——(笑)。そしてスタッフの舐太がプロモーション担当と。今回、ひとつの選択として、自ら作品を置く小売店にアプローチしているんですよね。

小林 少なくとも今回の『zeitgeist』をリリースしてしばらくのあいだは「ここに置いてほしい」というのは敢えて選ぶというか。思想を持って戦ってる場所に置いてほしいと思っていて。僕、LOSTAGEの五味さんのお店(五味岳久が運営する奈良のレコードショップ・THROAT RECORDS)の話を聞いたりしていると、僕たちが知らないところにいろんな出会いやきっかけを世の中に提案してる、あるべきものが置いてある場所があるんじゃないか? という気持ちになってきて。それはそういうお店は「ものが少ない」っていう見方じゃなくて、「あるべきものがある」っていうのが然るべき見方なんじゃないかということで。五味さんもそうだし、大阪のFLAKE RECORDS(大阪・南堀江の内外のCD、レコードなどを独自のセレクトで販売するショップ)のDAWAさん(アーティストとの親交も深い名物店長・和田貴博)たちの人となりを見ていくうちに、すごく心動かされるものがあったんです。自分たちが直接関わって選んだ上で世の中に出て行くことが大事で、変に虚勢や見栄を張って手広くというのは、この作品を届けるときの態度として説得力がない気もして。

——そこも作品の内容とリンクしている。

小林 これが独立した第一弾だから説得力があることだと思うんですよ。僕たちが力を得てお金も儲かって、じゃあ次だったら遊べるねってなった時にそれをやったとしても、ただの規模縮小だし道楽なんですよね。当然リスクも低いだろうし。

吉木 小売店の人はお客さんとの関係が密接だったりするじゃないですか。僕自身、DAWAさんのところでオススメの海外のCDとか聞くし。

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——Twitterを通じてファンに各地のいいお店を紹介してもらう呼びかけもしてますね。

ケンゴ 地方、地方で教えてくれて、センスのいいお店も多いし、地域に文化を発信してるようなお店があるんだなっていうか。実際それで話が進んでるところもあるし、意外と反響があったなと思いますね。

小林 その土地、土地で気を吐いてるお店が多いよね。その中には聴いた上で「ウチには合わない」ということをズバッと言ってくれる人もいて、引き受けてくれたお店はもちろん、断られたお店に対しても感謝してますね。

——大型店にまったく置かないワケじゃないんですよね。

小林 そこは誤解のないように言っておきたいんですけど、向こうからTHE NOVEMBERSがやろうとしていることを理解して、応援したいって声をかけてくれたところには置かせてもらいます。『zeitgeist』自体は今後も長く売り続けて行きたいものだから、ゆくゆくは手に入る場所も広がって行くはずなんですよ。僕たちはメジャー流通や大手レコードショップを否定する気持ちはこれっぽっちもなくて、何かに対してアンチだからやってるワケではないですから。

——では海外に対するプロモーションについてはどんな作戦が?

小林 長い目で見たらライブに行くっていうのは当然あるんですけど、今年はワイルド・ナッシングやアルテリア、ジ・オー・シーズとか、海外のアーティストと共演する機会が増えて、彼らもちゃんと見て評価してくれたので、海外でライブをすることもあんまり遠い話でもない気はしてますね。

——海外の音楽サイトへのアプローチはいかがですか?

小林 Pitchforkとか? 日本人でも直接アプローチして取り上げられたバンドとかいますもんね。Hotel Mexicoとか。僕は〈Captured Tracks〉(ワイルド・ナッシングも在籍)ってレーベルが大好きなんですけど、JESSE RUINSとか日本人のバンドもいるんです。僕らはこれまでそういうことはほとんどしてこなかったので、成果がどうなるか? っていうのもホントにこれからですね。

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