この春、「Honda NEW SHUTTLE」のテレビCMで頻繁に流れていた、アコギの上に乗るサーフミュージック性のあるアーシーなメロディと歌声。そして、それを抜けて現れる解放感溢れるダイナミズムを擁したサウンドとキャッチーなフレーズ。CMでは残念ながらここで終わっているが、この続きや、この音楽性の正体や実態を知りたかった方も多いのではないだろうか?
その歌の主こそ、Survive Said The Prophet(サバイブ・セッド・ザ・プロフェット)、通称・サバプロ。楽曲は「Right and Left」で、昨秋発売された彼らの4thアルバム『s p a c e [ s ]』からのナンバーだ。
Survive Said The Prophet – Right and Left | Official Music Video
Survive Said The Prophet
このトピックに関わらず、ここにきてこの“サバプロ”の名を頻繁に目や耳にする機会が増えたと実感している方も多いのではないだろうか?それもそのはず。今の彼らはジャパニーズロック界の上昇株の一つ。この春から夏にかけても、多数の著名なロックフェスやイベント各種にも名を連ね、昨年は人気アニメ劇場版「コードギアス 反逆のルルーシュⅢ 皇道」の主題歌に彼らの楽曲「NE:ONE」が起用されたり、フジテレビ「ノイタミナ」TVアニメ『BANANA FISH』では第一クールのオープニング曲に「found&lost」が、第二クールのエンディング曲として「RED」とそれぞれ彼らの楽曲が起用されたりと、これらを通しても多くの人の耳にその音楽は届いていった。また、今夏からNHK総合他にて放送予定のTVアニメ『ヴィンランド・サガ』のオープニング曲を彼らの新曲「MUKANJYO」が務めるとのニュースも記憶に新しい。
そんなサバプロの実態を伝えるべく、以下の5つのトピックから彼らの魅力を浮き彫りにしていこう。
①バイリンガルのボーカルを含む5人のメンバーの魅力
②あくまでもライブ至上主義の活動姿勢
③まるでアンセムのようにみんなが一緒に声を合わせられるライブ
④ポスト・ハードコアに留まらず様々な音楽性を取り込む独自性
インターナショナルスクール出身のボーカルを含む5人のメンバーの魅力
まずはサバプロの歴史から紐解いていこう。結成は2011年。ツインギターを含む5人組ロックバンドだ。その音楽性はメタルコアやポスト・ハードコア、スクリーモといったいわゆるラウドロックにカテゴライズされがちだが、実際はエレクトロの要素やメロウな音楽性、ソウルフルさやR&B、はたまたサーフロック等のスローミュージックな音楽性も交え、ラウドロック系のみでは括れない音楽性も魅力的だ。
ボーカルはYosh。バイリンガルである彼のその確かな発音から発せられる歌は特に英語詞の際に際立ち、中でもメロウやミディアムな曲にてよりその本領を発揮する。ギターは2人。情景的で景色観溢れるギターソロを始め、主にギターのメロディアスな部分を担うTatsuyaが下手を任され、疾走感やハードエッジで重厚感のあるギターが魅力の香港出身のIvanが上手を背負っている。
そして、時折アンガーや激情系のグロウルなシャウトを織り交えているのが、楽曲にベースにて躍動感を寄与しているYudai。2フロアタムというシンプルで独特なドラムセットでハードさから軽やかさまで様々なドラミングで魅了するShowの5人からなる彼ら。これまで配信限定や会場限定も含め12枚のシングルと4枚のアルバム、数多くのオムニバス盤に参加してきた。
あくまでもライブ至上主義の活動姿勢
