今年8月に発表されたフォーブス誌によるDJの長者番付で5年連続1位を獲得し、<SUMMER SONIC 2017>のヘッドライナーも務めたカルヴィン・ハリスが、最新作『Funk Wav Bounces Vol.1』ではEDMを離れ、よりゆったりしたテンポで生音を生かしたファンクを鳴らしたのにも顕著な通り、ここ数年EDMシーンで活躍してきたアーティストたちは新たなサウンドに向かいつつある。

このムードは先日開催されたばかりの日本最大級のダンス・ミュージックの祭典<ULTRA JAPAN>のラインナップにも顕著。今年は会場に「LIVE STAGE」が登場し、ここにはアンダーワールドやポーター・ロビンソンなどに加えて、バンド形態のエンパイア・オブ・ザ・サンやCROSSFAITH、ギタリストのMIYAVI、SALUやKOHHらヒップホップ勢、そして水曜日のカンパネラなどが集結して、会場に多彩な音楽性を加えていた。

そう、EDMはブーム全盛期のビッグルーム・ハウス的なサウンドを後にして、より様々な音楽と結びつく時代――ポストEDMの時代に突入している。そうした時代を代表するユニットの一組として知られるシアトル出身のエレクトロニック・デュオ、オデッザ(Odesza)が、通算3作目となる最新作『A Moment Apart』を完成させた。

カルヴィン・ハリスや<ULTRA JAPAN>の変化にも通ずる。オデッザ ポストEDM世代の中でも唯一無二 odesza-pickup5-700x556

ODESZA – Line Of Sight (feat. WYNNE & Mansionair)

アーティストとして/レーベル・オーナーとして若手シーンをけん引する存在。

オデッザは米シアトルのハリソン・ミルズとクレイトン・ナイトによるプロデューサー・デュオ。自主制作でリリー・アレンの“22”やローカル・ネイティヴスの“Airplanes”、アリシア・キーズ“No One”やヤー・ヤー・ヤーズ“Cheated Hearts”などを使ったサンプリング主体の12年作『Summer’s Gone』で注目を集めると、AdidasやGoProとのタイアップを経て、<コーチェラ・フェスティバル>などに出演。

続く14年の2作目『In Return』では1作目で多用していたサンプリングに代わって外部ヴォーカリストを迎えて楽曲のスケール感を増すと、<エレクトリック・フォレスト>など多くのフェスでヘッドライナーを担当した。この9月からは2万人以上を収容するLAのステイプルズ・センターや、1万8千人規模のNYバークレイズ・センター公演などを含む過去最大規模のワールド・ツアーもはじまっている。

ODESZA – How Did I Get Here

ODESZA – All We Need (feat. Shy Girls)

同時に、彼らはスクリレックスの〈OWSLA〉などとともにDTM系の若手を擁して人気を博す新進気鋭のレーベル〈フォーリン・ファミリー・コレクティヴ〉のオーナーも務め、ここではルイス・フルトンやスウェーデンのカスボ、ジャイ・ウルフ、チェット・ポーターらをフックアップ。

中でもアメリカを中心に国籍/人種/性別の異なる幅広いメンバーが集うインターネット・コレクティヴ=ムーヴィング・キャッスルの初期メンバーとして知られるジャイ・ウルフは、16年の“Indian Summer”がSoundcloudだけで1000万回再生を超えるヒット曲になるなど注目を集めている。

つまり、アーティスト活動/レーベル運営の双方で次世代のエレクトロ・シーンを引っ張っているのが、このオデッザなのだ。

Jai Wolf – Indian Summer

Kasbo – World Away