「ポスト・ダブステップ」。それは「ブリアル以降」の音を追い求めることを意味する。様々な試みがなされたし、今もまだなされている最中だ。例えば、スキューバはベルリンのミニマリズムへとアプローチしたし、R&Bやシンセ・ポップへと接近していったアーティストもいる。かつてラリー・レバンというレジェンドにある意味縛られたハウス・ミュージックをフランスの坊ちゃん(ダフト・パンク)が解放したように、このダブステップというジャンルをジェイムス・ブレイクが解放したことは興味深い。つまり、ここでもいわばシーンの脇道から出てきたものが新しい道標となり、新しい潮流を生んだのだ。
長く続く「ポスト・ダブステップ」の季節において、もう一組いち早くこのジャンルに新しい方向性を提示した者がいる。それが、先述のスキューバことポール・ローズが主催する〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉からデビューしたドム・メイカーとカイ・カンポスによるマウント・キンビーだ。2010年にリリースされたデビュー作『クルーックス&ラバーズ』はベースの効いたエレクトロニカとでも言うべきか、『メザニーン』期のマッシヴ・アタック、そしてエイフェックス・ツインやオウテカ的なアンビエンスをふんだんに備えたダブステップだった。この新しい快楽はすぐに目を付けられ、ジェイムスと並ぶ次代のエースと目された。
実はジェイムス・ブレイクは、マウント・キンビーの初期ライヴ・メンバーでもあり、「僕は、彼らのことを追いかけながら自分の流儀を編み出していった」というほどの影響を受けたらしい。昨今、圧倒的な存在感を示すジェイムスにマウント・キンビーも影響を受けたのだろうか。彼らは、2012年には名門〈Warp〉との契約を果たし、本作『Cold Spring Fault Less Youth(コールド・スプリング・フォルト・レス・ユース)』を仕上げてきた。そしてここでは興味深いことにジェイムス・ブレイク同様、ボーカルを思い切りフィーチャーしているのだ。しかもこれまでのサンプリングから生歌へと一気にシフトした。
二人の歌声をストレートに運ぶ冒頭曲“ホーム・レコーディング”や既にピッチフォークの「ベスト・ニュー・トラック」としてバズっている“メイド・トゥ・ストレイ”、さらにはBBCの「Sound Of 2013」にも選出されたキング・クルーを招聘した“ユー・トゥック・ユア・タイム”、“メーター、ペイル、トーン”と全編にわたってボーカルの存在が明らかに中心に据えられている。どれもとてもいい感じだ。ジェイムスはずばりシンガー・ソングライター・アルバムを作ったが、マウント・キンビーはバンド・サウンドみたいになっているのも面白い。中でも一番振り切っているのが“ブレイク・ウェル”。かなり昂揚感があり、完全にバンドの音に聴こえる。
なぜこの変化は起きたのだろう? 一義的には、ひとつには前作の成功によりパフォーマンスの場がクラブからコンサート会場やフェスティバルへと徐々に移行し、ギター、キーボード、パーカッションという編成での経験値の蓄積したこと。もう一つは、制作の場がベッドルームからスタジオへの移行したことも大きいのだろう。最終曲“フォール・アウト”のようにダイレクトにフロアに応える楽曲は残しつつも、温もりのあるオルガンや素朴な生のドラムスとボーカルのコンビネーションと、フレーズの反復だけでなく、ヴァース/コーラス/ヴァースの形式も援用した曲を聴くと、ますますバンドの曲を聴いているような感覚を覚える。かと言って、ただ楽曲のスタイルを変化させることが目的化した訳ではなさそうだ。これまでのスタイルを踏まえながら確信を持って今回のアプローチを選んだのだろう。
それを確かめるべくそんな彼らの最新のライブを5月5日(日・祝)にポルトガルはベレンにて観てきた。…というのは若干嘘で(笑)、ザ・XXが企画するお気に入りのロケーション(ポルトガルは世界遺産でもあるベレンの塔が開催地)でお気に入りのアーティストだけで構成する<ナイト&デイ>という素敵すぎるミニ・フェスティバル(詳しいレポートはまた別途紹介予定です。)に行ってきたのだが、幸運にもマウント・キンビーもそこにブッキングされていたという訳。バンドの出番はメイン・ステージの2番手で夕方6時過ぎとは言え、ユーラシア大陸最西端のこの国ではまだ外も明るく、時間も40分ほどと短め。観客もXX目当てが大半なので、皆ゆる~く流し見という海外のライブではよくある感じ。
今回もしっかりドラムを入れた3人編成。セットリストは、新作からの曲も織り交ぜたバランスの良い構成。やはりドムとカイがマイクを手にボーカル・パートを歌い込んでいたのは印象的だったが、まだまだぎこちなさが残るステージングで、成長の余地は大いに残ると思うが、そこは場数だろう。ただギターもガンガンに引き倒しているその様は、正に「バンド」という感じで、ある種の覚悟を改めて感じた。
ジェイムス・ブレイクはダブステップがインディー・ロックと親和性が高いことを図らずとも証明したが、マウント・キンビーの「バンド化」(?)が何を意味しているのかはまだはっきり分からないが、彼らはこの最新作をきっかけにまた更なる「その先」を見せてくれるんではないだろうか。
text&photo by Keigo SADAKANE
Mount Kimbie – “Made To Stray”
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