静岡県沼津市の「大中寺」を会場に、カルチャーフェスティバル<MUSO Culture Festival 2021>が開催された。同フェスは、当初、2/13(土)~2/21(日)に、ライブパフォーマンスやアートインスタレーションといった様々なリアルコンテンツが予定されていたが、緊急事態宣言の発令により、多くのコンテンツがオンライン開催へと移行された。
タイトルの“MUSO”とは、大中寺の開山であり、自然の眺望・景観を活かした庭園の造形でも知られる「夢窓疎石」より引用されており、風情ある寺院と禅の世界に触れながら、電子音楽やアートがシンクロする貴重な瞬間を体感出来るはずだった。非常に残念だが、昨年からいまだ終わりの見えない新型コロナウイルスのパンデミックの最中では仕方のないことである。厳しい状況下でも開催に至ったことへのリスペクトと、バーチャルの可能性を存分に感じさせてくれた同フェスのレポートをお届けしたい。
LIVE REPORT:
MUSO Culture Festival 2021
夢中空間
3Dカメラで空間をまるごとキャプチャし、ユーザーが自由自在に動き回ることができるテクノロジー「Matterport」を駆使し、出来上がったのが、仮想大中寺「夢中空間」だ。オフィシャルサイトから入場することが可能となっており、実際に大中寺を訪れているかのように、自由に動き回れる仕組みとなっている。
まるで現実と仮想の世界を自由に行き来しているようなゲーム感覚で楽しめる点も特徴だが、Yosi Horikawaが手掛けたバイノーラルサウンドを聴きながら、美しい景観とともに深い世界へと導かれて欲しい。同サウンドは、大中寺のエントランス、竹林、梅園、恩香殿の4カ所をそれぞれイメージして作られた貴重なオリジナル楽曲であり、「夢中空間」で聴けるサウンドは、4chごとそれぞれ設置した16発のスピーカーを通して、バイノーラルでフィールドレコーディングされたものである。
以下の<MUSO Culture Festival 2021>のオフィシャルサイトから今すぐ体感して欲しい。また、惣田紗希と佐藤夏実によるアートインスタレーションは、現在も観ることが可能となっている。希望される方は大中寺のオフィシャルインスタグラムへ問い合わせて欲しい。
MUSO Culture Festival 2021 HP
DJ KRUSH、Yosi Horikawa、ermhoi
DJ KRUSH、Yosi Horikawa、ermhoiの3組のアーティストが出演予定だったライブパフォーマンスは、事前に無観客で収録された映像が公開された。これまでにも京都などの日本の寺院を会場にエレクトロニックミュージックのイベントが多数行われてきたが、今世における最先端の文化である電子音楽が、何百年という歴史を誇る文化遺産の空間に流れ込む、これほど神聖で美しい共鳴は他にないと思っている。
同フェスでは、美しい本堂に太陽の光が差し込む中、神秘的に歌い上げるermhoiの圧巻のライブに始まり、恩香殿では、Yosi Horikawaが、鳥や虫の鳴き声、子供の笑い声、波の音といった癒しのエレメントと電子音を融合させたライブを披露し、夕暮れ時に静寂と癒しを与えてくれた。トリを務めたDJ KRUSHは、和を感じさせる様々なサウンドを織り交ぜたアンビエントから変幻自在なビートのアブストラクトなセットが厳かな夜の本堂に鳴り響いた。
ermhoi – Live at 大中寺 Daichuji / MUSO Culture Festival 2021
DJ KRUSH at 大中寺 Daichuji / MUSO Culture Festival 2021
Yosi Horikawa – Live at 大中寺 Daichuji / MUSO Culture Festival 2021
7アーティストによるスペシャルMIX
その他にも、泊まれる公園「INN THE PARK」にて開催予定だったアフターパーティーからは、出演予定だったKaoru Inoue、Chee Shimizu、ELLI ARAKAWA、Masaaki Hara、DJ Emerald、Hi-Ray、MORTSAFEの7アーティストによる禅の世界を想起させるスペシャルMIXが提供された。
日本人である私たちも”禅”と聞いて、その意味を正確に理解している人はきっと少ないだろう。筆者個人的にも一番参加したかったのが、「坐禅体験」である。目を瞑り、坐禅を組みながら瞑想することによって、雑念を追い払った状態で自身の内面と向き合うことが出来る究極のメディテーションなのではないだろうか?
Photo:Kenichi Yamaguchi (REALROCKDESIGN)
Kenichiro Moriya (REALROCKDESIGN)、Akane Kofuji
Text:宮沢香奈