スコットランドはグラスゴー出身のギターロック・バンド、ティーンエイジ・ファンクラブが、前作『Shadows』からおよそ6年ぶりの新作『Here』をリリースする。通算10枚目となる本作は、フランスはプロヴァンス地方の片田舎にあるヴェガ・スタジオと、地元グラスゴーにあるレイモンド・マクギンリー(ヴォーカル、ギター)の自宅スタジオにてレコーディングがおこなわれ、ドイツのハンブルグにてミキシングされた。中心人物であるノーマン・ブレイク(ヴォーカル、ギター)とジェラルド・ラヴ(ヴォーカル、ベース)、そしてレイモンドという3人のソングライターが持ち寄った楽曲は、どれも小賢しいギミックなど一切ない 「真っ当な」アレンジによるエヴァーグリーンなメロディとハーモニー。6年というブランクを感じさせない、圧倒的なクオリティを保っている。1990年のデビューから26年、前身バンドであるザ・ボーイ・ヘアドレッサーズから数えると、かれこれ30年近く経った今もなお、世界中で愛され続けているティーンエイジ・ファンクラブ。今回Qeticでは、そんな彼らの軌跡を辿ってみたい。
Teenage Fanclub – I’m In Love
今述べたように、ティーンエイジ・ファンクラブ(以下、TFC)の歴史はノーマン、レイモンド、それからパステルズのドラマー、フランシス・マクドナルド(ドラムス)により結成された、ザ・ボーイ・ヘアドレッサーズの活動から始まる。フリッパーズ・ギターがグラスゴー・ミュージックへの愛を詰め込んだ楽曲、“Goodbye, Our Pastels Badge/さようならパステルズ・バッジ”(『three cheers for our side〜海へ行くつもりじゃなかった』収録)の中でもバンド名が引用されているが、当時の彼らはパステルズやヴァセリンズ、ショップ・アシスタンズらと共に「アノラック」と呼ばれた一派に属しており、後のザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートやヴィヴィアン・ガールズらに多大な影響を与えている。
GOODBYE OUR PASTELS BADGE – さようならパステルズ・バッヂ -(M.V.) / FLIPPER’S GUITAR
パステルズのリーダー、スティーヴン・パステルらが立ち上げたレーベル〈53rd & 3rd〉からEP『Golden Shower』をリリースした後、ジェラルドが加入し「ティーンエイジ・ファンクラブ」に改名。スティーヴンの紹介で〈Paperhouse Records〉から『A Catholic Education』でデビューを果たす(レコーディングの途中でフランシスは脱退、代わりにブレンダン・オハラが加入する)。当時、ダイナソーJr.やソニック・ユース、ピクシーズらUSオルタナティヴ・ロックとも共振する乾いたギターサウンドと、ビートルズやビーチ・ボーイズ、バーズなど60年代ロックに影響を受けたポップで甘いメロディのコントラストが話題を呼び、UKインディー・シーンの中心的存在になっていく。
Teenage Fanclub – Everything flows (Reading ´92.)
1991年、ドン・フレミングが手がけたセカンド・アルバム『Bandwagonesque』を〈Creation Records〉よりリリース。この年の〈Creation〉といえば、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの『Loveless』、プライマル・スクリームの『Screamadelica』、スロウダイヴの『Just For A Day』など歴史的名盤を次々に輩出していた「第一次黄金期」。そうしたUKシーンの追い風と、同年『Never Mind』でデビューしたニルヴァーナを筆頭とするアメリカはシアトル発のグランジ旋風にも上手く乗り、TFCはアメリカでも大きな注目を集めるようになった。ちなみに最近では、映画『JUNO/ジュノ』でも知られるジェイソン・ライトマン監督の『ヤング≒アダルト』(2011年公開)で、『Bandwagonesque』の冒頭曲“The Concept”が非常に効果的に使われていたのが記憶に新しい。
Teenage Fanclub – The Concept (audio only)
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