの日本公演を予定しており、未発売音源・映像を追加した同アルバムの来日記念盤リリースも決定した。この絶好のタイミングで、いま一度リリー・アレンの来歴を振り返っておこう。

目次:
音楽系SNS「MySpace」から誕生した、新世代のポップ・アイコン
2ndアルバムでフィメール・シンガーの頂点へ。しかし、突然の引退宣言
アメリカ制覇も視野に入れた3rdアルバム『シーザス』で完全復活!!
おまけ★女帝リリーの辛口語録集

■ 音楽系SNS「MySpace」から誕生した、新世代のポップ・アイコン

英国・ロンドン生まれの現在29歳。コメディアン/俳優のキース・アレンを父親に持ち、母親のアリソン・オーウェンは映画プロデューサーという芸能一家に生まれたリリーだが、その人生は波瀾万丈だ。素行不良で13回も転校や退学を繰り返した挙句、15歳で学生生活からドロップアウト。家族と一緒に訪れたイビザのレコード屋でアルバイトをしていた頃に当時のマネージャーと出会い、真剣にアーティストとしての道を志すようになる。自身のルーツでもあったスカ、パンク、レゲエといった要素を取り込んだオリジナル・ソングを次々と書き溜め、05年11月には音楽系SNS「MySpace」(懐かしい!)で自身のアカウントを開設。そこでアップロードされたデモ音源は瞬く間に100万回を超えるビュー数を記録し、同時に立ち上げたブログで日々情報を発信、セレブから同業のミュージシャンまで遠慮なく叩きまくる、歯に衣着せぬ毒舌も実に痛快だった。

500枚限定の7インチ“LDN”を経て、翌06年にはデビュー・シングル“Smile”を発表。エッジの効きまくったトラック、キャッチーでアンニュイな歌声の素晴らしさはもちろん、自分が浮気してフッたくせに、後からヨリを戻そうとしてくる元カレに復讐、そのミジメな表情を見てあざ笑う……という辛辣な歌詞が同世代の女性たちから絶大な支持を集め、全英チャート1位を獲得した。

Lily Allen -“Smile”

同年リリースの1stアルバム『オーライ・スティル』では、元カレへのDisに混じって弟のアルフィー(現在は俳優として活躍中)まで格好の餌食にされてしまったように、赤裸々で開けっぴろげな言葉の数々は“女性版ザ・ストリーツ”とも称され、男性リスナーにとって耳に痛い内容も少なくない……。結果的に全世界250万枚以上のセールスを記録し、<グラミー賞>にもノミネート、一躍時代の寵児となったことはファンならずともご存知だろう。ヴィンテージのワンピースにごっついバッシュ、蛍光色のメイクアップ、そして奇抜なアクセというファッションも多くのフォロワーを生み、11月には渋谷のClub Asiaで行われたショーケース・ライヴのため初来日。ファンの女のコたちを招集して、代表曲となった“LDN”の東京バージョンも撮影されるなど、当時のリリー・フィーバー(ゴシップ含め)は誇張抜きに凄まじいものがあった。

Lily Allen -“Alfie”

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