ラメンコ、サルサ、ロック、へヴィー・ロックなどありとあらゆる音楽を飲み込んで、ガット・ギター2本のみで様々なリズムや激情を表現するメキシコ出身の超絶ギター・デュオ、ロドリーゴ・イ・ガブリエーラ。今年は4月にオリジナル作品として約5年振りの新作『ナイン・デッド・アライヴ』をリリースし、12年以来となる来日公演が待たれるばかりだ。そんな気運を反映してか、WOWOWでも13年7月28日に行なわれたライヴの映像作品『ライヴ・アット・レッド・ロックス』の放送が決定! Qeticではこの機会に2人のキャリアを紐解きつつ、新作や『ライヴ・アット・レッド・ロックス』の魅力をまとめてみました。

13万円だけを元手にダブリンへ移住! 
無一文で始めた路上のバスキングから世界の人気者に

もともとメキシコでスラッシュメタル・バンドとして活動していたロドリーゴ・サンチェスとガブリエーラ・クインテーロは、「新しいスタイルの音楽を目指したい」と制作していたアルバムをお蔵入りにし、1000ポンド(約13万円)だけを手にアイルランドのダブリンに移住。すぐさま一文無しになるも、路上で行なっていたバスキングの噂がミュンヘン、バルセロナなどヨーロッパ各地に広がり、02年にダブリンのインディー・レーベル〈ルビーワークス〉から『re-foc』でアルバム・デビュー。06年の『激情ギターラ』で世界デビューを果たすと、これが40万枚を超えるヒット作になり、続く09年の『格闘弦』でその評価を確固たるものにした。また、流麗なピッキングでメロディーを奏でるロドリーゴと、ギターを叩くパーカッシヴな奏法でリズムを担当するガブリエーラの超絶テクを駆使したライヴの魅力は、08年の『激情セッション』や11年の『激情セッションⅡ』に音源としてもパッケージ。日本でも08年の<フジロック・フェスティバル>で3日間の出演を発表したことが話題になった他(結果としては、2日目のステージは機材トラブルで中止)、10年にはホワイト・ハウスでオバマ米大統領の前で演奏。同年にはイギリスでも<グラストンベリー・フェスティバル>のウエスト・ホルツ・ステージ(旧ジャズ・ワールド・ステージ)のヘッドライナーを務めるなど、各地で行なったライヴの評判でその人気はさらに拡大。そうした状況を受け、11年にはディズニー映画『パイレーツ・オブ・カリビアン―生命の泉―』のサウンドトラックで映画音楽界の巨匠ハンス・ジマーとコラボレーションを果たすと、12年の『エリア52』ではキューバン・オーケストラと共演して自身の楽曲をセルフ・リメイク。ロドリーゴ・イ・ガブリエーラの音楽は、ストリートのバスキングから一躍世界に広がっていった。

 ライヴ映像作品『ライヴ・アット・レッド・ロックス』放送決定!

次ページ:「歴史上の偉人たち」に捧げた新作は、2人だけの空間で作り上げた“原点回帰”作