「歴史上の偉人たち」に捧げた新作は、
2人だけの空間で作り上げた“原点回帰”作

そして約5年ぶりのオリジナル・アルバム『ナイン・デッド・アライヴ』では、ここ数年で視野を広げた彼らが、ふたたび「2人だけの空間」に原点回帰。レコーディング前にツアーで楽曲を磨き上げ、ゲストを一切招かずスタジオでライヴでの熱量をそのまま反映。まるでバスキングをしていた初期の彼らに戻るかのように、2つのギターだけで生み出すスリリングな緊張感を盤いっぱいに詰め込んでいる。

「小さめのライヴをイメージして演奏したわ。私たちがみなさんの前で演奏してるかのようなギター・サウンドを届けたいと思ったの」(ガブリエーラ)。と同時に、ラテン~サルサ色は減退。「僕たちがこれまで続けてきた音楽から離れたかったんだ。今回の曲は、リフ重視の正統派ロックだよ」(ロドリーゴ)。「原点に立ちかえって2人だけでレコーディングしたけど、昔より演奏の幅は広がってると思うわ」(ガブリエーラ)。2人はその上で、カルロス・サンタナやジミ・ヘンドリックスといった自身のルーツとなる音楽家へのオマージュを並べた前作『格闘弦』のコンセプトを拡大して、楽曲ごとに異なる「歴史上の偉人たち」への賛歌を制作。2人のカラーが同等に出る作品を目指し、ロドリーゴが4人の男性(現代へと繋がるモダン・ギターの基礎=ダイナミック・レンジを開発したアントニオ・デ・トーレス・フラドやドストエフスキー他)を、ガブリエーラが4人の女性(ノーベル文学賞を受賞したガブリエラ・ミストラルや17世紀の王妃など)をチョイス。そこに「自然と動物」に寄せた楽曲を加えた9曲によって、タイトルは『ナイン・デッド・アライヴ』命名された。「今回僕たちは9人の歴史上の偉人を選んだ。人類に大きな影響を与えた称賛されるべき人たちだ。この世を去った9人だけど、彼らの魂は今も生き続けてる」(ロドリーゴ)。これはオーバーダブや宅録的なループを使わず、2人のギターで人間の感情を表現し続けてきた彼ららしいテーマと言えるんじゃないだろうか。

超絶ギター・デュオ、ロドリーゴ・イ・ガブリエーラ。最新作は2人だけの“原点回帰”作 music140526_ryg_jk

ナイン・デッド・アライヴ

自然岩を生かした会場にロドガブの今をぎゅっと凝縮
豪華ゲスト参加の『レッド・ロックス』

今回WOWOWで放送される『ライヴ・アット・レッド・ロックス』は、そんな彼らが『エリア52』のツアー公演のひとつとして、13年の7月28日に米コロラド州デンバーのレッド・ロックス・アンフィシアターで行なったライヴ。つまり、『ナイン・デッド・アライヴ』用の曲をステージ上で試していた時期の映像で、新作のデラックス版DVDに5曲のみ収められた公演の完全版だ。自然岩を生かした傾斜に観客が陣取る会場を捉えたカメラワークは、客席側から2人を見下ろしたり、ステージ側から観客席を見上げたりと、高低差が特徴的な会場ならではの臨場感を真空パック。中でも、ステージ側から空に向かってせり上がった壁のように見える観客の姿は圧巻の一言だ。また、コロラド交響楽団やアンダース・オズボーンといったこの日ならではの参加ゲストは、50人を超えるチェロ、ヴィオラ、バイオリンなどでロドリーゴ・イ・ガブリエーラの新たな一面を引き出していく。そして『ナイン・デッド・アライヴ』用の楽曲では一転、たった2人だけでステージ前方や中央にぎゅっと集結。ギターを打楽器のように使うガブリエーラのプレイに湧き起こる拍手、ステージ前方に出て超絶な指さばきを見せるロドリーゴの感情溢れるプレイ。もしくは2人が向き合って、距離感を確かめるようにフレーズを繰り出していく様子のスリリングな雰囲気など――。活動初期から大切にしてきた彼ら本来の姿も、ここには凝縮されているのだ。

様々なアーティストと異種交配を繰り広げた近年の彼らと、2人だけで原点回帰した新作の雰囲気とが両方楽しめるこのライヴからは、ロドリーゴ・イ・ガブリエーラの人気が世界に広がっていった理由がきっと伝わるはず。そう、キャリアの最初期に街角で2人の演奏に興奮した沢山の人々と同じように、ファンならずとも2人の魅力に引き込まれてしまうこと間違いなしの映像になっている。

(text by Jin Sugiyama)

Program Information

オフビート&JAZZ ロドリーゴ・イ・ガブリエーラ ライブ・イン・コロラド
放送日:2014.06.10(火)21:00
放送チャンネル:WOWOWライブ

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Release Information

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