現在、今年3月より開始し、全都道府県をわずか3ヵ月で回るという驚異的な全国47都道府県ツアー<Now more than ever Tour>を敢行中の彼ら。間もなく終盤を迎える同ツアーは、これまでにも増して各所かなりの大盛況を収めていると聞く。実際、彼らのライブ後はなにかとてつもないバイタリティや活力を与えてくれるものがある。通例、この手のバンドの多くが爽快感や解放感を味合わせてくれるタイプに対し、彼らは後述の楽曲のアンセム性やダイナミズムを擁した曲が多いことも手伝ってか、ライブ後には何かとてつもない高みへと誘われていたり、明日へと向かっていく確かな活力を与えてくれる。それは毎度の動員増加にも表れており、ライブやツアー毎に全国各地にシンパやファンを増やし続けている。既に今年2月にはマイナビBLITZ赤坂にて満場の中、そう遠くない未来に武道館でのライブも視野に入れていることも報告。満場からは「その時は俺たちも行くゾ!!」との呼応代わりのステージに向けての大歓声も頼もしかった。
Survive Said The Prophet – found & lost | Official Music Video
まるでアンセムのようにみんなが一緒に声を合わせられるライブ
彼らのライブでの魅力の一つは、何といってもそのライブが生み出すステージ/客席関係なし、共有が生むが故の一体感と、まるで自分の歌のように集まった多くの者が声を合わせるアンセム的なシンガロングにある。実際、彼らのライブでは多くの場面でステージから客席にマイクが向けられ、それに呼応するように、雄々しく、気高く、誇らしく、例えライブハウスクラスの会場であったとしても、まるでスタジアムや巨大なライブ会場、フェスのような雄大でダイナミズムたっぷりの大合唱が楽しめ、集まった者たちに力を与えている。その力強さたるや。まさに彼らのライブは演者/観者が共に空間を作り出し、物語を紡ぎ合っていっている実証と体現と言っても過言ではないほどだ。特にニューアルバム『s p a c e [ s ]』では、その辺りのアーシーさやダイナミズムが所々で見受けられ、大会場やフェスにて彼らが歌いプレイしているシーンを夢想させた。
ポスト・ハードコアに留まらず様々な音楽性を取り込む独自性
彼らの主な音楽性はいわゆるラウドロック。ポスト・ハードコアやスクリーモにカテゴリされることが多い。パブリックイメージでは、そのジャンルではあるだろうが、彼らがそこに留まっていない。それこそがR&Bやスムーズな黒人音楽へのオマージュを感じさせ、ブレンドさせている音楽性に他ならない。その歌心やちょっとスウェイなビートが他のポスト・ハードコア・バンドたちとは一線を画させる。出自こそラウドロック性が色濃かったものの作品毎にそこにエレクトロやメローさ、歌を聞かせたり浸らせたりする曲も現れ出し、上述の最新アルバム『s p a c e [ s ]』では彼らの幅や視野を広げることに成功している。
Survive Said The Prophet – S P I N E | Official Music Video
現在のスタンスのまま更にスケールアップしていける高ポテンシャル
先日私が観に行ったワンマンライブでは、「近い将来、大きな会場でもライヴが似合うバンドになってやる!!」と、ステージ上から熱く語ってくれた彼ら。それがあながち遠い話ではないことを、その日のライヴを観て私は確信した。そこではきっと会場の広さに応じたライブよりもむしろ、今現在のそのライブがそのままスケール大きく展開されていく。そんなイメージを私に思い浮かばせてくれた。そして、それを立証していくかのように、ここ数年はやはり大会場でも映え、響き渡り、活きるかのようなスケール感たっぷりで、みんながその会場で楽しそうに頼もしく呼応し、声を合わせて歌っている光景が思い浮かんでくる楽曲も目立ってくるようになってきた。そして、集まったオーディエンスも確実に幅を広げ、すそ野を広げてきている。きっと、今後ステージアップしていく大会場等に於いても、彼らの熱くも共有感のあるライブがあなたの明日への活力を頼もしくも寄与してくれることだろう。
ぜひ彼らが届ける熱量たっぷりのライブに足を運んでみていただきたい。
Text by 池田スカオ和宏