ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(Oneohtrix Point Never・以下、OPN)の最新アルバム『Age Of』はもうチェック済みですか?
正直なところ、かなりとっつきにくい実験音楽のジャンルに区別されがちなOPN。彼の活動を調べても当たる情報はかなりネジが飛んでいます。ここで音楽遍歴を中心にOPNについてざっくりと振り返りましょう。
Oneohtrix Point Never
本名はダニエル・ロパティン。OPNはダニエルのソロ・プロジェクト。1982年7月生まれ(現在36歳)で出身はアメリカのマサチューセッツ州、親は音楽家(母親は音楽教師 / 父親はセミプロのキーボード奏者)で複雑な歴史の中に位置付けられるロシア系ユダヤ人。
彼の音楽経歴は多くのそれと似ていて、父親のコレクションにあったフュージョンやスティーヴィー・ワンダー、父親が持っていたシンセサイザーのRoland Juno-60が原点とのこと。
大学時代にのめり込み、これまでで一番聴いたレコードはマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの『Loveless』。「本当に良いアルバムだけど、歌詞を読んだら……。スティーヴィー・ワンダーみたいなんだけど、ソウルとファンクをスティーヴィーから抜きながら、さらに重苦しくナルシでヘロインにまみれていて……。クリスマスに両親が全然良くないプレゼントを置くのを見るような……。」という独特な感性が溢れ出ているエッセイをRed Bull Music Academy Dailyで読むことができます。
My Bloody Valentine – Soon (Video)
大学では文書館学(現在における記録史料類を収集・整理・保存・提供を行うための科学的理論・方法を研究する学問分野、とのこと)を学びながら、ニューヨーク・ブルックリンのノイズ音楽シーンでは革命児として注目を浴びていきます。
初期の活動(2007~2009)をまとめたシンセサウンド中心の『Rifts』(2009)は海外メディアから好評を得て、2010年には通算4枚目となるスタジオアルバム『Returnal』をジム・オルークが称賛したレーベル〈Editions MEGO〉からリリースし、ノイズ / アンビエント / ドローンなどアングラ音楽愛好者たちを唸らせました。
2011年には『Replica』を自身のレーベル〈Software Recording〉(2016年に閉鎖)からリリース、80s/90sのテレビCMの音をサンプリングするアプローチを巧妙に取り入れ、批評家からの評価から高評価を得ます。同年には、ヴィジュアル・アーティストのネイト・ボイス(Nate Boyce)とのコラボも生まれます(今回の来日公演で披露される最新ライブ「M.Y.R.I.A.D.」にもネイトは参加)。また、翌年にはティム・ハッカーと即興的に制作されたコラボアルバム『Instrumental Tourist』をリリース、多くのアーティスト達とコラボレーションしていくようになります。
Oneohtrix Point Never – Replica [OFFICIAL VIDEO]
2013年にはみなさんお馴染み〈Warp Records〉と契約を結び、6枚目のスタジオアルバム『R Plus Seven』をリリース。ライブでは多くのヴィジュアルアーティストとコラボし、作品のクオリティーのみならず、様々な話題を呼ぶことに。さらにソフィア・コッポラ監督の映画『ブリングリング』のサウンドトラックを作曲。
その翌年、突如解散を発表したデス・グリップスの代わりにナイン・インチ・ネイルズのツアーにサポートアクトとして参加し、コンテンポラリー・アート界では名を知らぬ者はいないMoMA PS1でネイト・ボイスとともにパフォーマンスを行うなど、活動の幅を広げていきます。
Oneohtrix Point Never Ray-Ban x Boiler Room 005 | Hudson Mohawke Presents ‘Chimes’ Live Set
2015年に7枚目のアルバム『Garden of Delete』をリリースし、映画『Partisan』の音楽も手がけます。そして2016年には、その年のベストアルバムとも名高いアノーニ(ANOHNI)の『Hoplessness』やシカゴのフットワーク/ジュークシーンの権威DJ Earlの作品に参加。UCLAのアーマンド・ハマー美術館で、OPNと彼のコラボレーターに焦点を当てたシリーズを展開します。
さらにサフディ兄弟監督の『グッド・タイム』をスコアし、カンヌ・サウンドトラック賞を受賞。イギー・ポップ(Iggy Pop)とのコラボも話題になりました。2017年8月に〈Warp Records〉からサントラをリリースすると、その10ヶ月後となる2018年6月には最新作『Age Of』を発表。FKAツイッグス(FKA twigs)と共にモーション・グラフィック小説を展開したり、年内にはデヴィッド・バーンとのコラボプロジェクトも予定しているとのこと。
The Pure and the Damned (Official Video from Good Time Soundtrack)
『Age Of』を聴いてみた
今年4月に行われたOPNの最新作『Age Of』の試聴会では、ハイレゾ音源が入ったプレイヤーをポケットに夜の新宿を歩き回るというもの。当日は少し肌寒く、雨がぱらついており、水面にネオンの光が反射いたりと、幻想的な空間が演出されていました。爆音でOPNを聴きながらおどろおどろしいはずの風景を見回すと、なぜか体が軽くなったりと、その効果はまるでデトックス(?)。その感覚は、サウナと少し似ているかもしれません。9月12日(水)のライブの前に、OPN散歩をしておくべきでしょう。
周りの風景も取り込むOPNの音楽。映画音楽を手がけることが多いように、映像とは切っても切れない関係があるに違いありません。学術的な対象にされるOPNの表現活動ですが、今回のライブプロジェクト「MYRIAD」では舞台的な感覚も取り込み、数名のダンサーも登場します。どのようなパフォーマンスになるのでしょうか……?
ONEOHTRIX POINT NEVER “M.Y.R.I.A.D.” 2018.09.12(WED) @ O-EAST / SUPPOT ACT: 真鍋大度
EVENT INFORMATION
ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー来日公演
2018.09.12(水)
OPEN 19:00 / START 19:30
O-EAST
ADV ¥6,000(1ドリンク代別)
※未就学児童入場不可