・68年のドアーズがぎっしり詰まった『ライヴ・アット・ハリウッド・ボウル』

今回放送される『ライヴ・アット・ハリウッド・ボウル』は、68年7月5日、LAのハリウッド・ボウルでの模様をおさめたライヴ作品。名盤との呼び声高い1~2作目で人気を不動のものにしたドアーズは、この年に発表した3作目『太陽を待ちながら』で初めてアルバム・チャートの1位を獲得。装飾のまるでないシンプルなステージは、商業的なピークを迎えていたバンドの脂の乗り切ったパフォーマンスを際立たせるかのようだ。ライヴはレイ・マンザレクのオルガンによるイントロを経て、10分を超える“音楽が終わったら”がゲップを合図に怒濤のジャムになだれ込むと、その後も物質文化を批判するクルト・ワイルのカヴァー“アラバマ・ソング”、ハウリン・ウルフが原曲の“バック・ドア・マン”などを次々に披露。直立不動で歌う当時24歳のジム・モリソンは頭からつま先までセックス・シンボルのようで、中盤に“ハロー・アイ・ラヴ・ユー”を挟むと、この時代の最高のセックス・ソングのひとつ“ハートに火をつけて”では待ちわびた観客から大歓声が巻き起こる。その後もジム・モリソンが銃殺されるように倒れる“アンノウン・ソルジャー”、ロック史に残る歌詞を持ったラストの“ジ・エンド”と、どれを取っても自由なインプロヴィゼーションによって迫力を増した演奏が、この時期の充実したバンドの姿を伝えてくれる。

The Doors“Hello, I Love You”

このたった1年後、69年の年末にはオルタモントの悲劇などによって<ウッドストック>幻想が終わりを告げ、70年にはジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョップリンが急逝。ジム・モリソンも71年にパリのアパートにて27歳で死を遂げる。けれどもこの68年のライヴからは、そんなジム・モリソンとドアーズが理想と現実との間にいた当時の若者たちを代弁し、彼らを牽引していくようなエネルギーを感じられるはず。68年の若者たちにとってドアーズはどういう存在だったのか。そしてなぜ彼らが必要だったのか。本作を観ながら、改めて考えてみるのもいいかもしれない。

(text by Jin Sugiyama)

Program Information

洋楽ライブ伝説『ドアーズ ライブ・アット・ハリウッドボウル 1968』
2014.04.08(火)21:00
放送チャンネル:WOWOWライブ

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