MONDO GROSSOとしては14年ぶりの新作について〜<フジロック>出演

MONDO GROSSOとして14年ぶりの再始動

20数年にわたるキャリアを築き、近年ではDJ、プロデューサーとしての活動がメインになっていた大沢伸一から、突如という表現もあながち外れてはいないであろうMONDO GROSSOとして14年ぶりの再始動が今春アナウンスされた。

さらにその第一弾として解禁された“ラビリンス”のピアノ・ハウスをベーシックに持ちながら大沢自身が弾くごくごくさりげないギターリフがSE的に鳴り、かねてよりボーカリストとしてまっすぐな歌声に惹かれるリスナーも多い満島ひかりのイノセントな声。それらが融合したとき、2017年に見事に再生した大沢の感受性に感銘を受けたリスナーは、往年のファンのみならず多かったに違いない。そこにあったのはかつておしゃれでタフで、アグレッシヴにポップ・ミュージックを切り開くスタンスというよりは、もっと繊細で、しかし世界で同時多発している、生音とエレクトロ、人間と機械の境界線が溶け出すような繊細でビビッドな表現だった。

MONDO GROSSO / ラビリンス

基本的に貫かれている儚さの中にある強さのようなものは、フィーチャーされているボーカリストが変わってもどこか同じニュアンスがあり、今回、特に新しいリスナーに訴求している齋藤飛鳥(乃木坂46)が歌う“惑星タントラ”では、大沢が少年期に聴いていたであろう、リリカルなギターと硬質なハウスが無菌室で鳴っているような時代をまたぐニュアンスがあり、しかもしなやかなベースは大沢自身が弾いている。

MONDO GROSSO / 惑星タントラ (Short Edit)

そして多彩な作詞家陣の中でも、この“惑星タントラ”と、やくしまるえつこが歌う“応答せよ”を手がけたTica α(やくしまるえつこの作詞家名義)のデジタル・ネイティヴ感とディストピア感は、大沢が今描こうとしている作品の世界観を強く補完している。また旧知のbirdが歌う“TIME”の1曲の中でのBPMとジャンルすら一瞬で変わるようなアレンジ、UAが歌う“春はトワに目覚める”でのミニマルでアブストラクトなトラックでむしろ歌がほとばしる感覚など、いずれもアルバムタイトルである“何度でも新しく生まれる”を各々のアーティストの個性と、細心の注意を伴った繊細な手さばきで表現してみせるのだ。

MONDO GROSSO / TIME

MONDO GROSSO / 春はトワに目覚める[Vocal:UA]レコーディングセッション

大沢は本作に寄せて『TOKYO DAY OUT』のインタビューでこう語る。

休止している間、日本の音楽シーンを見てきたわけですが、90年代に僕らが切り崩そうとしたJ-POPへの野心的な挑戦が滞っているのかなと。であれば、モンド・グロッソとしてその要素のひとつになりたいと思いました。日本とか海外とかをセグメントしないモンド・グロッソの視点で、敢えて日本語曲を作るという。リリックは日本語ですが、現在の日本の(音楽シーンの)ことは逆に意識しないようにして曲を作る、そういうバランスで

引用元:『TOKYO DAY OUT』:「乱雑さとカオス感の街、東京」–大沢伸一インタビュー

このスタンス、昨年、宇多田ヒカルが久しぶりに日本のポップスと向き合って作った『Fantôme』が、本人の意識の外で、言葉の壁を超えて世界中で共振した事実と、アプローチは逆かもしれないが、完成した作品から漂う世界との共時性という意味ではどこか通底するものを感じる。彼の過去の作品を知っていようがいまいが、この『何度でも新しく生まれる』という作品に触れたあなたの感覚をぜひ大切にしてほしい。本格的な再始動、そして多くの初見のオーディエンスが集まる<フジロック>でのアクトも、真新しい気持ちで受け止めることで、MONDO GROSSOの再生の物語もダイナミックな反応を得て回転し始めることだろう。

RELEASE INFORMATION

何度でも新しく生まれる

MONDO GROSSOとは何者なのか?満島ひかり、やくしまるえつこ、乃木坂46・齋藤飛鳥らを迎えた最新作『何度でも新しく生まれる』へ至る道筋 music_mondogrosso_2-700x623

2017.06.07(水)
MONDO GROSSO

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text by 石角友香