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まるでデヴィット・リンチをも思わせる美しい世界観。サーティー・セカンズ・トゥ・マーズの新MVがすごすぎる。

Music ｜ 2013.05.21 Tue

彼等の様なエネルギッシュな存在が改めて世界に必要とされ、新鮮に受け入れられるであろうタイミングは、まさに今ではないだろうか。前作『ディス・イズ・ウォー』の発売に伴う2年間に及ぶツアーは、六大陸を渡り約60ヶ国で300万人を超える動員を記録し「1枚のアルバムでの最多公演数」でギネス・ワールド・レコードの最長記録にも認定されたサーティー・セカンズ・トゥ・マーズ。彼等の5年ぶり4作目のニューアルバム『ラヴ・ラスト・フェイス・アンド・ドリームス』が発表される。

プロデュースはバンドのフロントマンであり俳優としての顔も併せ持つジャレッド・レト。本人曰く今回の製作は、「エキサイティングで予想外で信じられないほど閃きに満ちた未踏の地にたどり着いた」という。作曲とレコーディングはヨーロッパ、インド、そして本拠地であるカリフォルニアと世界各地で行われ、結果その充実した成果とサーティー・セカンズ・トゥ・マーズらしい力強いサウンドが全13トラック、その隅々にまで感じられる傑作に仕上がった。

とにかく業界の話題をさらったのが『ラヴ・ラスト・フェイス・アンド・ドリームス』からの1stシングル“アップ・イン・ジ・エアー”の“宇宙”的なキックオフである。アメリカ現地時間3月1日、バンドはNASA（米航空宇宙局）と協力し最新シングル“アップ・イン・ジ・エアー”をSpaceX宇宙貨物機でスペースステーションに向けて発射！！　そしてアメリカ時間3月18日（月）に、地球から230マイル（約368キロ）離れた宇宙から宇宙飛行士のトム・マーシュバーンによって、“アップ・イン・ジ・エアー”の音源が解禁されたのである。さすが…としかいいようがないお披露目をみたわけだが、その“アップ・イン・ジ・エアー”のミュージックビデオがまたすごい。

ディレクションはバンドのほぼすべてのビデオを手がけるバーソロミュー・カビンズと記されているが、このバーソロミューなる名前はジャレッド・レトの監督業における変名なのである。これまでも中国へ飛び、映画『ラストエンペラー』さながらの壮大なセットを舞台にしたビデオを作る等、映像でもスケールの大きさとクオリティの高さを誇ってきた彼等だが、今回のビデオは様々なモチーフや豪華なゲストが入り乱れる、洗練されていてかつ謎めいたアートフィルムのような仕上がりだ。今回のアルバムジャケットのアートワークを手掛けたダミアン・ハーストもビデオの製作に参加している。

モデルのアシュリー・スミスが踊るバックはダミアン・ハーストによるもの。

「クィーン・オブ・バーレスク」の名で知られるダンサーでありモデルのディタ・フォン・ティースとジャレッド・レト。ちなみにディタが握っているのは鞭でございます。彼女が体現するのは、欲望…？　誘惑…？

ライオンやシマウマなどの動物や、オブジェ、そして豪華なゲスト達（新体操選手、フェンシング選手から作家、モデル、シルクドソレイユ俳優、等）を象徴的なモチーフとして配し、デヴィット・リンチをも思わせる美しい世界観となっている。この約8分間の濃厚な映像体験、これはハマります。

ディタ・フォン・ティースが乗っているのはピンクのロデオマシーン。機械仕掛けのピンクの猛獣と美女。…なんだかクラクラします。

冒頭の「LOVE，LUST，FAITH，DREAM」（愛、欲望、信念、夢）というのがテーマなのだろうか。終始様々なキャラクターが登場するわけだが、皆、何かを求めるように音に合わせ躍動的に踊っている。バンドサウンドと相まった彼等の闘争的な姿はそれらのテーマを全て体現しているようにも見えた。とにかく、何度も繰り返し観てしまうほどの映像美にひとまず酔いしれよう。

Thirty Seconds To Mars – Up In The Air