全セルフプロデュースの「初期3部作」を経て発表した前野健太キャリア4枚目『オレらは肉の歩く朝』の発売記念ツアーファイナルは4月21日(日)恵比寿リキッドルームにて行われた。今回はプロデューサーを努めたジム・オルーク含めレコーディング中に結成されたという「前野健太とソープランダーズ」(ジム・オルーク、石橋英子、須藤俊明)という構成でのライブであり、前野以外のメンバー全員は各パートに居座らず、石橋英子はドラムとキーボードをいったりきたりしジム・オルークもギターのみならずドラムもたたけばベースも弾いたり、須藤俊明も同様、曲によってくるくると楽器を入れ替えていていたことが非常に印象的である。

ソープランダーズによるThe Knack“My Sharona”に始まり前野が登場すると、股間からコカコーラを取り出すパフォーマンスとともに始まった“国歌コーラン節“。この日のセットリストはほとんどアルバム通りの曲順で、新曲も交えながらこれまでの前野のキャリアをなぞるようなものになっていた。“ジョギングしたり、タバコやめたり”からはもったりとしたジャジーで官能的にアレンジがされ、それに合わせた赤い照明に照らされた前野が実に格好よく、コーラを飲む仕草ひとつとってもまるで映画のワンシーンを思わせたほどだった。本編ラストの“街の灯り”では照明が落とされ前野の持つペンライトのみが視覚の頼りになった。客席にまで下り暗闇の中ライトを振り回わし暴れまくる前野の姿を見ていると、元々メッセージ性高いこの楽曲もこうしたパフォーマンスによってさらにダイレクトに伝わってくる。
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アンコールではカジュアルなスタイルにチェンジし、バックにデヴィドボウイたち(pop 鈴木、大久保日向、吉田悠樹)らを連れ代表曲でもある“コーヒーブルース“、“天気予報“を披露した。そして2度目のアンコールでは再びソープランダーズらと登場しCD「トーキョードリフター」でも石橋英子とデュエットしている “ファックミー”を演奏後、未発表曲“ばかみたい“と出来立ての新曲“愛はぼっき“で締めくくった。最後は本日参加した全メンバー総勢10名がステージに上がり挨拶。数曲のみや曲の場面場面にしか参加しなかったメンバーも全員同じように大切に紹介する前野が素敵だ。まるでショーのカーテンコールのようにオープニング同様The Knack“My Sharona”の中、前野が退場し幕を閉じた。

この日のライブは、その場ひと時の感動に終わらない完成された芸術性と、同時にライブ空間の可能な限りの挑戦、そしてそれに伴う偶然性が顔をのぞかせる、そんなさまざまな要素が見事に混在した魅力溢れる空間であったように思う。もう前野健太さえいればそれでいい。勝手ながらこの日あのステージに立ち会わなかった全員に同情する。それくらい最高のステージだった。

text by asako fujieda

本日より『オレらは肉の歩く朝』アナログ盤の発売が開始。チェック必須の傑作です!

Release Information

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Artist:前野健太
Title: オレらは肉の歩く朝(アナログ盤)
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PEJF-1071 cap-171
¥2,730(tax incl.)
※ジャケット・歌詞付き
※初回限定生産商品
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