昨年末にもお伝えしたように、2013年がポール・イヤーなら今年はビートルズ・イヤー! とりわけ、先日開催された<第56回グラミー賞>ではビートルズが「特別功労賞生涯業績賞功労賞」を受賞し、60年代当時のアメリカ仕様版を纏めた『The U.S. BOX』も先頃リイシューされたりと、「ビートルズとアメリカ」におけるメモリアルな一年というのが今年のポイントだろう。1962年にデビューしたビートルズが、その2年後にアメリカへ進出し、同年2月9日にアメリカの国民的バラエティ番組『エド・サリヴァン・ショー』に出演。このときアメリカ国民に与えたインパクトたるや計り知れずで、モンキーズからワン・ダイレクション、無数のロック・バンドや(『エド・サリヴァン〜』出演時の模様をパロディーしたアウトキャストの“ヘイ・ヤ!”を挙げるまでもなく)コンテンポラリーな黒人音楽に至るまで、アメリカのポップ史に多大なる影響をもたらしてきた。
Outkast-“Hey Ya!”
そしてアメリカ進出からちょうど50周年。絶好のタイミングで、WOWOWではビートルズ関連のビッグな番組2本立てを2月11日(火・祝)に一挙放送します。豪華プログラムの見どころを詳しくご紹介していきましょう!
●ビートルズドキュメンタリーでモット楽しむ!
世界中の人々に影響を与えたビートルズは、解散後の今日に至るまで多くのドラマを生み出してきた。その人間模様を追いかけるため、8年もの月日を費やして制作されたのが『ビートルズと私』だ。まず興味深いのは、メンバーと接点のあったミュージシャンによる当時の述懐で、アメリカ公演で前座を務めたジャッキー・デシャノンがジョージ・ハリスンとモノポリーで遊んだ光景を振り返れば、自作曲を多くカヴァーされたスモーキー・ロビンソン(ミラクルズ)は「黒人音楽が好きだと公言した最初の白人アーティストがビートルズだった!」と嬉しそうに語る。ほかにもブライアン・ウィルソンやグラハム・ナッシュ、アート・ガーファンクルやジョーイ・モーランド(バッドフィンガー)、デイビー・ジョーンズ(モンキーズ)にスザンナ・ホフスなど、錚々たる面々が振り返るビートルズとの想い出は、いずれも胸に響くものばかり。プロデューサーのジョージ・マーティンや、名盤『リボルバー』のデザインを手掛けたクラウス・フォアマンなど直接の関係者も出演している他、エンジニアのノーマン・スミスやドアーズのレイ・マンザレクといった故人の声が収録されているのもありがたい。
もちろん、ビートルズの足跡が刻まれたのは著名人だけではない。その周辺にいた様々な人にも目を向け、記憶を辿っている点も秀逸だ。アップルの事務所で出待ちしていた女子や、トリビュート・バンド(≒物真似)のメンバー、ビートルズ訪米時の大統領だったジョンソン氏の令嬢、アメリカ公演の会場となったメトロポリタン・スタジアムの用具管理人や、野球繋がりでバーニー・ウィリアムス(ヤンキースの名選手で、松井秀喜の元同僚)まで、いろんな人が打ち明ける「自分にとってのビートルズ」。アットホームな同窓会に相席したような気分に浸れる一方で、アビー・ロード・スタジオの命名秘話やジョージのファースト・キスなど驚きのエピソードも満載。監督を務めたシンガー・ソングライターのセス・スワースキーがアメリカ人なだけに、こちらにも「アメリカから見たビートルズ」が根底にあり、まさにジャストな作品といえるだろう。
『ビートルズと私』予告編